ロードバイクの販売形式には、購入後すぐに乗れる状態である「完成車」と、本体(骨組み)だけのフレームセットがあります。
一般的には完成車が多いですが、高級な機種になるとフレームセットも増えてきます。
今回は「レースに勝つ」ブランドとしても名高いピナレロのロードバイクについて、完成車とフレームセットのラインナップを確認してみましょう。
完成車とはどういうものか?
「完成車」という言葉はロードバイクやMTBに精通している方には常識でも、一般的な言葉ではありませんので、まずご説明させて頂きます。
ロードバイクは1本1本のチューブからなるフレーム(本体)と、そこに組み合せるハンドルやサドルなどのパーツを別に考える傾向があります。
実際に、全てが同じメーカー品でできているロードバイクは、筆者の知る限りでは皆無です。
いわゆる、完成車というのは、フレームにパーツを組み合わせた、自転車の完成形を指す言葉になります。
ママチャリなどはわざわざ完成車などと言わなくても完成形が当たり前なので、これはスポーツバイク独特の考え方です。
パーツは主に、
・ハンドル(ステム、バーテープ含む)
・サドル(シートポスト)
・車輪(ホイール+タイヤ)
・シフター
・ディレイラー
・クランク
・ブレーキ
などで構成されます。
ピナレロのように名の通ったメーカーであれば、カタログやホームページに「スペック」というものあり、完成車はフレームの素材や質と共に、パーツのメーカーやグレードも記載されています。
完成車はフレームにパーツのコストがプラスされますので、価格はフレームセットよりも当然高額になります。
「フレームビルダー」にとって完成車はリスキーなのではないか?
ロードバイクを販売しているメーカー(ブランド)は、フレーム(本体)を設計、生産している「フレームビルダー」です。
全てのメーカーが自社で生産しているわけではありませんが、本体に関しては責任の全てがあります。
しかし、完成車を作るとなると、パーツまで生産しているフレームビルダーはそう多くありませんので、他社のパーツを組み合わせなければなりません。
また、これは販売姿勢の問題ですが、ほとんどのメーカーは完成車を未完成の状態で販売店に出荷します。
これは、販売店がユーザーに合わせてフィッテイングをしてから販売するためであり、何も手抜きをしているわけではありません。
こういった状況を考えますと、メーカーにとって完成車は、割とリスキーなのではないかと思います。
例えば、完成車を評価される時に、フレームのことを言われる分には自社の責任ですが、パーツのおかげで完成車全体を酷評されたとすれば、とても歯がゆい思いをするはずです。
また、最終組み付けを販売店に任せるのもリスキーでしょう。
ピナレロなどは厳しい管理体制をとっていると聞きますが、万が一甘い組み付けが原因で事故が起こったということになれば、当然メーカーの責任問題になります。
完成車は、誰もがフレームセットから自力で完成形に組み上げられるわけではないので、ユーザーにとってはなくてはならないものです。
また、メーカー側もフレームセットだけで商売していては、ユーザーの裾野が広がりませんし、パーツメーカーへの顔通しもありますから、完成車を販売しないわけにはいかないのが現状です。
ピナレロのフラッグシップ「ドグマ」に完成車はある?
少し前置きが長くなりましたが、ここからピナレロのロードバイクの販売形態についてお伝えしていきます。
ピナレロのロードバイクと言えば、何と言ってもフラッグシップモデルの「DOGMA(ドグマ)」です。
ツール・ド・フランスにおいて、2018年まで4年連続、近7年で6回の個人総合優勝を飾ったのが、ドグマに乗る「チーム・スカイ」所属の選手でした。
このモンスターバイクであるドグマですが、一般ユーザーも購入することが可能です。
しかし、メーカーでの情報をみますと、2019年のドグマシリーズは、フレームセットの情報しかありません。
2018年には限定として「F10」の完成車を組んでいるようですが、他は完成車として組まれることはほとんどないでしょう。
あるとしても店舗限定品などになるかと思われます。
ドグマは、ブランドを象徴するモデルですから、前項でお伝えしたようなリスキーの部分を回避したい狙いもあるではないでしょうか。
そして、価格の問題もあると思われ、2019年モデル最軽量の「DOGMA F10 Xlight」などは、フレームセットだけで約100万円(税込¥972,000)の代物です。
これだけのフレームには、パーツもそれに見合うものが必要ですから、完成車として組めば、150万円は下らないものになります。
これですと余りにもインパクトが強すぎて、他のものに目が行ってしまう可能性も高くなりますので、あえて完成車を組まない戦略かと思われます。
ピナレロ「プリンス」の完成車
前項ではピナレロの象徴である「ドグマ」についてお話ししましたが、ドグマ以外の機種は完成車が用意されています。
2019年モデルでは、ピナレロの歴史には常にこのロードバイクの存在があったと言っても過言ではない「プリンス」が、フルモデルチェンジをすることが発表されています。
ドグマの技術を受け継ぎながら、少し剛性を抑えたカーボンを使用し、扱いやすさや乗り心地の良さも加味したモデルになります。
このプリンスは、最軽量モデルの「FX」がフレームセットで約50万円(¥491,400)です。
そして、完成車はここにシマノの最高級コンポである「デュラエース」の電動変速「Di2」に、フルクラムのカーボンリムホイール「Racing Quattoro Carbon」が組み合わされて、約100万円(¥1,047,600)になります。
これは、計算上パーツに約50万円のコストを掛けているということであり、これをドグマでやると150万円以上になりますね。
なお、プリンスFXには、コンポをワングレードダウン、ホイールもアルミリムにした完成車もあります。
こちらの参考価格は、約57万円となります。
ピナレロのその他の完成車
ここからご紹介するピナレロの完成車は、完成車のみ取り扱っているモデルです。
ピナレロのロードバイクをグレードで見ると、「ドグマ」が最上位、「プリンス」がセカンドグレードとなります。
いわゆる、ピナレロはセカンドグレードまではフレームセットも用意、その下のグレードからは完成車のみにしているということになります。
まずここでは、ざっとラインナップをご紹介しましょう。
ドグマの前作「F8」の技術を継承しているエアロロードの「GAN(ガン)」は、ドグマのニューモデル「F10」の凄さにあおられる形で、2019年は縮小傾向になるモデルです。
ツール・ド・フランスを制した経験のある「ドグマ65.1」の直系と言われる「RAZHA(ラザ)」は、エアロ形状が多いピナレロのレーシングモデルの中では、スタイリッシュですっきりめのシルエットが売りです。
筆者の個人的見解ですが、このラザは今のロードバイクの完成車の特徴を代表しているようなモデルと思われます。
そのため、次項で詳しくお伝えします。
そして、ラザと位置付けが似ていますが、レース色を薄め長距離走行を意味する「グランフォンド」というカテゴリーに属すのが、「ANGLIRU(アングリル)」です。
ラザと全く同じ価格ですので、姉妹機と呼んでも差し支えないでしょう。
あとは、ピナレロ2019モデルでは唯一のアルミフレーム車、「PRIMA(プリマ)」もラインナップされています。
ピナレロ「RAZHA(ラザ)」に見る完成車の特徴
それでは、前項でお伝えした通り、ピナレロ「RAZHA(ラザ)」の完成車をご紹介します。
参考価格は¥262,440(税込)で、アングリルと並びカーボンフレーム車では最も安価です。
メインコンポはシマノのミドルグレード「105」で、クランクだけがシマノのどのシリーズにも属さないノングレード品となります。
クランクはコンポの中でも高額なので、コストダウンを図るためにノングレード品や、シマノ以外のメーカー製になるのが、この価格帯の完成車にはよく見られます。
ブレーキもその対象になることが多いのですが、ラザは105なのでその点は良心的と言えます。
ホイールは、シマノの「WH-RS100」で、グレードはあまり高くありませんが、性能は低くなく、レース以外の用途であれば必要十分なものです。
しかし、これもまたこの価格帯の完成車の特徴であり、このホイールは定価で1.5万円程度のものです。
「約26万円の完成車に1万円前後のホイール?」という疑問もあるかと思いますが、ホイールは単価が高いので、上を見ればキリがないものです。
そのため、少しでもグレードを求めれば、すぐに5万円、10万円とコストが掛かりますので、この価格帯の完成車ですと他のパーツとのバランスから、あまり高額なホイールは付属できないことになります。
お伝えしたように、この価格帯の完成車はフレームのレベルが高いので、いかにしてパーツでコストダウンを図るかが大きなカギです。
その意味でラザは最低限にコストダウンを抑えていると言えますので、十分おすすめできるレベルと考えられます。
高級なイメージだがコスパに優れたモデルもある!
今回は、ピナレロの完成車についてお話ししました。
ハイエンドモデル「ドグマ」には完成車はありませんが、その他のモデルには完成車が用意されています。
価格相応と思える機種や、他メーカーの同グレードに比べ少し割高に感じるものもありますので、コスパ重視というわけではないでしょう。
ただし、ご紹介した「ラザ」はコスパが高いと判断できますので、おすすめのモデルです。