ロードバイクを販売するメーカーでイタリアに籍を置くメーカー(ブランド)は、高額なバイクを中心に扱っているイメージがありませんか?
確かにそういったメーカーが多いのですが、ロードバイクの用途の広がりもあり、手ごろな価格で購入できる機種も用意されています。
ピナレロもあのルイ・ヴィトンの傘下に入り、ますます高級という評価をされるブランドですが、「アングリル」などは非常にリーズナブルです。
そこで、今回はピナレロ・アングリルについてご紹介していきます。
ピナレロの「高級」という評価を物語る「価格」
冒頭でピナレロに高級という評価が多いというお話をしましたが、それは扱っている製品の価格からも明らかです。
2018年までツール・ド・フランスを4連覇中の「チーム・スカイ」のメインバイク、フラッグシップモデルの「DOGMA(ドグマ)」は「F10」の限定完成車以外は、フレームセットのみの取り扱いです。
レースモデル最上位グレードの「F10 Xlight」約97万円(税込)、セカンドグレードの「F10」で73万円になります。
また、グランフォンド(長距離走行向け)の最上位「K10-S DISK」の電子制御サスペンション付きモデルに至っては、100万円を軽く超えます。(約106万円)
これは、コンポや車輪がセットになった完成車でも間違いなく高級と言える金額ですから、フレームセットでは破格と言ってもよいでしょう。
ドグマに次ぐグレードの機種「PRINCE(プリンス)」にしても、フレームセットで30~45万円、完成車も最低で40万円、すぐにでもレースに出れる仕様になると100万円を超えます。
このプリンスの価格が最高価格帯というメーカ―も少なくないので、遥かに上を行くドグマは別格の存在です。
ただ、これだけではユーザーの裾野を広げるのは難しく、実際に手にできる人はそう多くないはずです。
そこで用意されているのが、今回の主役である「ANGLIRU(アングリル)」です。
ピナレロ・アングリルは「グランフォンド」向けという評価
前項ではピナレロのロードバイクの価格についてお伝えしました。
破格と言えるドグマや、一般的なメーカーのフラッグシップ並みの価格のプリンスなど、やはり高級なものが揃っています。
しかし、今回はフルカーボンフレームにシマノ・105をメインコンポとした完成車で約26万円の、「アングリル」をご紹介していきます。
アングリルは、長距離系のレースイベントを表す「グランフォンド」というカテゴリーに属しています。
他メーカーですと、「エンデュランス」や「ロングライド」と呼ばれますが、ピナレロは「グランフォンド・ピナレロ」という海外からも多数の参加がある人気イベントを主催していることもあり、このカテゴリー名にしていると思われます。
グランフォンド・ピナレロはレースではなくイベントなので、特にタイムを競うわけでもなく、あくまでも走りを楽しむのが目的です。
ですから、使用するバイクにしても長距離を快適に走るために車体の安定感や、衝撃吸収性が重視されています。
そのため、アングリルはレースモデルが多いピナレロの中では、優しい味付けもされており、乗りやすいという評価もあるモデルです。
ピナレロはエアロロードが多いがアングリルは?
アングリルはピナレロのカーボンフレームの中では、レースモデルの「RAZHA(ラザ)」と並び最も価格の安いモデルです。
そのため先ほどもお伝えしましたが、ユーザー層の裾野を広げるという意味で大きな役割を担っていると言えます。
ピナレロの最近のロードバイクは、エアロ形状のチューブを使用したフレームが多くなっています。
ここ30年近くに渡り、世界のレースシーンをけん引してきたピナレロが今レースに勝てるのはエアロロードという結論に至っているのだと思います。
カテゴリーではアングリルと同じグランフォンドになる「DOGMA K10」ですら、見た目は完全なエアロロードです。
その点アングリルは全体的に比較的スリムなチューブで構成されており、従来のロードバイクのフォルムに近いものです。
最近のエアロロードは乗りやすさや扱いやすさも加味されたものもあり、以前ほどハードルの高さを感じないという評価もありますが、レース志向が強いのは否めません。
そのため、レース志向が薄く、ロードバイクに快適性や安定感を求めるライダーにとっては、アングリルのようなロングライド仕様のバイクの方が向いています。
ピナレロ・アングリルのフレーム評価
ここではピナレロのアングリルについて、フレームを確認してみます。
フロントフォークは、ピナレロの象徴でもある波打つような流線形が特徴の「ONDA(オンダ)」が採用されています。
抜群の衝撃吸収性と、狙ったところに車体を持っていける正確なハンドリングが高評価を受けるフォークです。
そして、アングリルは所どころに快適性を重視した仕様が見られます。
リアの衝撃吸収の肝であるシートステイは、大きく湾曲させて弓なり状にすることで絶妙なしなりを生みだし、地面からの突き上げをいなし、乗り心地を向上させています。
また、車高をレースモデルよりも高く、さらにヘッドチューブも長くすることでハンドルを高い位置に設定できるようになっています。
そのことで、上体が起き気味の姿勢で乗車でき、車体が安定して視界も開けますので、長距離走行で高い評価をされているのも納得です。
そして、アングリルは、ピナレロでは唯一と言ってもよい「スローピングスタイル」です。
トップチューブが後ろに向かって下がり気味になっており、跨りやすく降りやすいという足付き性能も考えられた仕様になっている点も評価したいですね。
アングリルには高評価を受けている新・105が搭載される
ピナレロのアングリルは完成車のみの取り扱いで、2019年モデルには注目のコンポ、シマノ・新105「R7000」が搭載されます。
全体的にスリムですっきりしたデザインとなり、「空力性能」と「トラブル」の回避、身体に合った扱いやすさという「人間工学」も考えられています。
筆者も105搭載モデルを試乗しましたが、特にSTIレバーの扱いやすさは高評価したいと思いました。
ブレーキレバーに指が掛けやすくなっていますし、タッチも軽いので、ロングライドで終盤に握力が低下してくる場面でも楽にブレーキングができます。
また、残念ながらアングリルには搭載が見送られたクランクですが、アームが前モデルよりひと回り太くなりパワーロスが抑えられたため、踏み応えがあるものになりました。
パワーロスが減ることで巡航性が高まりますので、少ない力でスピードの維持が可能であり、力を温存できるということで、これも長距離向きと評価できます。
アングリルのクランクはダウングレード品になるので、これは後のカスタムの際の参考として記しました。
そして、フロントディライラーにはワイヤーの張りを自動で調整するアジャスターが内蔵され、リアは横への張り出しが少なく障害物などにヒットする可能性の低い「シャドー形状」になるなど、上位モデルで高評価を受けた技術も確実に踏襲されています。
同価格のレースモデル「ラザ」との比較
ピナレロには、先ほど少しだけ触れましたが、アングリルと全くの同価格である「ラザ」があります。
同じカーボン素材を使用し、メインコンポが105でクランクのみダウングレード、その他の付属パーツも同じものとなり、極めて仕様が似ている姉妹機のような存在です。
しかし、フレーム形状だけは全く違うもので、ラザは純粋なレーシングジオメトリです。
ツール・ド・フランスを連覇した「ドグマ65.1」の直系ということもあり、前傾が深めの乗車姿勢になり、鋭い反応ができる形状になっています。
両者を比較したインプレ情報でも、加速力やハンドリングの切れ味などはラザの方が高く評価されています。
その分ラザは剛性が高く全体的に硬めなので、乗り心地や扱いやすさなどの快適性ではアングリルに軍配が上がります。
そのため、この両者は同じブランドで同じ価格でありながら、全く別の方向性で作られているので、ロードバイクは自分の用途や目的も考えて選ばなくてはならないという、お手本のような存在です。
スピードに気を使わず長距離を快適に走るモデル
今回は、ピナレロのグランフォンドモデル「アングリル」をご紹介しました。
ピナレロで最も快適性が重視され、優しい味付けになっているモデルです。
そのため、「まったり」とまで言うとレースブランドであるピナレロに怒られそうですが、スピードにとらわれない乗り方には最適な機種かと思います。