自転車に新風を吹き込むギアクランク!フリーパワーとは?

皆さんは自転車のクランクに取り付ける「フリーパワー」をご存知でしょうか?

電動アシスト付き自転車と同じようなアシスト性能を持つフロントギアのことで、電動アシストに比べずっと安価なため注目を集めています。

ただ、まだ完全に普及しているとは言えず、分からない部分もあって謎も大きいため、今回は特徴や効果のほどを確認していきます。

自転車の「フリーパワー」とは?

自転車は前後のギアにチェーンが掛かっていて、ペダルを漕ぐ動力をチェーンを介して後輪に伝え、後輪のギアがその動力を受けて車輪が回転して前に進むという仕組みです。

そのため、ペダルを効率よく漕ぐことができれば、スピードも上がり長距離を走っても疲れが出にくい仕組みになっています。

しかし、ペダルがちょうど真上と真下に来るときに僅かに力を加えにくい「デッドゾーン」があり、ペダルを踏む力にムラが出てしまい、効率が悪くなるということがあります。

デッドゾーンについては以前から研究が進められ、過去に実用化された製品もあるのですが、定着には至らなかったようです。

そのデッドゾーンのデメリットを解消するために、東京に本拠を構える自転車専門ショップチェーン「サイクルOlympic(オリンピック)」が開発したのが「フリーパワー」です。

その仕組みは次項でお伝えしますが、デッドゾーンでの力の抜けを解消しているために、電動でアシストされているかのように軽々とペダルを漕げるという評判です。

フリーパワーの構造とシステムの仕組み

前項でお伝えしたように、ペダルを踏み込む際のデッドゾーンを解消するというコンセプトから開発されたのがフリーパワーです。

フリーパワーの構造ですが、フロントギアの中には5つの歯車があり、その隙間に1個づつシリコンが内蔵されています。

まずペダルを踏み込むことでシリコンが圧縮され、力が加わっている間はずっとその形がキープされており、タメが作られているイメージです。

そして、ペダルが真上と真下、いわゆるデッドゾーンに差し掛かるとペダルを踏む力が弱くなりますので、圧縮されたシリコンは反発力によって膨らむことになります。

その反発力がギアには前へ進む推進力に変換されて伝わるため、実質デッドゾーンが消えてペダルの踏みムラが無くなることで、アシストされているように感じるというわけです。

そのためフリーパワーは電池の要らないアシストシステムのようなイメージですが、実際にはどんな自転車にもあるペダルのデッドゾーンを解消することで、ペダルを踏み込む力を均一化したギアシステムです。

フリーパワーで自転車のペダルは重くならないのか?

前項でお伝えしたフリーパワーの構造を改めて確認すると、もしかしてデメリットになり得るかもしれないという部分が1つあります。

スポンジやゴムボールなど柔らかいものを押し潰すことを想像してもらうと分かると思うのですが、圧縮という表現になるほどまで潰すにはある程度力が必要になるからです。

そのため、フリーパワーでもシリコンを圧縮する際にペダルに大きな力が掛かってしまい、重くなるのではないかという疑問があります。

自転車は完全に止まった状態からの漕ぎ出しや、上り坂ではただでさえペダルが重くなりますので、フリーパワーによってさらに重くなるのでは本末転倒であり、良さも半減してしまいます。

しかし実際にはその反対で、シリコンがペダルを漕ぐ際に膝や筋肉に掛かる衝撃を吸収するために、かえって楽に踏み込めるので、ペダルが軽く感じられるようになるようです。

フリーパワーのインプレ情報

フリーパワーの特徴をお伝えしてきましたが、ここでは実際にフリーパワー付きの自転車に乗っているユーザーのインプレ情報を確認します。

まず電動アシスト付きとの比較をしている方が多いのですが、急坂の上りではアシスト効果をほとんど感じられず、また完全にストップしてからの漕ぎ出しも電動のパワーには及ばないということです。

ただし、平坦路ではフリーパワーの推進力が十分に感じられ、電動との差は大きくないと感じている人が多いようです。

そのため、現在一般車に乗っている方で傾斜のきつい坂道対策としてフリーパワーの導入を考えているのであれば、電動アシストにしたほうがよいかもしれません。

そして、一般車との比較インプレでは、平坦路や緩い坂道であればアシスト効果を感じることができるという意見が多く、「背中を押されているような感覚」というのが筆者が試乗した際の感覚です。

漕ぎ出しや上り坂に関しては個人の感覚に違いがあるように見受けられますが、スムーズに走れているという意見が多いのは確かなので、メーカーの意図したところはしっかり具現化されていると感じます。

また、メーカー側はシリコンの耐久性を3年程度と考えているようで、その交換費用は2,000円~3,000円になるそうですが、実用化されてからまだ日が浅いため、実際の耐久性はハッキリしません。

筆者個人の意見にはなりますが、まだ情報が少なく保守的な筆者は足踏みしているところですが、試乗してみる価値はあるというところです。

フリーパワーを自転車に取り付けるには?

フリーパワーを導入する方法ですが、2020年1月現在では3つの方法があります。

1つ目はサイクルオリンピックの店舗で新車を購入する際に取り付けてもらう方法、2つ目は自分が乗っている自転車にサイクルオリンピックかフリーパワーショップで取り付けてもらう方法、3つ目はフリーパワー付きの自転車を購入することです。

まず1つ目と2つ目の自転車にギアクランクを付ける方法ですが、ギアの歯数とクランクの長さが選べるようになっていて、店舗で相談しながら最適なものを取り付けていくことになります。

また、シリコンの硬さが「ソフト」、「ミディアム」、「ハード」の3種類から選べるのですが、これについては詳しい情報が無いので購入時に確認してください。

なお、ママチャリによくあるのですが、チェーン全面を覆っているケースが付いている場合は取り付けできませんので注意ください。

費用はギアの歯数によって違いがあり、サイクルオリンピックで購入する新車に取り付ける場合は10,450~13,200円(税込み)、自分の自転車に取り付ける場合は13,750円~16,500円(税込み)になります。

フリーパワー付きの自転車

フリーパワーを導入する3つ目の方法は、フリーパワー付きの自転車を購入することです。

フリーパワー付きの自転車はサイクルオリンピックの店舗で購入することができ、ラインナップは以下の3機種になりますのでここでご紹介します。

なお、価格は3機種とも50,380円(税込み)になります。

【calad(サラダ)】

跨ぎやすいフレーム形状に26インチのタイヤを合わせ、前カゴ、リアキャリア、泥除けに両足スタンドの付いた、いわゆるママチャリです。

フリーパワーのギアは32Tで、リアギアは14T、内装式3段変速になります。

名前の由来は「cycle × salad ×カラダ= calad」で、ボディカラーは野菜を意識したネーミングになっています。

【DIVIDE(ディバイド)】

通勤、通学に最適といううたい文句のシティサイクルです。

軽量なアルミフレームに27インチの耐パンク性の高いタイヤを装着し、街中を軽快にトラブルなく走っている姿が想像できます。

フリーパワーのギアは36T、リアは外装式6段変速になります。

【amitie(アミティ)】

ディバイドがどちらかというと自転車らしいメカ感があるのに対し、アミティはフランス語で「愛着・友情・愛情」を意味しており、スタイリッシュで愛着のあるデザインになっています。

フリーパワーのギアは32T、リアは内装式3段変速の14T、ママチャリ仕様のギア構成になっています。

フリーパワーは試乗してみる価値あり!

フリーパワーは自転車業界が長年取り組んできたペダルのデッドゾーンを解消したギアクランクで、シリコンの反発を推進力に変え、ペダルを踏み込む力を均質化したシステムです。

インプレ情報では急坂の上り以外ではおおむねシステムの効果を感じ取れる受けられるという意見が並び、試乗してみる価値はあると言えます。

全くの別物である電動アシスト付き自転車と比較するのは酷な気もしますが、画期的なシステムであることは確かなようです。