こんにちは、じてんしゃライターふくだです。
今回は、ロードバイクのヒルクライムレースのためのトレーニングについて考えてみたいと思います。
ヒルクライム、つらいですよね。
せっかく参加するからには、出来るだけ良い結果を出したいですよね。
そのためのトレーニングや考え方をみていきましょう。
勝ちたいという向上心の強い人にも、勝つまでは言わないけど、もう少しだけ速くなりたいという人にも、参考になるよう書いていければと思います。
ロードバイクのヒルクライムは精神力
ものすごく端的に言ってしまうと、精神力こそヒルクライムの全てです。
「え、ただ我慢して登れってこと?!」
半分Yes、半分Noです。
というのも、ヒルクライムは我慢せず登り切るというのは不可能です。
我慢はいくらか必要です。
でも、ただ精神力の我慢だけでは速くなりません。
それでは、数十年前の水を飲まずに練習して、熱中症が多発していた高校球児と同じです。
ヒルクライムに必要な精神力とは、結果を焦らずトレーニングを継続していく精神力です。
ヒルクライムに限らず、ロードバイクは持久系スポーツです。
持久系スポーツの場合、体に持久系筋肉・心肺機能の使い方を覚えこませる必要があるのですが、このトレーニングというのが割と地味なんです。
地味なトレーニングをコツコツ続けることで、基礎ができるわけです。
それより上のトレーニングは、持久系の基礎ができてからです。
ロードバイクのトレーニングのベース①
まずは、どういう能力がヒルクライムに必要なのか考えてみましょう。
「ヒルクライムは、1時間ほどだから持久力はいらない!」
という人が時々いますが、それは間違いです。
1時間、坂を上り続けるという高出力を持続する運動は、間違いなく持久系スポーツです。
ランニングをトレーニングとして、1時間続けるのは持久力が必要ですよね。
なぜ「持久力はいらない」という勘違いが起きるのかと言えば、のんびりとロングライドをするということと比較するからでしょう。
ロードバイクの場合、休日は8時間走り続けるという人も決して少なくありません。
ロードバイクを好きなほとんどの人が、3時間くらいは簡単に走れるでしょう。
そう考えると、1時間だけのヒルクライムレースが持久系じゃない。というイメージを抱いてしまう人がいるのも納得できます。
しかし、ヒルクライムもベースは、やはり持久力なのです。
ロードバイクのトレーニングのベース②
持久系の運動と瞬発力の必要な運動の場合、そもそもに使う筋肉も違えば、使うエネルギー源も違います。
詳しい話をすると、専門的になってしまうので簡単に説明しますが。
瞬発的なトレーニングだけしていても、持久力は付きません。
ヒルクライムレースでは、途中でへばります。
瞬発力の出番がくる前に、ダウンしてしまいます。
良い結果は出ません。
でも、逆に持久系のトレーニングだけしていれば、瞬発力は付きませんが持久力は付きます。
ヒルクライムレースでは、アタックのような瞬間的に大きなパワーを出す局面というのは少ないので、持久力が向上すれば、レース結果も良くなります。
坂を上るというと筋肉、最大パワーが必要だと考えてしまう人もいますが、実際には、持久力の方が重要なのです。
さらに言えば、クリテリウムや耐久レースなどでも、やはり割合としては持久系の能力が重要になります。
競輪選手でも、オフシーズンにLSDトレーニング(ロングスロウディスタンス)を取り入れているように、持久力は自転車競技全般のベースとも言えます。
持久系の筋肉の使い方、エネルギーの使い方を体に覚えさせれば、ヒルクライムのタイムも必ず伸びます。
意外とここを知らずに、ロードバイクでせっせと坂を全力で登るばかりで、タイムが伸びないという人が多いです。
ロードバイクのトレーニング効果をあげるには
では、実際のロードバイクの持久系トレーニングとは、何をすべきなのでしょうか。
先ほど出た競輪選手もしている、LSDトレーニングが最適です。
特にヒルクライム初心者の方は、LSDトレーニングが一番効果があると思っていただいて結構です。
昨今、人気の高い高強度インターバルトレーニングなどは、LSDの基礎があった方が、遥かに効果があるタイプのトレーニングです。
LSDトレーニングとは、『Long Slow Distanse』の略です。
『長くゆっくり距離を』が大事です。
「でも、休日には長くゆっくり距離を走ってるけど、全然速くなりません」
という声も聞こえてきそうです。
それには、3つの可能性が考えられます。
・Slowが遅すぎるという可能性
・Slowが速すぎるという可能性
・トレーニングとトレーニングの間の期間が開きすぎているという可能性
この3つです。
この3つを考えていきましょう。
近年のヒルクライムの理論はLong Steady Distans
そう、ヒルクライムのトレーニングで間違っている可能性があるのは、Slowの部分の場合が多いです。
ロードバイクが、あまりにゆっくり過ぎると、効果が薄いです。
しかし、速過ぎても持久系を鍛えるには非効率的です。
そこで近年、アメリカのトレーニングの現場ではLSDのことを、『Long Steady Distanse』と呼ぶことが増えてきました。
『Slow』じゃなくて『Steady』。
和訳すると『一定のペースの』とか『安定した』というような意味になります。
速過ぎず遅過ぎず、トレーニングに最も適した力加減でやりましょう。ということですね。
競輪選手のLSDって、我々アマチュアからすると物凄く速いです。
でも、それが彼らのトレーニングにとって、ほど良いSteadyの強度なんですね。
これが、感覚的な目安だと分かりにくいんです。
かと言って、我々アマチュアでも簡単に分かるように数値化しようと思っても、難しいんです。
パワーメーターや心拍計を使っても、どの数字が一番いいか割り出すのって難しいです。
なので、まずは強度はいったん置いとくとして、トレーニングの頻度からみていきましょう。
本当の坂じゃなくてもヒルクライムに近い動きを
圧倒的に多いのは、トレーニングとトレーニングの間隔が開きすぎている場合です。
「LSDはしたことあるよ」
という人でも、実際、毎週ロングライドやヒルクライムしてる人は決して多くないでしょう。
ホビーとしてロードバイクを楽しむことも大事ですが、家族との時間や仕事など、いろんなことがあるのが現実です。
毎週、休みの度に朝から晩までロードバイクに乗って、出掛けるわけにはいかないのです。
トレーニングの理想は、できれば週に3日できればベターです。
「毎週末でも難しいのに、週に3日もLSDするなんて無理だよ」
全くその通りだと思います。
もちろん、可能な方は毎朝3時間なんとか作って、LSDトレーニングすると素晴らしいですが、そんなの忙しい現代社会では難しいです。
そこで考えられるのは、毎日ちょっとした時間でもできる近似的なトレーニングです。
ヒルクライムにもローラー台は効果がある
毎日ちょっとした時間でもできるヒルクライムに、近似的なトレーニングというとローラー台がイメージに浮かぶでしょう。
ローラー台が自宅で用意できる方は、正しい方法で定期的に行えば、ロードバイクにおける基礎能力は間違いなく向上します。
ローラー台は、実際にロードバイクに乗るときに、使うのと近い筋肉を鍛えることが可能です。
基礎能力の向上は、ヒルクライムにも、必ず役に立ちます。
ただ、漠然とローラーをまわしてはいけません。
何かしらのトレーニング理論を参考にするのが良いです。
例えば、マフェトン理論。
少し時代が古い理論と言われる方もいらっしゃるかもしれませんが、持久力の基礎の向上には絶大な効果が多く示されています。
やり方は簡単で、(ターゲット心拍)=(180-年齢)で計算します。
15分ゆっくりアップして、徐々にターゲット心拍に持っていきます。
そのまま、ターゲット心拍で維持します。(Steady)
そして、徐々にクールダウンをかけて、平常時心拍まで戻していきます。
最初はキツければ、ターゲット心拍を下げても大丈夫です。
Steadyは0分でも良いです。
アップしてダウンするだけ。
徐々にSteadyの時間を伸ばしていけると良いです。
無理をしない範囲で。
これなら30分ちょっとあれば、できますよね。
重要なポイントは、徐々にアップすることと、徐々にダウンすること。
急に力を入れてしまうと、筋肉が硬くなって、毛細血管の先まで酸素が行きわたりません。
ゆっくり持っていったSteady状態のときに、持久系の筋肉の動き方、エネルギー代謝系を体が覚えていきます。
すぐに効果は出にくいですが、半年するとすごく効果が実感できるという人が多いです。
大事なのは、どの理論でトレーニングするかよりも、自分の能力に見合った強度で、根気強く継続するということが持久系トレーニングの一番大事なポイントです。
もちろん、自転車で有名なイタリア式ゾーントレーニングの理論を使うのも良いと思います。
どんな理論でも良いので、ひとつの理論で長期的に根気強く続けるのが大事です。
コロコロとトレーニング方法を変えてしまうと、その理論で狙っている到達点に着く前に、別の方向に進むことになってしまうのでもったいないです。
ローラー台がなくてもトレーニング
能力に見合った強度で継続さえできれば、ローラー台がなくてもトレーニングの効果はあります。
実際に、私がするローラー台以外のトレーニングですと、片手を壁に添えて片足つま先スクワットや腹筋などがあります。
これを持久系の強度や方法にして行うわけです。
強度の調整は非常に難しいのですが、片足つま先スクワットの場合、6回を50%の力で1日に3セットだけ行います。
これはLSDとは少し違う理論ですが、昔、私のトレーニングを見てくれたトレーナーさんが、キツイ練習が嫌いな私のために開発してくれた方法です。
50%という言葉が分かりにくいですが、「6回の2倍の12回やったら限界になるだろうくらいの力で、6回だけする」というやり方です。
それ以上の力や多い回数でやると、持久系じゃなくなってしまうそうです。
ゆっくり下ろしていって、勢いよくぴょんと軽くジャンプするように上げます。
少し体を前傾させて、ロードバイクに乗るときの重心のようにしてやります。
なんとなくイメージできるでしょうか。
独特なトレーニング方法なので、合う合わないはあるかもしれませんが、試しに一度やってみると、確かにヒルクライムのときと同じ筋肉を動かしている感じがあると思います。
私の場合は、かなり効果を実感できました。
何より、毎日簡単に気軽にできるのが素晴らしいです。
その他、腹筋・背筋もヒルクライムには使うので、持久系の力加減を意識しながら、定期的に行うのも効果があります。
持久力と瞬発力を同時に鍛える理論としては、スピードスケート日本代表が実践していたTABATA式インターバルなどもあります。
キツくて継続が難しいのが欠点ですが。
まとめ『継続する精神力こそトレーニングの肝』
とにかく継続可能ということが一番大事になります。
キツ過ぎると、「あぁ、あのトレーニングはキツイからヤダ」と心がネガティブに働きます。
人間の体とは面白いもので、ネガティブなメンタルでしたトレーニングは効率が悪くなります。
「あぁ、これなら毎日できる」
そういうトレーニングを継続する方が、持久系トレーニングの場合、効果が高いです。
何よりも長期間コツコツと継続したトレーニングは、ロードバイクのヒルクライムの一番キツいところで「大丈夫、ずっとコツコツ頑張ったから。まだ行ける」という、強い精神的後押しにも繋がります。
大変かもしれませんが、週に3日できるコツコツしたトレーニングと、可能なときだけでも良いので、強度を意識してLSDを取り入れて行くと、今までよりもいろんな世界が見えるようになりますよ。