こんにちは、じてんしゃライターふくだです。
自転車を整備・メンテナンスしていく上で、グリスや油はとっても大事です。
「グリス?油?ルブリカント?何が違って、何をどこに使えば良いの?」
そう思っている人は少なくないでしょう。
今回は、そんなグリスなどの油についてのお話しをしていきましょう。
どうして自転車にはグリスが必要なの?①
まず、そもそもの問題として、どうして自転車にはグリスなどの油が必要なのかを考えていきましょう。
整備や修理をする上で、大事なことは原理です。
やり方を丸覚えするだけでは効果は薄いですし、イレギュラーな修理に対応できません。
「油、グリスにはどういう効果があるから、どういう場所に使うと良い」
という使い方が分かると、あれこれ便利なことが多いです。
油の役割で誰でもイメージしやすいのが、摩擦を減らすということです。
つるつる滑らすということですね。
チェーンに使うルブリカント、ホイールのハブやBB、ヘッドの中などにあるベアリングにも、グリスがたっぷり塗られていますね。
駆動部分の摩擦を減らして、部品の消耗を防ぐわけです。
そして、防サビの効果というのもイメージしやすいでしょう。
油の膜を張ることで、金属が空気と接触するのを防いでくれます。
とにかく金属は、裸のままでいるのが苦手なのです。
どうして自転車にはグリスが必要なの?②
金属は裸で空気や水と接触すれば錆びるように、裸で別の種類の金属と接していると、焼き付きや固着が起きます。
ですから、油の膜でガードしてやるわけです。
金属というのは、なかなか繊細なのです。
サビにせよ、焼き付きなどの固着にせよ。
どちらも酸化還元反応などの化学反応です。
金属は自由電子というのを持っていて、この自由電子が他の物質へと移動してしまい、イオン化がうんたらこうたら、気付くと別の物質に変わってしまっているわけです。
鉄に発生するサビの場合は、主に水(H2O)と鉄(Fe)がアレコレ反応して、酸化鉄(FeO)になるそうです。
金属同士の固着、焼き付きなども詳しい化学式などは知りませんが、そういう化学反応が起きるようです。
焼き付きというと、発熱して溶けてくっつくようなイメージですが、サビなんかに似たような化学反応なんかの方が近い場合もあります。
どうして自転車にはグリスが必要なの?③
もちろん、発熱して焼き付きが起きる場合もあります。
有名なものだと、ステンレスのボルトを締めるときに発生することが多いですね。
ステンレスは熱膨張率が高く、なおかつ熱伝導率が低い素材です。
ボルトを締め付けていくと、ボルトとネジ山の間で摩擦が発生します。
熱伝導率が高い物質の場合、別のところに熱が逃げて放熱してくれますが、熱伝導率が低い物質の場合、摩擦面から熱が逃げにくく、すこぶる高温になります。
さらに熱膨張率が高いので、ネジ山の中で膨らんで、二度と陽の目を見ることのない、悲しい事態に至るというわけです。
自転車のネジには、必ずグリスを塗るというのは、
・摩擦を減らして発熱、摩耗を防ぐこと
・金属が裸で他のものに触れ合わないように、油の膜を着させてあげること
この2つの理由です。
基本的には、他の部品でも同じことが言えます。
自転車のグリスの種類と使い方①
そうは言いましても、自転車に使う油やグリスにも、いろいろな種類があります。
チェーンに使う油は、チェーンオイルと呼んだり、チェーンルーブ、ルブリカントなどと呼びます。
グリスとは、あまり呼びません。
何が何だか、よく分かりませんね。
自転車では、ルブリカント、オイルと呼ぶ場合には、浸透性が求められるものが多いです。
チェーンの場合、油を塗りたいのは関節部分の内側です。
粘度の低いハンドクリームのようなグリスを塗っても、内側には届きません。
ルブリカント、オイルのように液体、さらさら(もしくはビチョビチョ?)とした、内側にしみこんでくれるものが嬉しいですよね。
逆にホイールのハブ(軸)の内側に塗るグリス等の場合、しょっちゅう気軽に分解して塗るというわけにはいきません。
一度、グリスを塗ったら、ある程度の期間はキープしてくれないと困ります。
そうなると、簡単には流れてしまわないハンドクリームのような、ベタベタっとしたものが嬉しいです。
自転車のグリスの種類と使い方②
シマノのホイールなどにはシマノの緑色のグリス、通称デュラグリスが入っています。
デュラグリスは非常に粘度が高く、ベタベタなグリスです。
納豆のように糸を引くほどです。
一部の人は、シマノの納豆グリスなんて呼んだりするほどです。
ホイールハブのベアリングに使う場合、グリスの粘度が高い方がメンテナンス頻度を下げることができます。
しかし、あまりに粘度が高いと、回転性能にとってはマイナスだとも言われます。
ですから、一部の人はシマノのグリスを洗い流して、別のグリスに入れ替えるという人もいます。
しかし、世界一の自転車メーカーであるシマノが様々なことを考慮した結果、意図的に粘度の高いグリスを使っているわけです。
個人的には、メーカーの純正のまま使うのがオススメです。
もちろん、自分で責任を持って使う分には自由です。
具体的にいつ?どこ?グリスの使い方①
グリス、オイルを使う意味・目的・違いについては、何となく分かっていただけたでしょうか。
それでは、具体的に日々のメンテナンスでは、どういうところにグリスを使えば良いのか、みていきましょう。
<チェーン>
まずはチェーンですね。
チェーンはすでに話に出てきましたが、浸透性のあるルブリカントを使います。
ルブリカントの中にも、粘性によって違いがあります。
チェーン用のルブリカントは浸透性を高めるために、何かしらの溶剤に油を溶かして、液体状にしているというイメージです。
液体状なので内側まで入り込んでくれて、溶剤が乾いて油が内側に残るという仕組みです。
さらさらっとしたもの、乾きやすいタイプのもの、メーカーによって表記は違いますが、ドライタイプなどと呼ばれるものです。
汚れが付きにくく、回転性能を高めてくれるものが多いです。
ベチャっとしたウェットタイプは、奥までしっかり潤滑しやすいです。
ドライよりも、さらさらなワックスタイプなどもありますね。
ルブリカントはベチャベチャといっぱい付けている方が、摩擦抵抗を減らしてくれるようなイメージがあります。
しかし、実際には過剰なオイル、グリスはそれ自身が回転抵抗となるため、ペダリングが重くなるというのが一般的です。
メーカーによっても違うので一概には言えませんが、回転抵抗を減らしてくれるタイプのものは、継続期間が短くなりやすい傾向にあり、頻繁に注油する必要があります。
具体的にいつ?どこ?グリスの使い方②
<ネジ>
固着を防止するため、ネジには必ずグリスを塗布します。
メス側、ネジを入れる方の材質によっては通常のグリスじゃなく、専用のクリームなどを使う場合もあります。
チタンのフレームのBBなどですね。
ただし、チタンフレームでもボトルホルダー部分は、通常のグリスで良い場合もあります。
特殊なフレームの場合は、必ず購入したお店のメカニックさんに確認してください。
<ネジの頭>
ネジの頭の部分にサビ止めのために、少量のチェーンオイルなどを塗る人もいます。
ほんの少量で良いので付けておくだけで、サビ止めの効果はあります。
摩擦などは特にないので、どんな油でも特に問題はないでしょう。
皮膜さえできれば良いので、ごく少量で十分です。
<ワイヤー>
ブレーキやシフトなどのワイヤーの動きを滑らかにするためにグリスを使う人も中にはいますが、個人のこだわりの範囲ですので、必須というわけではありません。
ワイヤーにグリスを塗ると、埃を呼ぶというデメリットもあります。
<ベアリング周辺>
ベアリングのグリスアップに関しては、ショップでする場合が多いでしょう。
ご自身でする人は、それぞれにこだわりもあるでしょうから、好きなグリスを使えば良いでしょう。
まとめ『日々のメンテナンスにはグリスよりルブリカント?』
ざっくりですが、自転車のグリスのお話でした。
日々のメンテナンスで使う油と言えば、やはりチェーンオイルですね。
ベアリングのグリスアップなどは、少々専門的です。
ただ、ネジの付け外しくらいは、ほとんどの人がすると思いますので、やはりグリスもひとつは持っておくと良いでしょう。
特別、こだわりが無ければ、シマノのデュラグリスが手に入りやすいですし、とりあえず間違いないでしょう。