LSDトレーニングの効果は自転車ではどうなの?

こんにちは、じてんしゃライターふくだです。
低い出力で長時間Long、ゆっくりSlow(あるいは一定のペースでSteady)、長距離Distansを走るLSDトレーニング。自転車では非常に重要なトレーニングとされていますが、果たして実際の効果はどうなのでしょうか。
「ロングライドはよくするんだけれど、レースでは速くなれない」
という悩みを持っている人も少なからずいるでしょう。
今回はそんなLSDトレーニングと自転車のお話です。

自転車におけるLSDトレーニングの効果とは?①

まず、結論から言えば、LSDトレーニングは非常に大事です。
ただ、LSDトレーニングのみで自転車のすべてを鍛えられるわけではありません。
全てのトレーニングについて言えることですが、一つのトレーニングだけで全てを補えるトレーニングはありません。
トレーニングとは、それぞれに効果、目的が違います。
よく初心者の人が勘違いしてしまうのが筋トレですね。筋肉があれば速くなるだろうということですね。一生懸命スクワットをするわけです。
しかし、一口にスクワットと言っても、フォーム、回数、セット数、負荷によって鍛えられるポイントも変わってきます。
目的を持ってしないとトレーニングは効果が薄いです。

では、LSDトレーニングとはどういったポイントを鍛えるトレーニングなのでしょうか?
LSDトレーニングとは、Long(長く)Slow(ゆっくり)Distans(距離を)というトレーニング方法です。昨今ではSlow(ゆっくり)じゃなく、Steadey(一定の)という言葉を使う場合もあります。
基本的には低い出力で長時間トレーニングして持久力を上げようというトレーニングです。

自転車におけるLSDトレーニングの効果とは?②

自転車の持久力と一口に言っても様々な要素がありますが、まず一つが筋肉や肉体的な持久力、もう一つがバイクコントロールなどの技術的なものがあります。
ロスの少ない良いフォームで乗れば、長く、速く、楽に乗れます。
LSDではこのどちらも鍛えることが可能です。

まず、技術的な面ですが、長時間自転車の上で過ごすLSDトレーニングによって、自転車の扱い方、自転車の上でのバランスの取り方というのを自然と覚えることが出来ます。自転車の上での脱力した状態、バランスの芯のような感覚を身に付けられれば、非常に楽が出来ます。
初心者のうちは肉体的なメリットよりも、技術的なメリットの方が多く得られるでしょう。

自転車の上で脱力できるようになる。
ロードバイクに乗り始めて数年の間にまず目指すのはこれです。
ですから、ただ漠然と長い時間をこぐだけでなく、上半身などの脱力、楽をしてこぐということを意識しながら乗るのが大事でしょう。
全力で乗るなどのトレーニングでは、脱力の感覚はなかなか得られません。

自転車におけるLSDトレーニングの効果とは?③

次に肉体的な持久力について鍛えられるポイントです。
簡単に言うと持久系の運動の基礎を作るというのがLSDトレーニングのメリットです。
逆を言うと、LSDトレーニングだけでは基礎以上のものを鍛えるのは難しいです。
「ロングライドが好きで、よくロングライドするんだけれど速くならないんだよね」
という人が少なからずいるのも、これが理由ですね。

ただ、自転車はあくまで持久系スポーツですので、持久系の基礎が出来ていなければ、どんなトレーニングをしても効率が悪いです。
ですから、ロングライドが好きで、よく遠くまで行くけれど速くならないという人は、基礎自体は出来ているので、あとは速くするためのトレーニングを取り入れていけば速くなれます。

「じゃあ、LSDは初心者以外には意味がないの?」
という疑問を持つ人もいますが、プロの競輪選手もLSDトレーニングをします。
オフシーズンにしっかりLSDトレーニングをしている選手は怪我に強いと言われるそうです。怪我に強いというのは、プロスポーツ選手にとって何よりも重要なことの一つでしょう。
まず、怪我をしないというのは選手生命の長さにも関わります。
怪我をすると稼げない期間ができますし、トレーニングも出来ません。実戦から離れるのはプロスポーツ選手にとって本当に困ったことです。
また、怪我しにくいということは、トレーニング量なども増やすことが出来ます。

競輪選手のLSDトレーニングは我々アマチュアから見ると、かなり速い速度ですが、彼らにとってはあくまでLSD、長時間、ゆっくりのトレーニングです。

プロの選手でさえ大事にしているトレーニングですから、アマチュアの我々にとってもLSDトレーニングは重要だと考えて問題ないでしょう。

ゆっくり走るトレーニングの効果

トレーニングというと速く走る、重い負荷をかける、つらいことをするというイメージがありがちですが、LSDトレーニングのように意図的に負荷を下げてするトレーニングもあります。
筋力トレーニングでも、昨今注目されていますが、スロートレーニング、略してスロトレなどもその一種でしょう。
スロトレは、腕立て伏せなどのトレーニングを負荷を落として通常の3倍の時間をかけてゆっくり行う方法です。
LSDトレーニングとスロートレーニングは狙うポイントはいくらか違いますが、いずれも、速く、重く、つらいトレーニングとは違います。

筋肉には遅筋と速筋があります。
遅筋は小さい力を長く継続する筋肉。
速筋は大きい力を瞬発的に発揮する筋肉。
それぞれに役割が違います。

LSDでは遅筋の使い方を体に覚え込ませるというのが、とても重要です。

自転車競技では時間が短く大きい力を使うヒルクライムでも30分程度はあります。
速筋のみでは、まず走り切れません。きちんと遅筋も使えないとバテてしまいます。

持久力トレーニングの効果にも種類がある

一口に肉体的持久力と言っても、30分程度のものから、2時間程度のもの、100km以上のウルトラマラソンのように10時間以上のものまで様々なものがあります。
基本的なところは共通のところもあるかもしれませんが、やはり違う点も少なからずあるでしょう。

先ほどの遅筋、速筋の話ですが、人間の運動は、ある程度までの強度は有酸素系の遅筋を多く使う運動、ある程度以上は無酸素系の速筋を使う運動に分かれます。
有酸素運動と無酸素運動の切り替わるゾーンをATと言います。

ロードバイクの場合、無酸素系の運動よりも有酸素系の運動でつないで行って、勝負どころで無酸素系の爆発力が必要という形になります。
つなぎの有酸素系のパートで遅れてはいけませんし、最後の無酸素系の爆発が出来るだけの足を残していないと勝てません。
ATのゾーンを上げて、高い出力を長時間維持出来るようにして、最後まで足を残すということが重要になります。

ただし、これはテレビなどでよく見るロードレースでの話です。
クリテリウムではそこまで長時間にはなりませんし、ヒルクライムレースでは最後のスプリントでの決戦よりは、ライバルのペースにどこまでついていけるか、相手を千切れるだけのペースを出せるかの戦いとなります。

厳密に言うとレースの種類によって足をどの程度残す必要があるか、爆発力が必要かというのも変わってきます。
しかし、共通して言えるのは、基礎的な持久力の高さはいずれのレース、トレーニングでも重要という点です。

まとめ「LSDだけでは速くなれないけれど」

LSDトレーニングの重要性、LSDトレーニングはどういった能力を上げるかといった話をしてきました。
LSDトレーニングだけではレースには勝てません。
ただ、LSDトレーニングをしなければ基礎が出来ません。何事にも共通して言えることですが、基礎が出来なければ必ずどこかで伸び悩みます。基礎の能力、特に遅筋系の能力というのは、コツコツ長期間続けるということが最も大切です。
中級者程度になるとLSDは意味が無いと軽視してしまう人もいますが、特に練習時間をプロのように長く取れないアマチュアこそ意識的にLSDを取り入れるということは重要なのかもしれませんね。