クロスバイクに限らず、ロードバイクやMTBなどのスポーツバイクではチェーンが伸びるというのは当たり前のことです。
しかし、ママチャリやシティサイクルではメンテナンスに手間をかけるということがないため、チェーンが伸びるという意識が殆どありません。
クロスバイクは街乗り用としても最近人気が高く、老若男女を問わず街角で走る姿をよく見かけますが、メンテナンス不足でチェーンがカラカラと音を立てているものも結構あります。
チェーンが伸びるとスプロケットやディレーラーなど様々なパーツの摩耗はもちろん、ペダルにかかる負担も増えて快適な走りの妨げになります。定期的にメンテナンスを行い、チェーンの伸びには注意するよう心がけましょう。
ゴムでもないのに、クロスバイクのチェーンが伸びる?
「硬ーい鋼(ハガネ)でできているのにチェーンが伸びるってどういうこと?」
毎日ペダルを漕いでいているとチェーンにも引っ張る力が働いて、硬い鋼も少しずつゴムのように伸びるのだろうか?そんな風に思われるかもしれませんが、そういうことではありません。
クロスバイクをはじめ自転車のチェーンの伸びは、チェーンの構造によるものです。
では、どのように伸びるのか、ちょっと説明しましょう。
チェーンは、横から見ると両端に丸い穴が開いた瓢箪のような形をしたコマと呼ばれるパーツの穴と穴をピンで結合し数珠つなぎにしたものだと判ります。それをチェーンリング(クランクで回す歯車)とスプロケット(タイヤを回す歯車)、それぞれの歯車に噛み合うように渡すことで、ペダルを踏めば自転車が走るというわけです。
この時、チェーンが丸い歯車に噛み合うようにするにはコマとコマをつなぎ合わせた部分が自由に動かなければなりません。そこで、つなぎ目はローラーと呼ばれる筒の中に、その筒の内径よりわずかに細いピンを通すことで自由に動けるようにしてあります。
チェーンが伸びるのは構造によるものというのは、このつなぎ目のローラーとピンの摩耗が原因で起こるからです。
詳しく説明すると、ローラーと呼ばれる筒の内側(スリーブ)はピンとの間にわずかな隙間があるわけですが、チェーンが動くたびにスリーブとピンの間で摩擦が起きます。すると互いに擦れ合うことで摩耗し、スリーブ(ローラーの内径)は大きく、ピンは細くなり隙間が大きくなります。隙間が大きくなるということは、コマとコマの間隔が大きくなるということで、チェーンが伸びるということになるのです。
クロスバイクのチェーンが伸びると一体どうなるの?
チェーンの伸び、実際には上の説明で書いたようにコマとコマの間隔が広くなるのでチェーンピッチの伸びとも言います。
このチェーンピッチは、チェーンリングやスプロケットなどの歯車の間隔に合わせたもので、互いの間隔がぴったりと合っているからチェーンと歯車が噛み合い、ペダルを踏むと歯車が回るということになります。
従ってチェーンが伸びると歯車とのピッチが合わなくなり、噛み合わせが悪くなります。
人間でもそうですが、歯の噛み合わせが悪くなると物が食べづらくなったり、歯と歯が擦れ虫歯の原因になったり、余分なところに当たって口内炎になったりと良いことがありませんが、クロスバイクはもちろん、自転車でも同じことです。
チェーンリングやスプロケット、ディレーラーとの間に不要な摩擦が起こり、劣化の原因になることはもちろん、スムーズなペダリングやシフトチェンジの妨げにもなります。
クロスバイクのチェーンの伸び、許容範囲はどのくらい?
クロスバイクに限らず自転車のチェーンの伸びは、1%が許容範囲の限界といわれています。
実際にはそれ以上伸びても走ることは可能です。ママチャリなどではとっくに許容範囲を超えていると思われるものに時々出会います。皆さんも、ジャラジャラ、ジャラジャラとチェーンの音を立てながら乗っているママチャリを見かけることがありますよね。アレです。
ママチャリのチェーンはチェーンカバーで覆われ、変速機もなかったりするので、相当伸びてユルユルになっても外れたりすることは滅多にありません。
しかし、スポーツバイクではそうはいきません。シフトチェンジがスムーズにいかず、切替ごとにガチャガチャと大きな音を立て、あげくはチェーンが脱落し転倒などのトラブルの原因になります。
クロスバイクのチェーンの伸びはどうしたらわかるの?
さて、チェーンの伸びですが、どうしたらわかるのでしょうか。
スポーツバイクの初心者はもちろん、シロウトでも一目で判る一番カンタンな方法は新品と比べてみることです。チェーンをピーンと張り、並べてみればその違いが一目でわかります。
でもそんなことをしなくても、一般的にはチェーンチェッカーで伸び率を計測します。
チェーンチェッカーは、様々なメーカーから多彩な商品が出ています。安いものは数百円からあり、計測値のデジタル表示ができる高いものでも1万円まで出さなくても手に入ります。
ただし、購入の際は自転車チェーンに対応した製品かどうか気を付けて選んでください。自転車以外にもチェーンが使用されている機械や乗り物はたくさんあります。例えば、工場のベルトコンベアーやフォークリフトなど、チェーンはいろいろところで使用されています。ネット通販などで購入する場合は、自転車用で検索して間違わないようにしましょう。
クロスバイクのチェーンが伸びたらどうしたらいいの?
チェーンが伸びた場合の対応は調整するか交換ですが、クロスバイクをはじめスポーツバイクでは基本的には交換です。
その理由は、スポーツバイクではチェーンリング、スプロケットともに何枚ものギア(歯車)で構成されていて、使うギアにより長さが変わります。その際、使う長さが変わってもチェーンの張りを一定に保つようディレーラー(変速機)のバネによって調節されています。なので、チェーンが多少伸びたからといっても弛まない構造になっています。
そのためチェーンが伸び、スプロケットとの噛み合わせが悪くなれば高価なパーツであるスプロケットの劣化の原因になるので交換することになります。
交換の目安は、概ね0.75%というのが多いようです。許容範囲の限界を1%と書きましたが、チェーンチェッカーなどにも0.75%と1%のメモリが確認用に付けられているものが数多くあります。早めに交換する人では0.5%という人もいますが、スプロケットの劣化などを考慮するならば早めの交換に越したことはありません。
走行距離では3000㎞~5000㎞くらいが交換の目安とされますが、雨天での使用やメンテナンスの状態により変わります。
まとめ、チェーンの伸び、気にする前にメンテが大切
チェーンは比較的安価なパーツで、ショップで交換してもらっても工賃を含め3000円あればお釣りがくるところも結構あります。
しかし、クロスバイクをはじめスポーツバイクを快適に走らせるためには、まず日頃のメンテナンスをしっかりすることが大切。メンテナンスを行うことで、チェーンの伸びや傷み具合なども自然にチェックできるようになります。
チェーンはタイヤなどと同じく消耗品の一つですが、小まめな洗浄と注油をすることで長持ちします。最近ではチェーンを張ったまま手を汚すことなくカンタンに洗浄ができる専用キットなどもあり、メンテナンスも大変楽になりました。
チェーンが快調ならチェーンリングやスプロケット、ディレーラーといった関連パーツの摩耗や劣化の防止にも繋がり自転車自体が長持ちします。