自転車のホイール重量神話を切る!

自転車のホイールは、軽ければ軽いほど良いと思っていませんか?
速く走らせる、安全に走らせるという観点で言うと、必ずしもそうではありません。

しかし、軽くないと売れませんから、各社とも軽さと他の要素を両立させようと苦心しています。
今回は重量神話の真偽と、各メーカーの重量に対する考え方を比較していきます。

自転車のホイール重量の指標

ほとんどの自転車ホイールメーカーのスペック表には、ホイール全体の重量が記されています。
その重量は、ときどきサバを読んでいることがあるのですが、今回はその話はおいておきましょう。

ホイールは、リム・スポーク・ハブ・ニップルから成り立っています。
そしてクリンチャーの場合だと、リムテープとチューブとタイヤ、チューブレスとチューブラーホイールの場合は、タイヤの重量が加わります。

タイヤと一緒に販売を行うマビックなどは、ホイールとチューブやタイヤの重量をすべて加えた重量を公表しています。
他のメーカーは、重量にリムテープなどを含むか含まないか、という基準を統一していません。
例えば、シマノのアルミクリンチャーホイールは、チューブレスモデル以外はリムテープが必要ですが、リムテープ無しの重量になっています。

いままで聞いたことはないですが、クイックリリースありの重量を表示しているかもしれません。
このように、単純にホイール重量といっても、どこまでを指しているか各メーカーによってバラバラです。

ですから、単純に重量を比較したいならば、スペック表に頼るのではなく、すべて入手して自分で計測するか、実際に計測している人のブログやコミュニティを覗く必要があります。

英語圏で重量比較サイトとして有名なのが、Weightweeniesというサイトです。
ホイールやフレームの実測重量を写真付きでまとめているコミュニティサイトです。
実際に手に入れる手段がない方は、このようなサイトを参考にしてみてください。
まとめると、重量を重視したいときに、メーカーのスペック表を完全に信頼することはしないでほしい、ということです。

自転車のホイール重量とリム重量

ホイール全体の重量と、リム重量どちらが大切か、というのはよく話題になります。
例えば、デュラエースの9000C24と、Fulcrum Racing Zeroを比較してみると、その思想の違いが読み取れると思います。

9000C24のリム重量は、400gを切ると言われています。
しかしリムテープが必要なので、実際は410gほどになります。

一方、Racing Zeroのリム重量は、普通のクリンチャーモデルで430gほどだと言われています。
しかし、リムテープが必要ないので、C24との差はその分だけ縮まります。

2つの自転車ホイールの設計思想は、リムだけではなく、スポークやハブにもみてとれます。
シマノはリム重量を軽くすることに重点を置き、リムの上面はカーボンでラミネートされています。

一方で、ハブはチタン製で、カーボンハブなどと比べると多少重いです。
2016年の9100デュラエースは、重量が多少重くなってしまいましたが、リムの構造は変わらないので、実際の乗り味はほとんど変化がないと思われます。

Racing Zeroのリムは、すべてアルミでできています。
しかも後輪のリム高さは28㎜と、他のライバルホイールよりも高くなっています。
重量面での不利を承知で剛性、特に横剛性を上げる事に集中しているのが、Racing Zeroです。

私は体重が90キロ近くあるので、どちらを選ぶかは自明です。
実際、Racing Zeroを使っていましたが、ヒルクライムではどんどん上ってくれるし、自分の体重で歪んでいる感じもしませんでした。
体重が軽い方なら、デュラエースのホイールのほうが進みが良いと感じるかもしれません。

自転車ホイールのスポーク重量に対する考え方

スポーク重量は、特に手組をされる方には気になるかもしれません。
しかし、自転車の完組ホイールにおいても、スポークの材質・品番・本数などで、全体重量にかなりの影響を与えます。

ここで各社の同じ長さあたりの重量を比較しても、きりがありませんし、比較してくれているサイトもあるので、そちらをご参照ください。

スポークはカーボン・ステンレス・アルミなどの材質が使われています。
カーボンスポークで有名なのは、LightweightやMavic R-sys SLRで、ステンレスならZonda、アルミならRacing Zeroあたりが代表格でしょうか。

スポークは、ハブとリムを結節する役割で、それ以上でもそれ以下でもないのですが、空力・乗り心地・かかりの良さに影響します。

ホイールの空力はリムではなく、スポークを一番に考えるべきだという人もいます。
スポークは、薄いスポークの方が空力が良いとされますが、伝統的な丸スポークも各所で使われています。
薄いスポークは、ホイールの性能をスポイルするという考えからです。

例えば、Mavicの一部の製品では、空力にあまり関係のない後輪に丸スポークを使用しているものもあります。
中華カーボンホイールなどでは、ハブとスポークの質を変えて、グレードを分けているものもあります。

ラインナップを見てみると、一番安いレンジと高いレンジだと、100gから150gほど差があります。
つまり、スポークとハブを高いものにすると、前輪と後輪あわせて、それ位の差が生まれるということです。

言い換えると、リムが重くても、スポークを軽いものにして軽く見せかけているホイールも存在するということです。

結局ホイールの重量は大切なのか?

結論としては、ある境目を基準にして、これ以上軽くしても良くならない、または逆に悪くなるというものです。
例えばアルミクリンチャーは、Mavicとシマノで1,300g台、他の有名メーカーの最高峰アルミクリンチャーは1,400g台です。
これより下のホイールは、ちゃんとしたホイールとして成立しません。

例えば、手組ホイールでDT SwissとSapim、Extraliteのハブを使った1,100g台のホイールも存在します。
しかし、このようなホイールは、乗る人や乗る場面を限定してしまいますし、振れがでやすいです。

アルミクリンチャーで、重量と値段が各メーカーほとんど横並びになっているのも、軽さとホイールとしての丈夫さのバランスが、1,400gぐらいでちょうど良いからです。

一方、カーボンチューブラーはどうでしょう?
カーボンチューブラーホイールも、24㎜や20㎜といったリムハイトのもので、700g台の軽量なホイールなどもあります。
しかし、そのような低いハイトのカーボンリムは、座屈に対して脆弱で体重のある方にはおすすめできません。
体重が軽い方でも、歪んで進まないといった印象になると思います。

そうなると、30㎜か35㎜あたりのホイールを選ぶのが、一番空力的にも座屈に対する耐性的にも、軽量ホイールベストチョイスとなります。

例えば、Bora Ultraのチューブラーあたりは、見た目・性能・軽量性どれも高いバランスで備えており、とても人気のホイールです。
もっと軽量化を目指すならば、カーボンスポークのReynolds RZRやLightweightあたりを選ぶことになります。

結局、カーボンチューブラーでも、1,100g周辺で軽量化はやめておいた方がよく走ります。
結論としては、アルミクリンチャーなら1,400g、カーボンチューブラーならば1,100g台のものを選んでいくのが良いでしょう。
それ以下の重量のものは、犠牲にするものが大きすぎます。

自転車のホイールの重量を感じてしまったら

峠では、自転車はとにかく重く感じてしまうものです。
それを、軽量なホイールに変えたら楽になるというものではないです。

また、ホイールが重いと感じてしまったときに、リムのバランス調整やグリスアップ、振れ取りといったメンテナンスだけで復活することが多いです。
ホイールの寿命というのは、落車しない限りは、リムの寿命と同義です。
リムの寿命がくるまでは乗り込んであげて、メンテナンスをきっちりしてあげることで、新しいホイールへの物欲も抑えられることでしょう。

まとめ:自転車ホイールの重量を気にし過ぎてはいけない

ホイールメーカーは、軽量性が消費者の購入動機となることをよくわかっています。
ですから、リムテープ無しの重量など、少しせこい方法で重量を表示したりするわけです。

また、ホイールの重量というのは、同じ重量でもどこに重量が配分されているかで違います。
結局は、乗って試してみないと、自分にとってのベストホイールはわからないわけです。

同じ価格帯のホイールの中で、重量で迷ってしまったら、もうクジでも、見た目重視でも、さっさと決めてしまいなしょう。
迷う時間があったら、自転車で峠を一本でも上ったほうがマシというものです。