ラチェット音とは後輪のハブから出る構造上の音で、ブレーキなどからする異音とは全くの別物です。
カンパニョーロのホイールは、このラチェット音が大きいことで有名ですが、人気の「ゾンダ」は比較的小さいと言われています。
また、このラチェット音は大きい方が良い、小さい方が好きと意見が分かれていますが、どうなのでしょうか?
今回は、このラチェット音を考えてみたいと思います。
カンパニョーロのゾンダとラチェット音①~ゾンダとは?
イタリアの老舗自転車部品メーカーのカンパニョーロですが、ことホイールにかけては、世界トップの人気メーカーと言っても過言ではないでしょう。
ロードバイクのスピードを大きく左右するホイールは、何を差し置いても、真っ先にグレードアップさせたいパーツです。
その中でもロードバイクの初心者向けのエントリーモデルから、まず最初のグレードアップのときに視野に入るのが、今回の主役カンパニョーロのアルミリムホイール「ゾンダ」です。
エントリーモデルは前後で2kgを超える通称「鉄下駄」と呼ばれるホイールを履いていることが多いですが、ゾンダは前後で1.5~1.6kg程度なので、大幅な軽量化になります。
また、後ほど詳しく説明しますが、初心者からの買い替えが多いということで、ミドルクラスくらいの位置付けなのですが、上級モデルに負けない高性能でありながら、他のホイールの約半分の価格で手に入れることができます。
すなわち、ゾンダは大変にコスパの良いホイールなのです。
また、ラチェット音が比較的静かなのも特徴なのですが、ここは意見が分かれるところです。
カンパニョーロのゾンダとラチェット音②~ゾンダはワイドリムへ
ゾンダは2017年ワイドリム化され、リム内径が17mmになりました。
もちろん、これは昨今のロードバイク用のスリックタイヤの主流が、25Cになりつつあることを受けてのことです。
しかし他にも、長年の研究結果により、23Cの細いタイヤよりも25Cのタイヤの方が、地面との接地面積が小さいことが分かったからです。
従来のリムの内径は15mmだったのですが、これに25Cのタイヤを合わせると、リムの外側にタイヤがはみ出るような形になり、空気抵抗を受けやすいと考えられてきました。
そこで、リム内径を広げることではみ出しを防ぎ、同時に剛性も高めたのが、C17というワイドリムになります。
ゾンダは、もともとスポークがステンレスだったため、少し柔らかめの乗り心地でした。
ですが、ワイドリム化により剛性が高まり、踏み込んだときのパワーがストレートに伝わるようになりました。
確かにワイドリムにしたことで重量が上がり、同じくらいのスペックで50gほど軽く、23Cのタイヤも履けるフルクラムの「レーシング3」に流れる傾向もあるようですが、転がり抵抗の軽減もあって長距離を快適に走るならゾンダだという声が多いです。
そもそもフルクラムはカンパニョーロの子会社ですから、比較されることの多かった両者に少し違いを持たせ、差別化を図る狙いもあったのでしょう。
なおラチェット音に関しては、少し甲高くなったというインプレを見かけました。
カンパニョーロのゾンダとラチェット音③~ラチェット音とは?
ここまではカンパニョーロのゾンダの性能についてお話しましたが、ここからはラチェット音について説明しましょう。
固定ギア以外の全ての自転車の後輪ホイールはフリーホイールと言って、惰性で動いているときはペダルが止まるような機構をハブに組み込みこんでいます。
そして、この機構は動作方向を一方に制限するものであり、これをラチェット機構と呼びます。
ラチェットとは、のこぎり状の歯が刻まれている歯車で、この歯車に爪が掛かっています。
ペダルを正方向に回すと力がハブに伝わり、爪がラチェットの歯車に噛みこんで、一緒に車輪を回します。
ですから、ペダルを逆方向に回転しても後ろに進まないのは、ラチェット機構が一定方向にしか動けず、反転した場合、爪と歯車がかみ合わず、ぶつかり合って車輪が動かせないからです。
したがって、ラチェット機構が無い固定ギアの自転車は、後ろに進むことができてしまいます。
また、フリーホイールにはペダルからの力しか伝わらないので、惰性で動いているときは空回りしている状態なのですが、このときに出るのがラチェット音です。
押し歩きや下り坂など、ペダルを回していない状態で自転車を動かすと鳴るのがラチェット音いうことです。
ラチェット音はなぜメーカー毎に違うのか
さて、このラチェット音はメーカーによって大きさが違ったりするのですが、特に大きいと言われているのが、カンパニョーロとフルクラムです。
先ほども触れたように、歯車に爪が当たる音がラチェット音ですが、この爪が大きく、さらにラチェットがハブに密閉されていないので音が大きくなると言います。
また、メーカーはハブにグリスやオイルを塗って、大きな音にならないようにして出荷するのですが、カンパニョーロやフルクラムは、工場からの出荷時にグリスを塗っていないとの説があります。
元々カンパやフルクラムは、ハブのグリスアップを販売店に任せていたので、工場からグリスを塗らなかったり、少ない状態で出荷すのが通常でした。
しかし、これが知らぬ間に周知徹底不足になり、販売店がグリスアップしないで売ってしまったので、最初から爆音がする状態になったそうです。
ただ現在は、出荷するときに十分にグリスアップをしているそうなので、大きな音を期待してカンパニョーロの「ゾンダ」やフルクラムの「レーシング3」を購入した人からすれば、意外と音が小さいと感じるようです。
ラチェット音は操れる!
ラチェット音は構造上の問題と、ハブに塗るグリスの量も関係しているということが分かってきました。
構造上の問題はユーザー側からは、どうすることもできないので、どうしても気になる方はカンパニョーロのゾンダやフルクラムのレーシング3は避けるしかないかもしれません。
ネットや雑誌のインプレなども参考にしていただきたいですし、動画サイトには実際のラチェット音の動画が何本もアップロードされているので、気になる人は確認してみてください。
ただ、シマノのホイールのようにラチェットが密閉されていると難しいですが、カンパニョーロやフルクラムのように露出されていれば、グリスアップして音を小さくすることは可能です。
グリスは経年劣化するものなので、小まめにメンテナンスすることも大切だと思います。
また、グリスを塗り過ぎるとラチェットの爪が起きなくなったりする可能性もあるので、適度に行ってください。
さらに、最近は気温や環境に左右されにくい高性能のグリスもあり、シマノのグリスがひとつあると良いでしょう。
ラチェット音は大きいのと小さいのどっちが良いの?
ここまでラチェット音について、色々と確認してきましたが、欠陥でも故障でもありませんでしたね。
自転車は、様々なところから音がするものです。
ラチェット音のように構造上音が出るものには、他にもブレーキだったりBB(ボトムブラケット)などがあります。
しかし、ラチェット音とブレーキやBBからの音は、性質が違うように思います。
ブレーキやBBは、何とか音が出ないようにメンテナンスしたり、音が出ないものを選んでいるはずです。
しかし、ラチェット音はグリスを少なくして、わざわざ爆音にして楽しんでいる人もいれば、極端なグリスアップをして無音に近くしている人もいます。
販売しているメーカー側の姿勢を見ても、音が出るのをマイナスとは思っていないからこそ、カンパニョーロやフルクラムは昔からずっと、ラチェット音の鳴る構造のホイールを作り続けているわけですからね。
しかも、ゾンダやレーシング3はラチェット音が大きくても、今なお人気上位のホイールとして君臨しています。
ラチェット音は好みの問題
今回はラチェット音について考えてみましたが、まとめると結局は個人の好みという無責任な結論になってしまいます。
「あの音がかっこいいんだ」という意見も、「あ~耳障りだ!」という感想も否定はできないということです。
性能にはあまり影響が無いことなので、あくまでもホイール選びの条件のひとつとしての認識で良いのかもしれません。