自転車の適正なサドルポジションを知って快適に走ろう!

自転車と乗り手の身体が直接触れる部分は割と少なく、手がハンドルに、お尻がサドルに、そして足がペダルに、基本はこの3点のみです。

特にサドルは接地面が広く、体重が最も掛かっていますので、乗り心地を大きく左右します。

それだけに角度や高さなどのポジションは極めて重要で、少しでも無理をすると途端に厳しい状況に陥ってしまいます。

そこで今回は、特にサドルの高さに注目して、ベストポジションを模索していきます。

自転車のサドルポジションを決める上で重要なこと

今回はママチャリとスポーツタイプの自転車に分けてお話をしていきますが、サドルの高さを考える上で、まずは角度が地面と水平であることを確認します。

水平が正解とまでは言えませんし、前下がりや前上がりが最適な場合もありますが、まずは水平を基本にします。

水平器があればよいですが、持っている方は少ないと思いますので、板と1/3ほど水を入れたペットボトルを用意してください。

自転車のサドルは座面が水平なものばかりではないので、前後で一番高くなっている部分に板を合わせて水平にします。

その上にペットボトルを置き、水の傾きを見ればサドルが地面に対してどういう角度になっているか分かります。

傾いているようであれば、サドル下にあるボルトを六角レンチで緩めて水平にします。

およそ水平になったらボルトを締め、サドルにまたがってみてください。

その際のお尻のポジションですが、適正な高さを出すには収まりの一番よい場所に座る必要があります。

お尻の後方に座面に当たる骨(坐骨)があると思いますが、サドルの横幅が一番広い場所に坐骨がくるのがよいです。

多くのサドルは坐骨が当たるであろう部分に厚みを持たせたり、緩衝材を多く入れたりしているものなので、そこが快適なポジションであるはずです。

ママチャリに最適なサドルポジション

前項では、自転車のサドルの最適なポジションを模索する上で基本となる角度についてお話ししました。

水平に近づいたらここからは、自転車の種類別に考えていきましょう。

まずは、ママチャリなど主に生活の足として使用する自転車についてお話しします。

ママチャリのサドルは幅が広く、全体に丸みがあり、スポンジや厚めのパッドが入っています。

これはサドルでしっかりと体重を支えるためで、ママチャリの基本ポジションに大きく関係してきます。

ママチャリはサドルにどっかりと腰を落ち着けて重心を低く保たないと、車体が重いので支えきれなくなってしまいます。

また、街中などのごみごみした状況では、視界を確保するためにも上体を起こして走らないとなりませんので、自然とサドルに体重が掛かります。

そういった体勢で乗るためのサドルの高さは、「サドルに跨って足の裏まで地面にべったり」でよいでしょう。

スピードを求めるなら、後述するスポーツバイクに近いポジションも否定しませんが、ママチャリは安定性重視の自転車なので、基本ポジションは「腰をどっかり、足はべったり」でよいでしょう。

スポーツタイプの自転車は効率よくペダルを漕げるポジションで

続いて、スポーツタイプの自転車ですが、このタイプは生活の足や移動手段というよりも、自転車そのものを走らせる楽しみで乗るものです。

そのため、ベストのサドルポジションは、効率よく、力強くペダルを漕げる位置ということになります。

特にスピードに特化したロードバイクはその傾向が強く、プロのロードレーサーともなれば、数ミリ単位でポジション出しを行います。

それは余談として、まずはサドルに跨りペダルを一番下にセットし、かかとを乗せます。

この状態で膝が伸びきる場所が、最もペダルに体重が乗り、力強く踏み込める位置なので、そこにサドルの高さを合わせます。

次に、ペダルに乗せている足の位置を、かかとから親指の付け根あたりに移します。

そうすると膝が少し曲がりますが、この時に大転子(大腿骨の外側)、膝の中心、くるぶしを結んだ線が145~150度になっているのが、最も効率がよいと言われています。

ただし、角度を測る機器はどこにでもあるわけではないので、膝が伸びて真っ直ぐな状態が180度なので、そこから30~35度程度膝が曲がっていると考えて、高さを調整してみてください。

サドルを前後に動かすと高さも変わる

スポーツ系自転車のサドルはレールが付いていますので、前後にも動かすことができます。

前後位置はクランクを水平にして、膝のお皿部分とペダルの芯が垂直になるのが理想的です。

糸で結んだ5円玉を膝から吊り下げて、ペダルの芯に合わせるのが伝統的な手法ですが、見てくれる人がいるならお願いしましょう。

厳密には中々難しいので、目視で合わせている人も多くいらっしゃるとは思います。

いずれにせよ、サドルの前後位置を変えた上で、前項でお話しした適正なポジションに持っていくと、また高さが変わります。

前に移動するとサドルは低くなり、後ろにすると高くなります。

微調整の範囲で収まるとは思いますが、ペダルを漕ぎながら違和感を無くしていく作業になります。

このようにして、割とアナログ的に合わせていくのが一般的なやり方ですが、数値を用いて合わせていく方法もあります。

これも比較的知れ渡った有名な方法ですが、股下に0.89や0.875を掛けてサドル高を出す方法です。

上級者や身体が柔らかい人は0.89、初心者の方や柔軟性に自信のない方は0.875を掛けてみてください。

例えば股下が75㎝の人で少し高めに設定するとした場合、75×0.89=66.75㎝となります。

したがって、この方はペダルが付いているクランクの中央部分からサドル座面の高さを66.75㎝にしてみて、確認するということになります。

クロスバイクは低めのポジションを心掛ける

さて、前項まではママチャリやロードバイクのサドルポジションについて考えてきましたが、続いてはクロスバイクです。

クロスバイクはスポーツ自転車の入門的存在で、「街乗り車」などと分類されることもあるくらい、用途的に見てもママチャリに通じる生活感があります。

そのため、どう調整してもロードバイクほどスピードが出ませんし、フレーム設計が上体を起こした姿勢で乗るような仕様になっていますので、アグレッシブな前傾姿勢には無理があります。

かと言って完全な後ろ体重では、クロスバイクに乗っている意味が半減します。

そこで参考にしたいのが、先ほどのロードバイクのポジションです。

サドルに跨った際に、ペダルにかかとを付けて膝が伸びきるのがロードバイクのベストでしたが、クロスバイクは伸びきる手前、膝が少し曲がっているくらいでよいでしょう。

また、これも先ほど触れましたが、少し前に出して低めにポジションを取るのもおすすめです。

MTBは自転車の中でも特にサドルポジションが難しい

続いては、MTBのサドルポジションについて考えてみます。

クロスバイクはMTBから派生した自転車であるため、性格も似ていますから、基本は前項でお話ししたクロスバイクのポジションに近いと考えてよいです。

ただし、MTBはシーンや用途が様々にあり、路面状況が刻一刻と変化するような乗り方が基本です。

例えば、街中や平坦メインであれば、クロスバイクポジションで対応できますが、傾斜のきつい坂では腰を引いてお尻を落とし、重心を低くします。

こうなると、平坦用のサドルの高さでは、サドル自体が邪魔になってしまうので、下げなくてはいけません。

また、雪の上を通るようなシチュエーションでも、スリップしないためには重心を後ろ気味にして車体を安定させる必要がありますので、低めのポジショニングが適しています。

こういった、悪路をものともしないのがMTBであり、それにはシーンに合わせたサドルポジションがあるということになります。

そんな性格なので、今のMTBはワンタッチで簡単にサドルの高さを調整できる、「ドロッパーシートポスト」の採用が多くなっています。

オフィスの事務用いすのようなもので、レバーひとつでシートポストが伸縮しますから、簡単にサドルポジションを出すことができます。

無理のないサドルポジションを模索する

今回は、自転車のサドルポジションについて考えてみました。

自転車の種類や用途、乗り方や路面状況でも最適なポジションが変わってくるので、中々調整はシビアなものです。

大切なのは「無理をしない」ということで、自分の乗りこなせる範囲でベストポジションを模索して頂きたいと思います。