台湾の世界的自転車メーカー「メリダ」は、2013年の初参戦から近年UCIワールドツアーで目覚ましい活躍を見せる「バーレーン・マクラーレン(前バーレン・メリダ)」に機材を提供しています。
その主力バイクの1つである「REACTO(リアクト)」はエアロロードでありながら、山岳地帯を走るレースでも使用する選手がいるように、「登れるエアロ」と評されてもいます。
今回はそのリアクトシリーズの中ではカーボンフレームの最廉価モデルである、「リアクト4000」を中心にお話ししていきます。
リアクトはスクルトゥーラと並ぶメリダの主力ロードバイク
冒頭でも触れましたが、メリダはワールドツアーを戦うプロチームに機材を提供していますが、市場モデルの人気も非常に高く、自転車の生産台数は同じ台湾の「ジャイアント」に次ぐ世界第2位の実績があります。
ロードバイクは今回お伝えするリアクトの他に、バーレーン・マクラーレンの前身であるバーレーン・メリダの主力バイクであった、オールラウンダーモデルの「SCULTURA(スクルトゥーラ)」も非常に有名です。
オールラウンダーの名に恥じず、様々な地形や路面状況に対応し、レースでは平坦路はもちろんのこと、石畳が敷き詰められたような路面が凸凹としたコースでも投入されます。
一方リアクトは後ほど詳しく特徴をお話ししますが、空力性能を向上させ、極力空気抵抗を減らすように意識して製造されているエアロロードです。
以前のエアロロードは加速してスピードに乗るとその力を発揮しどこまでも高速巡行していける反面、重量があるだけに漕ぎ出しや坂の登りなど、低速での弱さが目立っていました。
しかし、リアクトは冒頭でも触れましたが、山岳地帯を走るレースやステージに投入されるほど坂道に強さを持っています。
そして重量だけの話ではありませんが、カーボンフレーム最廉価モデルのリアクト4000ですら完成車で8.4kgという、グレードを考えれば破格の軽量バイクになっています。
メリダ・リアクト4000のフレーム概要
それではここから、メリダのリアクト4000をご紹介していきます。
リアクトはヘッドチューブがごっついという表現をしたくなるような太さで、ダウンチューブやシートチューブ、シートステイが扁平している、オーソドックスなエアロ形状しています。
オールラウンダーのスクルトゥーラにも採用されるようになりすっかり定着してきた感のある「NACA FASTBACK形状」のチューブは、見るものが圧倒されるボリューム感で、一目でリアクトと分かるほどの存在感があります。
そして、リアクト4000はカーボン素材がミドルグレードのCF2カーボンを使用しており、プロチーム仕様のCF4カーボンに比べやや弾性率が低い素材のため、十分な剛性を持ちつつ硬さが抑えられています。
エアロロードはどうしてもチューブが太く幅広のため剛性が高過ぎて乗り心地が硬くなる傾向にあるのですが、4000はCF2カーボンによって硬さが抑えられているため、乗り心地の良さも高評価されています。
また、プロ仕様の上位グレードモデルよりもアップライドな姿勢で乗れるようになっていますので、扱いやすさも加味されています。
メリダ・リアクト4000の重量と空力性能
リアクト4000はリムブレーキモデルの完成車で8.4kg(Sサイズ)という重量であり、一方CF4カーボン素材を使用する上位モデル「REACTO 8000-E」が7.5kg(Sサイズ)になります。
CF2は弾性率が低い分だけ重量がかさみますし、コンポとホイールの重量だけでも上位モデルと大きな差があるにもかかわらず、リアクト4000が8kg台前半に収まっていることが強調されるべきです。
リアクト4000のグレードのエアロロードでは9kg台のものも珍しくありませんので、登れるエアロという評判があるのもうなづけるところです。
またシートステイの幅が狭くなっていることや、シートチューブがタイヤに沿って切り欠きがされているような空力性を向上させる方策をしている中で、リアクトは全てのモデルで一貫してリアブレーキがBB(ボトムブラケット)裏へのダイレクトマウントになっています。
ブレーキ性能ということでいきますとディスクブレーキに敵わない部分や、リアタイヤがロックする可能性もありBB裏への配置は賛否両論もありますが、空力性を考えた場合にはかなりの貢献度があります。
こういった空力向上の方策も上位モデルだけのものではなく、最廉価モデルの4000にまで余すところなく投入されているのがメリダの凄いところです。
メリダ・リアクト4000のスペック
ここではメリダ・リアクト4000のスペックを確認していきます。
メインコンポはシマノのリア11速のミドルグレード「105」の最新モデルR7000系になります。
クランクだけが別メーカー品になりますのでフルコンポというわけではありませんが、105はレースでも使えるレベルにある必要十分なコンポです。
その他のパーツについてはメリダのオリジナルもあって特筆するような部分は少ないですが、ホイールはカスタムの余地があります。
ホイールはコストに占める割合が大きく、最廉価モデルクラスですとリアクト4000に限らずホイールはどうしてもグレードを上げられないため、重量がかさみ悪く言うならば足かせになってしまいます。
そのためすぐにとは言えませんが、将来的には市販されている然るべきグレードのホイールに履き替えたいところです。
また、2020年モデルからの変更点ではシートポスト裏にリアライト(尾灯)が埋め込まれています。
リアクトのシートポストには取り付けられる尾灯が少なかったため、これは地味ですがあり難い変更ポイントです。
そして、スペックの最後に完成車の価格をご紹介しておきます。
【REACTO 4000(リアクト4000)】
・参考価格:¥273,900(税込)
【REACTO DISC 4000(リアクトディスク4000)】
・参考価格:¥317,900(税込)
メリダ・リアクト4000で筆者がディスクブレーキモデルを推奨する理由
これは筆者の個人的な意見ですが、メリダ・リアクト4000にはディスクブレーキが適していると考えています。
エアロロードのためバリバリのレースモデルでありながら、CF2カーボンやアップライドなジオメトリ、汎用性の高いシマノ・105がメインコンポであることを考えても、色々な場面で活躍できるモデルです。
また登りをこなせることから積極的に山にも行けることを考えると、悪天候でも路面状況がよくなくても安定した制動力のあるディスクブレーキが求められます。
そして、エアロロードの下りでの速度を考えると、レバーに指1本でも掛かれば十分な制動力が得られる油圧式ディスクは何とも強い味方になります。
前項でご紹介した通り、ディスクブレーキモデルはリムブレーキモデルより4万円ほど高額になるので一概におすすめとまでは言えませんが、一考の価値はあるでしょう。
その他のメリダ・リアクトシリーズのラインナップ
それでは最後に、メリダ・リアクトシリーズの中から4000以外の注目モデルをご紹介します。
【REACTO 8000-E】
・参考価格:¥825,000(税込)
リムブレーキモデルの最上位グレードで、フレームはプロ仕様のCF4カーボンになります。
ハンドルとステムが一体化されたコックピットや、リムハイト55mmのカーボンホイールを装備した、空力性能が最高レベルにまで高められているモデルです。
【REACTO DISC 6000】
・参考価格:¥416,900(税込)
4000と同じCF2カーボンで作られたフレームに、シマノの上位グレードコンポ「アルテグラ」と世界的ホイールメーカー「フルクラム」のエアロホイールが組み合わされた、4000よりも1グレード上の機種になります。
パーツの組み合わせとしては4000よりもレース向きになっているということであり、レース志向の強い方はこちらを視野に入れることになりそうです。
【REACTO 400】
・参考価格:¥186,890(税込)
リアクトシリーズ唯一のアルミフレームモデルです。
カーボンモデルに表現されているいかにもなエアロ形状をアルミで表現し、独自の溶接技術や表面加工によって見た目までカーボンとそん色ないほどの美しさがあります。
アルミのエアロロードは世界的に見てもかなり少なく、非常に貴重な存在として注目が集まっています。
カーボン最廉価モデルと侮ってはいけない!
メリダのリアクト4000はカーボンフレームでは最廉価モデルですが、それを感じさせない高性能と見るものを圧倒するデザインの素晴らしさが大きな売りです。
また4000はグレードを考えれば破格の軽量ぶりで、「坂を登れる」エアロロードとしての地位を築いてきたリアクトの名を決して落とすようなことはありません。
そして、本文でお伝えしたようにオールラウンドの性能がありますので、エアロロードに興味はあるが性能の偏りに不安が有って踏み切れなかったという方には、ぜひ1度試乗していただきたいと思います。