自転車に長く乗っているとさすがに様々な箇所が劣化してきますが、フレームの塗装が剥げてきたり、傷ついて削れてしまったりすることがあります。
そうなると見た目が悪くなるだけでなく、塗装によって守られていたフレームの地が表面化してしまうと、サビ付きや自然劣化が進行しフレームをダメにしてしまいかねません。
そのため放置しておくわけにはいかないため、何らかの方策を講じる必要があります。
そこで今回は自転車の塗装について、簡易的な方法やフレームを丸ごと再塗装する「リペイント」についても考えていきます。
自転車のフレーム塗装は部分的に行うか丸ごと行うかの選択
自転車には細かい傷や部分的な塗装の剥がれは避けられないものですし、そこから水が入ってフレームがサビてしまうこともあります。
小さい傷や発生初期のサビであれば、サビ落としや傷のリペア剤などを使って修復することができますし、後ほど詳しくお伝えしますが、車用の「タッチペン」などを使用して部分的に塗装を修復する方法もあります。
しかし多くの箇所で塗装が剥げてしまったり、長い期間経過していることでの色落ち、色あせは簡単に修復することができません。
そこで考えられるのが、いったん全てを剥離して塗装をやり直す「リペイント」です。
もし塗装の剥がれがひどくフレーム全体がサビ付いてしまっているような状態では、自転車本体の買い替えも考えなくてはなりませんが、まだフレームが使えるようであればリペイントは有効的な手段です。
ただし自転車のリペイントは相当なスキルが必要ですし、繊細で手間が掛かる作業の連続です。
しかもリペイントを行うには一度パーツを全て外しフレームだけの状態にして、塗装後にもう一度元通りに組み上げなくてはなりません。
そのため簡単に自力で行うことを選択すると後に大きな後悔をする羽目になるかもしれませんから、プロに頼むことも考えなくてはなりません。
自転車フレームの小さな傷や軽い塗装剥がれの修復方法
自転車には小さな傷や擦れてフレームの塗装が少し剥げてしまうことはよくあるので、いくつかの修復方法があります。
まず下地が見えていない細かい傷や塗装が削れて少し凹んだ程度なら、これはコンパウンド剤を使って表面をならしてあげることで修復が可能です。
表面の塗装を薄く剥いで傷やへこみを目立たなくする方法であり、軽度な症状であればこれだけでも何とかなります。
コンパウンド剤には粒子の大きさの違いで種類がありますが、あまり目の粗い物ですと削れ過ぎてしまいますので、「超微粒子」「超細目」のような種類を使用してください。
また、近年サイクリストの間でも定着してきた感じがある、「QUIXX(クイックス)」もおすすめです。
クイックスも傷の補修材ですが、コンパウンドとは違い表面を削るのではなく、塗装の表面をコートしているクリア層を薄く変形させて伸ばすことでならしていくというものです。
クリア層が完全に剥がれてしまっているような深い傷は修復できませんが、コンパウンド剤で消える程度の傷ならきれいに目立たなくなります。
また、その修復部分は移動させたクリア層が戻ってしまうようなことはないので、半永久的に効果が続きます。
自転車フレームの部分的な塗装方法
前項では比較的浅い傷や、軽く塗装が削られてフレームの表面が少し凹んでしまった場合の修復方法をお伝えしましたが、それ以上に傷が深くなり完全に塗装が剥げてしまっているいるようですと表面をならすだけでは修復できません。
しかも、金属フレームの場合は塗装が剥がれた部分がサビてしまっていることもありますので、サビ取りを最初に行う必要があります。
初期段階であれば真鍮性のブラシで軽くこする程度で落とせますが、ひどくなってくるとサビ取り剤を使わなければなりません。
ただし、サビ取り剤は塗装面を痛めてしまう可能性があるので、使用する場合は剥げている箇所にピンポイントで使うようにし、他の部分に付着させないようにしてください。
そしてサビ取りが終了したら、次は車用の「タッチペン」で部分的な表面塗装を行います。
カー用品店で購入することができる塗料ですが、自転車にも問題なく使えます。
ただし色の選定が難しく似たような色も数多く用意されていますので、自分の自転車にピタリと合うものが無く、補修後に周囲と若干の色味の違いが出てしまうことはあり得ます。
また、1度だけでは色ムラができてしまうので、2度、3度重ね塗りをおすすめします。
自転車フレームの再塗装はプロに任せるのが賢明な理由
さて、ここまでは自転車フレームの傷や塗装の剥がれについて、部分的な補修を考えてきましたが、それでは済まないレベルまで達しているようですと、いよいよ塗装のやり直し、リペイントを考えることになります。
冒頭でもお伝えしましたが、フレームの再塗装は非常に繊細で膨大な手間と時間が掛かる作業です。
そして剥離剤や塗料を使用しますので、溶剤の飛び散りや臭いを考えると作業する場所も選ばなくてはなりません。
こうしたことがあるため、リペイントはプロに依頼するのが一般的です。
特にカーボンフレームは元の塗装を剥すのに剥離剤が使用できず地道に削り取っていく作業になりますので、その途中で挫折してしまうことが多いとも聞きます。
そのため、余計にプロに頼むのが賢明でしょう。
気になる費用ですが、10万円~20万円が相場というところで、自転車関係のお店以外でもフレーム塗装を行っているところがあります。
ただし、そういった店舗に任せる場合はパーツの取り外しや再組立てが専門外であるために行えませんので、自分で行うか、分解、組み立てを別のお店に依頼する必要もあります。
自転車のフレーム再塗装のための準備
前項では自転車フレームのリペイントはプロに頼むのが賢明とお伝えしましたが、そこまで費用は掛けたくない、掛けられないとなれば自力で行うことも否定はしません。
そこでここからは、フレームの再塗装の手順をお伝えします。
なお、塗装経験のある方にレクチャーを受けたり、動画などを見ないと言葉だけでは伝わりにくいため、今回は詳細部分を省き流れをご紹介します。
まずはフレームだけにするために、付属パーツを全て取り外しますが、再組み立てのことを考えて、ワイヤー類のルーティングやハンドルの角度、サドルの高さなどは写真に収めておきましょう。
フレームだけになったら次は元の塗装の剥離を行いますが、ロゴマークなど再塗装後にペイントしたい模様や文字はトレーシングペーパーを使って写しておいてください。
また、前項でもお伝えしたように剥離剤が使えるのは金属フレームだけですので、カーボンの場合は電動ヤスリ(サンダー)やサンドペーパーを使用して地道に剥していきます。
完全に塗装が剥がれたら、全体にサンドペーパーを掛けて表面をならしていき、目立つへこみがある場合はパテで修復すると、リペイントした際にきれいに仕上がります。
次に塗装のノリをよくするために表面を脱脂効果のある洗剤で拭きあげ、「プラサフ」という塗装の下地剤を塗ります。
プラサフは数回に分けて重ね塗りしますので、スプレータイプのものがやりやすいです。
また、プラサフは乾燥に丸1日程度掛かりますので、初日の作業はここまでになります。
自転車フレームの再塗装手順
プラサフが完全に乾いたら、ここでもう一度全体にサンドペーパーを掛けます。
これは表面を少しざらつかせることで塗料が密着しやすくなる大事な作業ですので、必ず行ってください。
ここから再塗装に入りますが、ウレタンにしてもラッカーにしてもスプレータイプの物を用意して、フレームから15cm程度離れたところから薄めに吹き付けていきます。
数時間乾燥させてから2回目の塗装を行い乾燥させたら、ロゴや模様付けを行います。
トレースしておいたものをマスキングテープに写しフレームに貼り、その上から塗料を吹き付けます。
塗料が乾く前にマスキングテープを剥したら、今度はロゴや模様以外の場所をマスキングしてから塗装すると、ロゴや模様が付きます。
最後に表面加工をするためのクリアーコートを吹き付けますが、塗装が完全に乾いてからになりますので作業は翌日にしたほうが確実です。
クリアーコートが乾いたらあとは自転車を元通りに組み付けて完了です。
自転車の塗装は程度によって段階的に行う
自転車のフレームには小さな傷や軽い塗装の剥がれは避けられませんが、放置しておくと見た目はもちろんフレームを劣化させてしまうこともあるので対処が必要です。
軽微なものであれば傷のリペア剤や表面をならすコンパウンドで修復できますし、部分的な塗装であれば車用のタッチペンを使用します。
しかし、複数箇所の塗装が剥がれてしまっている場合や全体的に色あせてしまっている場合は、再塗装、リペイントも考えてください。