自転車は盗難品と知らずにオークションで落札、どうなるの?

欲しかった自転車、憧れのロードバイクがネットのオークションに格安で出品されていた。
ラッキー!と思わず落札。ところが後日、その自転車が盗難に遭ったものだと判った。
こんな時、いったいどうなるの?所有権は?買った人も罪になるの?警察に行っても大丈夫?
などなど…、いろいろ心配ですね。そこで今回は、こんな時はどうしたら良いのか調べてみました。

盗難の自転車、オークションで買った人も罪に?

自転車に限らず、ネットオークションではいろいろなものが格安で手に入ることから多くの人が利用し、非常に人気が高いですよね。読者の方々も利用したことのある人が結構いるんじゃないでしょうか。
でも時々、盗んだモノを出品していた、なんてニュースで報じられ、「オークションには興味があるけれど、どうしようかなぁ」、なんて考えている人も多いはず。
そこで、まず気になるのは、盗難による自転車をオークションで落札した場合、出品者だけでなく落札者も何か罰があるのかということ。何にも知らず、ただ安いから買っただけなのに処罰されるなんてイヤですよね。
でも、安心してください。ちゃんと法律が守ってくれます。“善意の第三者”って、TVのドラマなんかでも聞いたことがあるでしょ。善良な市民にお咎めがあることはありません。しかし、盗難品だと判ったらすぐに警察に相談しましょう。

オークションで正式に落札、所有権は誰に?

「なるほど、オークションで手に入れた自転車が盗難品だったとしても処罰されることはないのか。でも、警察に行ったら没収されたりしないのかなぁ?もしそうなったら支払ったお金、損しちゃうよ。自転車は誰のものになるの?」心配ですよね。
安心してください。正当な契約によって得た権利は有効です。ただし、盗品と判った時点で本来の所有権とはちょっと異なるので、その点はしっかりと理解しておきましょう。
ネットでこうした相談に対し、警察が調べて元の持ち主が判れば、必ず返還しなければいけないなどと回答している人がいますが、必ずしもそうではありません。たとえ自転車が盗難品だとしても、それを知らずに正式にオークションで落札した人には即時取得(そくじしゅとく)といって、お金を払った時点で所有権が得られます。そして、その後に盗品だと判っても、その自転車には占有権(せんゆうけん)があるのです。
所有権と占有権…?なんだか難しそうですが、使っている言葉が聞き慣れないというだけ。そんなに難しいことではないんです。説明しましょう。

盗難品でも、その自転車はあなたに権利が

「ちょっと待って!所有権と占有権なんて難しい言葉の説明はいいよ。それより大切な愛車を盗まれちゃった人はどうなるわけ?損するだけ?自分の自転車が盗難に遭ったらどうしよう…。そっちの方が気になっちゃうよ」そんな人もいるでしょう。慌てないでください。所有権と占有権の説明を聞けば、その疑問もスッキリ解消します。では、お聞きください。
自転車が盗難に遭った元の持ち主と、盗まれたものと知らずにオークションで落札した人、どちらに権利があるのでしょうか。答えは、どちらにもあります。
「えっ?!どういうこと」そんな声が聞こえてきそうですね。でも、それが所有権と占有権ということ。盗難によりオークションに出品されたものだから元の持ち主は当然「それは私のものだ!」と所有権を主張できるわけです。
しかし、落札した人も正当な手段で手に入れたものなので、善意の第三者(現在の持ち主)としてそれを使用する権利があります。これが占有権です。
でも、お互いに権利を主張したらどうなるのでしょう。この場合、基本的にはオークションで落札した人は現在の持ち主として自転車を使う権利があります。しかしながら元の持ち主が正当な手段によって自転車を返してほしいと言ってきたら、返さなければなりません。
「えぇ、じゃ結局、自転車は取り上げられて、オークションで払ったお金は損しちゃうの?」ということですが、それじゃ何の権利もないのと同じです。そんなことはないので安心してください。

盗難の自転車を取り戻すには?①

ということで、元の持ち主がオークションで落札した人から自転車を返してもらうためにはどうしたら良いのでしょう?「それは、盗難によるものなので返して欲しい」と言えば、良いだけです。
「えっ、それだけ!」と思うかもしれませんが、基本はこれだけ。「でもそれじゃ、やっぱり現在の持ち主はオークションで払ったお金を損しちゃうじゃん」と、いうことになりますよね。そこです。“基本はこれだけ”といった理由は、ここにあります。元の持ち主は、返して欲しいという時に、オークションで落札する際に払ったお金(諸費用なども含め)を現在の持ち主に渡さなければなりません。ただ、これは必ずしも全額ということにはなりません。お互いの話し合いで決めることになります。
「でも、それじゃ盗難にあった人が結局は損して、踏んだり蹴ったりじゃん」と思うでしょう。そうではありません。本当に悪い人が、もう一人いますよね。そうです。取り戻すために必要なお金は、ドロボーさんからしっかりと損害賠償としていただくことになります。
もし、元の持ち主が「新しい自転車をもう買ってしまったので、返してもらわなくてもいいよ」と言えば、その時は自転車の所有権は晴れて落札者のものということになります。

盗難の自転車を取り戻すには?②

ここでまた一つ、“ん、ん?…”と思った人がいるはず。こうした盗難品に関する返還相談のネットの回答では、元の持ち主から返して欲しいといわれたら速やかに返却すること。そして損害についてはオークションの落札者が、出品者であるドロボーさん(転売などで必ずしも出品者がそうは限りませんが)に請求すると書かれていることがよくあります。
でも、これは間違いです。法律では、“善意の第三者”は守られることが原則。ちょっと難しい法律の話になりますが民法192条、および194条で、ハッキリとそう書かれています。損害賠償は、実際に被害に遭った当事者(自転車が盗難にあった人)が、その加害者(ドロボーさん)に対して請求するというのが本来の形ということですね。
それと、もう一つ。自転車の盗難にあった人が、返して欲しいといえるのは2年間という決まりもあります(民法193条)。残念ですが、それ以上過ぎると刑事ドラマではないですが時効が成立してしまうということですね。

最後に、オークションの自転車が、もし…

さて、オークションで落札した自転車が盗品だったらどうなるのか。落札した人、盗難に遭って売られてしまった人、それぞれの人がどうしたら良いのか、いろいろお話してきました。ここで最後のまとめとして一つ、大切なことをお伝えしておきます。
それは“善意の第三者”ということ。自転車が盗難に遭ったものだとは知らずにネットのオークションで手に入れた時点で、その人は“善意の第三者”であることは間違いありません。
しかしその後、送られてきた自転車の防犯登録が不自然に剥がされていたり、車体番号が消されているなど、自転車が盗難品だと気づいた時、あなたはどうしますか。
「自分は“善意の第三者”だから大丈夫。もし警察や盗難に遭った前の持ち主が何か言ってきたら、その時に対応すればいいや」と軽く考えてそのまま自転車に乗り続けていたとします。すると、あなたは盗難品と知りつつその事実を隠して乗っていたということになり、“善意の第三者”と認められなくなる可能性があります。
なので、最初の部分でも書きましたが、自転車が盗難品だと判ったらすぐに警察に相談し、正しい対応をすることをおすすめします。警察も善良な市民には寛容ですが、悪意のある者には当然厳しく対応します。
それに、そのまま放置しておけば喜ぶのはドロボーさんだけ。そんなのゼッタイいけませんよね。