スポーツバイクビギナーのためのお役立ち情報を、あれこれサクッと調査隊。
さて、今回はちょっとジミなところで、自転車のボルトについての知識をいろいろと調べてみました。
メンテナンスの時はもちろんですが、ツーリングなどロングライドの途中でトラブルが起きた時など、
ボルトの種類やサイズ、測り方など、知っておくとお役に立つかも知れません。
スポーツバイクに使われているボルトの主流
まずは、ボルトのサイズや測り方の説明の前に、自転車に使われているボルトの種類のお話です。
ボルトというと6角形の頭をしたものをすぐに思い浮かべますが、現在のスポーツバイクではほとんど使われることはありません。ママチャリやシティサイクルの荷台やカゴの取り付けに一部使用されるくらいです。
現在の主流は六角穴ボルトと呼ばれるヘッド部分に6角形の穴の開いたボルトで、スパナではなく6角レンチ(アーレンキー)を使用して開け締めをします。
この形状だとヘッドの外側にレンチやスパナを掛けて作業する必要がないので、パーツを組み付ける際にボルトヘッドの出っ張りのないフラットな締結が可能です。デザイン的に美しい形状が実現できるだけでなく、余分な引っかかりや障害をなくすことで機能や性能の面でも優れたメリットがあります。
ちなみに、6角レンチをアーレンキーと呼ぶのは、日本ではほぼ自転車業界だけのようです。その名前の由来はアーレン マニュファクチュアリング社というアメリカの工具メーカーが普及させたことによると言われています。
星形穴のトルクスというボルトもあります
自転車のボルトには、ネジ部分のサイズや規格は同じですが、ボルトヘッドに空いた穴が星形をしたトルクスというボルトも一部のメーカーで使用されています。6角穴ボルトとはヘッド部分の穴の形状が違うため、このボルトを締結するには専用のトルクスレンチやドライバーが必要です。
レンチやドライバーを差し込む星形の穴のサイズは、規格が決められています。ボルトヘッドの穴のサイズに合ったレンチやドライバーを使用しないと穴の形状を崩してボルトヘッドをダメにしてしまうので気をつけましょう。
また、トルクスには星形の穴の真ん中にイタズラ防止の突起(いじり止め)が付いたものもあります。星形穴を確認し、突起があればレンチやドライバーも突起に対応したものを使用しなければなりません。
実は、トルクスというボルトの名称は、テキストロン・カムカー社の商標です。それ以外の同様のボルトは本来、一般名称であるヘックスローブもしくはヘクスローブというのが正しい呼び方です。ですが、ホチキスやウォークマンなどのように、一般化してしまっているのでここではトルクスという言い方をしました。
ヨーロッパでは、プラスのネジに代わり主流になりつつあります。
日本でも最近は様々な製品で使用しているのを見かける機会が増えています。それとともに、ホームセンターをはじめ100円ショップの工具でも一部扱われるようになっています。
ボルトのサイズと測り方①
さて本題です。ボルトのサイズについてお話ししましょう。
規格として、メートルサイズによるものとインチサイズによるものがありますが、ごく一部のものを除いてメートル規格を採用しています。
よく、M5のボルトとかM6のボルトとか言いますが、それはどこを指してそう呼んでいるのかというとシャフト(軸)の部分です。
レンチを差し込むヘッド(頭)の部分から下の螺旋状にネジが切られた部分で、5とか6とかいう数字はその外径のミリ表示です。なので、M5といえばネジの部分の直径が約5㎜のボルトを指します。
よく使われるサイズは、M5がもっとも多いようです。あとはM6、M4、細いものでM3までくらい。自転車の種類によってこれより太いボルトを使用することもたまにあるようです。
ボルトのサイズと測り方②
ボルトの規格にはもう一つ、ピッチというものがあります。
ピッチというのは、ネジの部分の山の頂から頂までの間隔をいいます。これは、特殊なものを除いてボルトの太さに合わせて決まっています。
一般的によく使用するものを挙げると、M3:0.5㎜、M4:0.7㎜、M5:0.8㎜、M6:1.0㎜、M8:1.25㎜、M10:1.5㎜というのが標準サイズです。
これに対して、細目と呼ばれるピッチの間隔の短いものがあり、M4やM5でピッチ0.5㎜、M6でピッチ0.75㎜など、パーツなどをより強固に留めたい時などに特別に使用します。
標準か細目かを判断する際、比べるものがない場合は10山の長さを図ると判りやすいです。
それから、ネジの部分は逆ネジといって螺旋の溝が逆回転で切られているものがあります。ペダルやBBといった回転部分のパーツの取り付けに使用されます。
ボルトのサイズと測り方③
最後は長さです。ボルトのサイズで長さを表示する時は、ヘッドから下のシャフトの部分の長さを表記します。
サイクルショップやホームセンターなどで、M5×20といったタグ表示あればネジの部分の直径が5㎜で長さが20㎜のボルトとなります。
ヘッドの部分に関しては、それぞれのサイズで汎用できるよう標準サイズが決まっているので、特殊なものを除いては特に気にする必要はありません。
長さは取り付けるパーツにより様々なので、短いものから長いものまでかなり多くのサイズのものがあります。メンテナンスなどで交換用のボルトを購入する際は、予めしっかりとサイズを測ってからショップにいてください。見た目でだいたい分かるので大丈夫とか思っていると人間の目は意外にあてになりません。周りにあるものが違ったりすると錯覚を起こしすぐに騙されます。
私は、自転車のボルトだけでなく、家具や雑貨、家電、家の補修などで何度となく引っかかっています。そのたびに、「あぁ、ちゃんと測っておけば…」と思うのですが、懲りずにやらかします。
メンテの時は、ボルトの規格で劣化をチェック
日頃のメンテナンスや状態のチェックの際に、パーツの取り外しや締め直しなどいろいろ行いますが、その際にボルトの状態のチェックもできれば行うようにしましょう。
例えば、抜き取ったボルトの一部がちょっとだけ細いような気がするとか、他の部分やパーツのものよりピッチが広いような気がする。
そんな気がしたら、サイズの測り方を目安に径の太さやピッチの幅を測ってみてください。できればデジタル表示ができるノギスなど、正確に測れるものがあれば言うことなし。
単に、何度も緩めたり締めたりししたせいでネジ山が多少磨り減っただけなのか、それとも締結の際のトルクのかけ過ぎや必要以上に応力がかかるなどして伸びたものか、判断の材料になります。
ピッチがしっかりしていて、ネジ山の頭がちょっと丸くなっているというだけなら心配ないと思いますが、径が細くなっているだけでなく、ピッチが間延びしていたらボルトが伸びてしまっていることになります。
そのまま使うと断裂を起こす可能性があり、走行中だと締結ヵ所やパーツにより大変危険な事故につながります。注意してください。
まとめ、ボルトのサイズと測り方は何の役に立つ?
ボルトのサイズの測り方や規格を知っていると、メンテナンス時に予め交換用のボルトを用意しておくことなどができます。
また、その数値を基にメンテナンス時には劣化のチェックをしたりするのにも役立つことを書きました。
その他にも、冒頭のイントロ部分でもちょっとお話ししたアクシデントが起こった時、例えばこんな時に役立つかもしれません。
例えば、その1
ペダルやステアリングコラムなどを外して掃除やメンテナンスをしていたとします。きれいに磨き上げ、さてパーツを組み上げようと思ったら、ボルトが足りない。サイズが判ればボルトだけショップに行って買ってくるんだけど、測り方がわからない。どうしよう…。
例えば、その2
久々のロングライドに挑戦。気持ちよく峠を攻めていると、突然バキッという音がして後輪のブレーキに異常が!原因はキャリパーを固定するボルトが長年の金属疲労で破損。スマホで調べても近くにスポーツバイクのショップがない。あるのはホームセンターか、ママチャリメインの田舎の自転車屋さんだけ。どの店にボルトがあるか確認しないと…。このままでは今日中に家まで帰れない。
まぁ、滅多に起こりませんが、こんなことが起きないとも限りません。
備えあれば憂いなし。知識があれば心配なしです。