そういえば自転車の通行は左側、って決まってました??

車は左側通行です。これは知っています。エスカレーターで立っているのは左側で急いでいる人のために開けておくのは右側(大阪では逆らしいです)...これは暗黙のルール?なのでしょうか。それじゃあ自転車の通行は左側、ってなんとなく理解してますがこれってちゃんとした決まり事、ルールなのでしょうか。今回はそんなお話を進めながら、自転車における道路交通法の理解を深めていきましょう。

自転車における道路交通法

自転車はどこを走って良いか、逆にどこを走ったらいけないのか、それを理解するには、道路交通法における自転車の取り扱いを知るのが効果的です。まずは、自転車そのものが道路交通法でどのように決められているのかを見てみましょう。道路交通法(の第二条十一の二によれば、
”自転車 ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車(レールにより運転する車を除く。)であつて、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のもの(人の力を補うため原動機を用いるものであつて、内閣府令で定める基準に該当するものを含む。)をいう。”
とあります。一般的によく使われている、俗称ではママチャリと呼ばれるシティバイクから、三輪自転車、四輪自転車、電動アシスト自転車まで、ペダルを漕いで進むものは概ね「自転車」に規定されることになります。
続いてこの「自転車」自体が道路交通法でどのような扱いになるのかを見てみましょう。道路交通法第二条十一によれば、
”軽車両 自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であつて、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいう。”
とあります。自転車以外にはリヤカー、手押し台車、牛や馬(人が引いている状態)、お神輿や山車なども軽車両として取り扱われているのですね。

自転車の通行は左側?~道路交通法~①

自転車は道路交通法上、軽車両として取り扱われています。ですから、自転車も道路交通法で軽車両に規定されたルールに則って行動する必要があります。道路交通法第十八条によれば、
”車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。”
とあります。軽車両であっても、自動車と同じように左側を通行しなければならない、と明確に決められているのですね。加えて、軽車両に限って言えば「左側端に寄って」通行しなければならないと決められています。つまり、自転車は車両通行帯の無い車道において「基本的に道路の左側端」を通行しなければならない決まりになっています。

自転車の通行は左側?~道路交通法~②

歩道に入ってしまえば右側も左側も関係無いように感じられますが、そこに決まりはあるのでしょうか。実はそこにも決まりがあります。しかし、歩道のどちら側を通行してよいかを見ていく前に、「自転車は原則的に歩道を通行してはならず、車道を通行しなければならないこと」を知っておいたほうが良いでしょう。道路交通法第十七条には、
”車両は、歩道又は路側帯(以下この条において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。”
とあります。軽車両はもちろん車両に含まれますから、歩道のある道路では車道を通行しなければなりません。実際問題としては、自転車に乗った警察官であっても車道ではなく歩道を通行している様子がよく見かけられているので、実態としてこの「原則」は殆ど考慮されていません。そうであっても、ルールがどうなっているかを知っておくことは重要です。自転車は原則的に車道左側を通行する必要がある、ということは頭に入れておきましょう。
自転車は、自転車歩行者道(よく自歩道と略されます)などの自転車の通行を許可している歩道や、車道を通行することが危険だと思われる状況においては、歩道を通行することが許されています(道路交通法六十三条の四)。もちろん、歩道を通行する際にも注意しなければならない決まりがあります。車道の通行とは違って左側端ではなく、歩道は「車道寄りの部分を徐行」しなければなりません。また、歩行者の妨げになりそうな場合、一時停止しなければならないともあります(道路交通法六十三条の四の2)。

自転車の通行は左側?~道路交通法~③

自転車は車両通行帯の無い車道の左側端を通行しなければならないという事以外にも、車道の左側を通行するのにあたって知っておくべきポイントが幾つかあります。大きな幹線道路ではバス専用レーンや左折専用レーンがありますが、自転車はどこを通行したら良いのでしょうか。左端に自転車専用通行帯が存在しない限り、バス専用レーンや左折専用レーンを通行して問題ありません。一番左側の車線を通行する、と覚えておけば良いでしょう。少し迷いがちなのは、左折専用レーンがある交差点を直進する場合です。原則としては、「左折専用レーンを通行しながら直進する」ことになります。ただし、どんな交差点でも実際にそのルールに従えば安全とも限りません。片道3車線以上もあるような大きな道路の交差点では、左折専用レーンが左側2車線に跨っているようなことも珍しくありません。そのような場合は、無理をしてルールに従うよりも、一旦自転車から降りて歩行者信号を渡ったり、歩道橋を渡るなどして安全を第一に心がけると良いでしょう。

自転車の通行は左側?~罰則~

自転車には運転免許が必要とされません。しかし罰則が無いわけではありません。道路交通法に違反すれば取締の対象となります。主に犯されがちな違反を中心に、罰則を見ていきましょう。
3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金:
信号無視・一時停止違反・踏切一時停止違反・遮断踏切立ち入りなど
5万円以下の罰金:
無灯火・傘差し運転・携帯電話を使用しながらの運転・ブレーキなしなど
2万円以下の罰金または科料:
通行帯違反・警音器使用制限違反・並進など
罰則なし:
酒気帯び・交差点進入禁止違反など
如何でしょうか。普段よく見かけるものがいくつも思い当たるかもしれません。これらの違反は、当然のことですが、取り締る警察官がいなければ罰則を受けることはありません。しかしいずれも危険である、あるいは迷惑行為になるからこそ禁止されていることは間違いありません。自身が知らずに違反を犯していないかどうか、この機会に振り返ってみるのも良いかもしれませんね。

道路交通法、気を付けなければいけないポイント

自転車の運転で道路交通法に違反した場合、今のところは自動車などの運転免許証の点数制度に影響しません。ただし、各都道府県によって例外的な措置がくだされることもあります。現在(2016年6月現在)のところ、愛知県では自転車の飲酒運転であっても運転免許証の停止措置を下すことがあるとされています。道路交通法上で明確に定められていない罰則であっても、お住まいの地域では別途罰則が設けられている可能性がありますので、調べておくと良いでしょう。
また、平成27年6月1日の改正道路交通法施行において、自転車による14の危険行為について安全運転講習の受講が義務付けられました。とくにこの14の危険行為については暗記しておくべきポイントです。この危険行為違反で2回以上の摘発を受けた運転者は、3ヶ月以内に5700円の安全運転講習を受講しなければならず、これに従わない場合5万円以下の罰金となります。

自転車14の危険行為
①信号無視
②通行禁止違反
③歩行者用道路における車両の義務違反(徐行違反)
④通行区分違反
⑤路側帯通行時の歩行者の通行妨害
⑥遮断踏切立入り
⑦交差点安全進行義務違反等
⑧交差点優先車妨害等
⑨環状交差点安全進行義務違反等
⑩指定場所一時不停止等
⑪歩道通行時の通行方法違反
⑫制動装置(ブレーキ)不良自転車運転
⑬酒酔い運転
⑭安全運転義務違反

最低限のルールをおさえて安全な自転車ライフを

今回ご紹介した自転車における道路交通法は基本的なものですが、理解して守ることによって、罰則を受けるリスクはもちろん事故に遭遇するリスクをかなり減らすことができます。左側通行や歩道の徐行などを徹底するだけでも、自身はもちろん歩行者の安全にもつながります。自身が徹底してルールを守っていれば、自然と周囲もそれにならうもの。ポイントをおさえて自身も周囲も安全な自転車ライフを送れるようにしたいものですね。