bb30対応クランクと言うと、「音がするやつだろ」とか、結構色々言われますよね。
ロードバイクのbb(ボトムブラケット)の規格は、乱立していて訳が分からない状態が続いています。
しかも、クランクというのは決して安い買いものではないので、買った後に対応してなかったじゃ困ります。
そこで今回は、自転車のbbについて、改めて考えてみたいと思います。
bb30対応クランクの話①~そもそもbbって何?
では、まず自転車のbb(ボトムブラケット)について説明します。
自転車はフレームという骨格部分に様々なパーツが付属して成り立っていますが、bbはフレームとクランクを繋ぐ部品のことです。
大きさとしては手のひらサイズで、価格も2,000円前後のパーツです。
bbの役割は、小さな力でペダルを漕いでも、クランクがスムーズに回るようにするためです。
また、クランクの根元に砂利や異物が混入しないようにブロックする役割があるとも言われています。
したがって、bbはペダルを回すのに重要な役割があり、走行性能に大きく関わってくるパーツということになります。
走行性能はホイールやタイヤなども大きな関係がありますが、高性能のものにすれば、当然それだけの対価は覚悟しなければなりません。
ところがbbは上記のように高性能にしても、それほど高価でもありませんし、工具1本あれば、すぐに交換できますから手頃なんですね。
ですから、各メーカーがそこに目を付け、色々とこねくり回した結果、bb30対応クランクなどが生み出された訳です。
bb30対応クランクの話②~bb30誕生の経緯
昔はフレームにネジ切りがあり、それにbbをはめてクランクを付けていました。
bbの中にクランクシャフトという軸があり、以前は軸の太さは24mmしかなく、またフレーム側の受けもネジきり方式だけでした。
それで、もうお分かりかもしれませんが、bb30対応クランクのbb30とは、クランクシャフトの太さが30mmのbbという意味です。
しかし、アメリカの自転車メーカーであるキャノンデールが、シャフトの軸を太くした方が剛性を高められるし、丸い物は太くすれば薄くなるという理屈から、軽くできると提唱して編み出したのがbb30でした。
さらには、従来のネジ切りにグルグルとはめていく方式ではなく、直接突っ込んで圧入する規格にしたため、コストの掛かるねじ切りを作らなくてよくなったフレームメーカーの賛同も受けて、一気に波及していきました。
ただ、クランクやチェーンホイール(前側のギア)の主力メーカーであるシマノには同意を得ることができなかったので、話はややこしくなっていきます。
bb30対応クランクの話③~bb30のデメリット
シマノと同様のロードバイクのコンポーネントを扱うライバル会社達は、シマノがbb30に賛同しなかったことに色めき立ちます。
カンパニョーロやFSA、SRAMなどが差別化の大きなチャンスと捉え、こぞってbb30対応クランクを発表し、世に送り出していきます。
対応のフレームが増えていることもあり、最初は順調な売れ行きを示していたそうですが、次第にユーザーから同じようなクレームを多数受けるようになっていきます。
クランクを回すと「カラカラ」「パキパキ」みたいな異音がするというのです。
これは、ネットでも[bb30]と検索すると、すぐに補助キーワードに異音と出てきてしまうほどでした。
しかし、ネジを切らずそのまま圧入するやり方は、考え方自体は間違っていないということで、各メーカーが圧入方式を継続したまま、bbの新しい規格を次々と送り込んでいきます。
ここからbbの混迷の歴史が始まったと言えるわけですが、ついにここまでこのbb論争に静観の姿勢を取っていた本丸シマノが動き出します。
bb30対応クランクの話④~ついにシマノが動き出す!
アメリカの自転車メーカー「トレック」が開発した「bb90」は、クランクシャフトはbb30対応クランクが出現する以前の規格24mmのまま、bb自体の幅を90mmに広げ剛性を高めたものです。
異音問題をどうやって解消したのかまでは不明ですが、実際に異音は少なくなったようですし、アダプターなどを使わなくても従来の24mmクランクが使用できるので、シマノはもちろん賛同し、積極的に導入していきます。
また、台湾の世界的自転車メーカー「ジャイアント」が開発した「PF86」も、シマノが推進した規格です。
従来のベアリングを直接圧入するタイプではなく、アルミや樹脂でベアリングを覆ったカートリッジをフレームに打ち込むタイプで、異音の発生は大分抑えられたようです。
ちなみに86は、こちらもトレック同様、bbの幅のことで86mmという意味です。
開発された当時、トレックとジャイアントは世界の自転車販売台数のトップを争うようなメーカーでしたから、シマノの推進もあり勢力を拡大していきます。
bb30のメリット・デメリット
そもそもbb30対応クランクは、小は大を兼ねられないので、従来の24mm用のフレームには当然入りません。
しかし逆の場合は、フレーム側の穴にアダプターを入れて穴を狭くすれば、フィットさせることが可能です。
したがって、bb30の規格で作成されたフレームでも、シマノを中心とした24mm軸のクランクが使用可能なので、結果的にはシマノの一人勝ちということになるのでしょう。
もちろん、24mm軸のクランクを使いたい人が多いからアダプターなるものが販売されているわけで、その時点で勝負は決まっていたとも言えるのですが。
bb30のようなベアリングを、直接フレームに圧入する方式(プレスフィット)は確かに軽量化が図れ、剛性を高められると言うメリットはあります。
しかし異音がする他に、ゴミや水が入りやすく、フレームにグイグイ圧入されていくので、フレームにダメージが蓄積されていくという欠点もあります。
現在はロードバイクのエントリーモデルは従来のねじ切りタイプ、それ以上のグレードはプレスフィット方式という棲み分けがされているようですが、メーカーによっては全車ねじ切り方式に戻したというところもあるようです。
bbの歴史をまとめてみましょう!
ここまでのお話しをまとめてみますと、最初にキャノンデールがクランクシャフトの太さを30mmにしたことからbb論争が始まりました。
しかし、もしキャノンデールがトレックやジャイアントが提唱した、クランクシャフトはそのままにbbの幅を広げることで剛性を高めるという方式を取っていたら、こんな混迷は起こらなかったはずです。
ですから、bb30対応クランクの30はクランクシャフトの太さを表した数字ですが、bb90、PF86の数字はbbの幅のことです。
もうこれだけで、統一感のかけらも感じられず「ユーザー置いてけぼりのメーカーの自己満足」と皮肉を言われても仕方無い状況になってしまっている訳です。
さらにその後FSAが開発した、クランクシャフト30mm、bb幅86mmの製品名は「BB386EVO」ですからね…もはや何でもアリ状態です。
私たちユーザー側からしてみれば、軽くなって剛性が高められるなら、細かい規格や名前は正直どうでもいいわけです。
各メーカーのこだわりは理解できるのですが、もう少し分かりやすく統一感を出してもらいたいものです。
bbの重要さを再認識
今回はbbの混迷の歴史を振り返ってみましたが、いかがだったでしょうか?
正直、手のひらサイズの小さな部品で、ここまでの論争が持ち上がること自体驚きで、bbが改めて重要なパーツであることを再認識させられました。
規格は今も乱立状態ですが、結局は個人の趣向に合ったものを選ぶのが一番ということになると思います。