近年ロードバイクの世界において、ホイールのワイドリム化という言葉を頻繁に目にするようになりました。
タイヤが太めにシフトしてきているので、それに対応してリムの内径を広げるという意味です。
しかし、実際のところ効果はどうなのか?
別の理由などもあり得ますので、検証してみましょう。
ロードバイクのホイールのワイドリム化はタイヤが要因
ロードバイクのタイヤがこのところ太めにシフトしてきているのは、完成車のスペックを見れば一目瞭然です。
以前であればほとんどが23c(23mm)でしたが、現在は23c装備の完成車を見つける方が大変なほどで、ほぼ25cになっています。
さらに、乗り心地重視のコンフォートモデルや、ロングライド向けのエンデュランスモデルでは28cも珍しくありません。
これに伴って、フレームもタイヤとのクリアランスを広げ、32cまで対応しているフレームもあります。
こうなれば、タイヤとは切っても切り離せない存在のホイールも、当然対応しなければいけません。
タイヤがはまる部分である「リム」の内径を広げて、太いタイヤが無理なくはめられるようにしたのが今話題の「ワイドリム化」です。
有名ホイールメーカーが次々とワイドリムを出してきているので、この流れは決定的なものと言われています。
ワイドリム化によって内径が従来の15mmから17mmに広がったわけですが、この僅か2mmが何を変えるのか検証してみましょう。
ロードバイクのタイヤはなぜ太くなったのか?
ロードバイクのタイヤが太くなってきているのは、レースの世界で25cを使う選手が増えてきたからです。
ロードバイクは、ロードレースの機材なのでレースで使われたものがトレンドになり、市場に回ってくるという図式です。
では、なぜ25cのタイヤを使用する選手が多くなったのかと考えるわけですが、これには諸説あります。
最も有力なのは、25cの方が23cよりも同じ空気圧であれば変形率が少ないという説です。
タイヤは唯一地面と接触している部分なので、様々な抵抗があります。
その中で最も影響が大きいのが、変形によるパワーロスと言われています。
横方向に変形することによって、地面との接地面積が広がってしまうと、摩擦が大きくなり抵抗が増えるということです。
この変形の度合いが、25cの方が少ないという実験結果に基づき、各チームが25cを採用するに至ったということです。
しかしながら、25cのタイヤを従来の内径15mm(以下15c)のリムにはめると、メリットが消えてしまうということで、ホイール側もワイドリム化になったのです。
25cタイヤを15cリムのホイールで使うデメリット
ここでは、ロードバイクにおいて25cのタイヤを従来の15cリムのホイールにはめると、どういった問題があるのかを説明します。
15cのリムに25c以上のタイヤをはめると、タイヤがリムの外にはみ出てしまいます。
そうなると、前方から風を受ける面積が広がってしまうので、空気抵抗が大きくなります。
また、タイヤ幅の方がリムの内径より広いということは、タイヤのビードを強めにすぼめながらはめることになります。
そうなると、本来は真円に近いタイヤが楕円形に変形してしまうのです。
先述しましたが、タイヤは変形することが一番のパワーロスになりますので、この状態で走るとさらに潰れたようになってしまいます。
特にコーナーリングなどでは大きく変形するので、本来のグリップ力が全く発揮されないことになります。
当たり前ですが、これはタイヤが太くなればなるほどデメリットが拡大していくので、ワイドリム化に踏み切らざる得ないことになったわけです。
ロードバイクのホイールをワイドリム化する理由
ホイールのワイドリム化は、どうやらタイヤの事情に合わせたことのようですが、どんな効果があるのか確かめてみましょう。
上記でお話したことの解消のためにワイドリムにしているので、空気抵抗の軽減や変形を少なくする点がメリットになります。
ホイールは大きい上に乱気流を起こすスポークがあるので、ロードバイクの中で最も空気抵抗の影響を受けるパーツです。
そこに持ってきてタイヤが外にはみ出してしまうと、さすがに無視できない厳しさになりますので、ワイドリムにするメリットはあります。
また、リムの幅が広がったということで、リム自体の剛性も高くなっています。
タイヤ同様に横方向によじれなくなりますから、力の伝達力が向上します。
リムもタイヤも変形が少なくなることで、大幅にパワーロスがなくなるので転がる車輪になるということです。
あとは、ワイドリムには直接関係ありませんが、25cのタイヤを使うことでクッション性が増すので乗り心地が良くなります。
ホイールのワイドリム化のデメリット
さて、日向があれば日陰もあるということで、ワイドリム化したことにはデメリットもあります。
リムが広がったということは、それだけ多くの素材が使われているので重量がかさみます。
「軽さは正義」と言う言葉もあるくらい、ロードバイクにとって軽さが大きな武器になるシーンが多いのは事実です。
15cから17cになったことで数十グラムの増量になりますし、さらにはタイヤも太くなったことでゴムの量などが増えるので重くなります。
15cリムのホイールに23cのタイヤを装備した状態と比較すると、17cリムと25cタイヤの組み合わせでは100g前後重くなります。
リムの重量は走りに直接影響してきますので、額面上は数十グラムとはいえそれ以上の走りの重さは感じます。
特に空気抵抗があまり関係ない坂の上りや漕ぎ出しなどの低速時では、ワイドリムはデメリットの方が大きくなります。
そのため、ヒルクライムやロードレースでも山岳ステージでは、15cリム+23cタイヤの組みわせを使う選手も多数いると聞いています。
ワイドリムは万人に必要なものか?
ここまでロードバイクではスタンダードになりつつある25cのタイヤと、ワイドリム化されてきたホイールについて考えてきました。
先ほど少しだけ触れた部分ですが、低速時にワイドリム化の恩恵がないという話が重要になってきます。
ワイドリム化の流れを説明しましたが、これはそもそもがプロレベルの話から始まっています。
プロのロードレーサーが、より速く走るために考えられていることです。
重量が多少重くなっても、プロの脚力ではパワーロスを削減した方が良いという考えに基づいているのです。
これを一般のホビーライダーに当てはめてみると、リムやタイヤがよじれてしまうほどの脚力がある人がどれくらいいるでしょう?
また、レースは別ですが、趣味でロードバイクに乗る際にはパワーロスよりも、登り坂を楽に上がれたり、漕ぎ出しの軽さの方が優先されるべきことでしょう。
そうなると、ワイドリム化は細いタイヤを好むホビーライダーにとっては、もろ手を挙げて歓迎とも言えない状況かもしれません。
1つのホイールで15cと17cのリムを生産することは考えづらいので、この流れが続くようだと、23cファンには受難の時代になってしまうかもしれません。
ワイドリム化を冷静に受け止めましょう
今回はホイールのトレンドである、ワイドリム化について考えてみました。
25c以上のタイヤを履く場合には必要かと思いますが、用途や走り方によってはデメリットに成り得ることもあります。
15cリムが消滅しているわけではないので、トレンドに流されずに自分に合ったものを選びましょう。