今回はピナレロの自転車をご紹介しますが、どんな人、シチュエーション、用途など、何に最適なのかという観点で考えていきます。
ピナレロは圧倒的にレースモデルが多く、実際にプロレースでの実績も、近年ピナレロの右に出るものはいません。
では、レース志向の薄い方がピナレロのバイクに乗ってはいけないんでしょうか?
そんな視点も持ちながら、お話を進めていきます。
ピナレロの自転車のラインナップ
ピナレロの自転車の2019年モデルでは、ロードバイクと室内競技用のトラックレーサー、トライアスロンやタイムトライアルステージに使用されるTTバイクがラインナップされています。
かつては、MTBやクロスバイクも扱っていましたが、近年はロードバイクに絞っているようです。
冒頭でもお伝えしましたが、ピナレロはプロロードレースの世界を常にリードしている「レース屋」であり、そこで使用する自転車に特化させていると考えられます。
ロードバイクにしても、カテゴリーを「RACING(レーシング)」と「GRANFONDO(グランフォンド)」に分けていますが、8割がレーシングモデルです。
ちなみに、レーシングカテゴリーのハイエンドモデル「DOGMA(ドグマ)」シリーズは、2015年~2018年に掛けてツール・ド・フランスの個人総合を4連覇している、「チーム・スカイ」のメインバイクです。
また、グランフォンドとは自転車を使ったマラソンのようなもので、一般的なロードレースに比べスピードの要素は薄いです。
タイムを競うことをしないイベントもありますが、多くは競技であり、レースであることに変わりありません。
したがって、ピナレロのロードバイクは全てレースを前提に作られていると言っても過言ではなく、やはり生粋の「レース屋」なのです。
ピナレロの自転車はレースだけのものなのか?
ピナレロの自転車がレースモデルに特化していることがお分かりいただけたかと思いますが、冒頭でもお話ししたように、ここでは「レース志向の薄い方にピナレロの自転車はどうか?」について考えていきます。
最初に結論から入りますが、ピナレロはレース志向の薄い方でも乗ってもらいたいブランドです。
その理由についてお話しします。
ピナレロは昔から地面からの突き上げをいなし、衝撃を吸収することを意識しているはずです。
まだロードバイクでアルミフレームが全盛だった1990年代後半に、シートステイのみにカーボンを使用した「カーボンバック」というフレームを開発しました。
カーボンはアルミとは比べものにならない衝撃吸収性を持つ素材で、それを自転車の後ろ側の衝撃吸収性を大きく左右するシートステイに使用したわけです。
衝撃吸収性が高まれば乗り心地が良くなりますし、疲労がたまりにくくなりますので、長距離、長時間を走れるようになります。
いわゆる、特にレースとは関係の無い、ツーリングや通勤などにも向くバイクであるということです。
フルカーボン全盛の現在はカーボンバックこそなくなりましたが、ピナレロが乗り心地や疲労軽減に尽力していたことは確かです。
ピナレロの自転車が強く意識しているものとは?
ピナレロが自転車の開発において、衝撃吸収性を意識しているとお話ししました。
それはカーボンバックだけでなく、ピナレロの象徴とも言える「ONDA(オンダ)」という技術も衝撃吸収性に大きく関わっています。
オンダは、クネクネと所どころが波打ったような形状のフロントフォークやシートステイの総称です。
今は多くのメーカーがチューブに曲線を付ける「曲げ加工」を行いますが、これを大胆に波のような形状にしたのがオンダです。
曲げ加工は力の掛かり方が分散されるのでしなりが生まれ、衝撃を上手くいなしてくれます。
また、ピナレロのグランドフォンドのカテゴリーのバイクは、シートステイがオンダよりも弓なりに大きくしなっている、「センチュリーライド」を採用しています。
このように、ピナレロは地面からの突き上げをいなし、吸収することに注力していますので、レースモデルでは犠牲になりがちな快適性も持ち合わせているのです。
ピナレロの自転車でも「ドグマ」は別格!
ここまで、ピナレロの自転車は、レース志向の薄い方でも乗っていただきたいという視点でお話ししてきました。
ただし、ロードバイクのフラッグシップモデル「DOGMA(ドグマ)F10」だけは別格で、レースで勝つことが最優先です。
筆者は何度か試乗イベントで乗せてもらったことがありますが、硬く、ハンドリングがピーキーで、ひと漕ぎでかっ飛んで行ってしまうような感覚がありました。
トッププロが使用する機体ですから当然なのですが、衝撃吸収性に優れているという感覚を得られない内に、モンスター性とでも表現したいような、凄みが感じられました。
価格もフレームセットのみで約70万~100万円とモンスター級なので、プロ仕様のレースモデルであると割り切るしかありません。
しかし、ドグマを除けば、レース目的でなくても満足できるはずの機種が揃っていますので、次項からご紹介していきます。
ドグマのモンスター性を抑えた自転車にはレース以外の用途が見えてくる
前項ではドグマは生粋のレースモデルとお伝えしましたが、他の自転車もドグマの技術を受け継いでいるレースモデルではあります。
しかし、セカンドグレード以下の機種は、素材の特性の違いや、投入する技術によってドグマの持つモンスター性を抑え、ホビーユーザーに寄り沿った優しい部分が加味されます。
そのことにより、オンダに代表されるピナレロの快適性や衝撃吸収性を意識した部分が際立つので、ツーリングや通勤など別の用途向きの要素も出てきます。
2019モデルで新形状に生まれ変わった「PRINCE(プリンス)」は、多くの面でドグマF10の技術を受け継いでいる、紛れもないレーシングバイクです。
しかし、ピナレロ自身が新プリンスのコンセプトの一つに、「乗り味の良さと、扱いやすいハンドリングを提供する」と公言しています。
具体的には、フロントフォークとヘッドパーツの一体感を高め、ハンドルが小石や小さな段差にまで反応する神経質さを低めています。
また、少し剛性の低いカーボン素材にすることにより、適度なしなりと重量感が出ますので、軽すぎて吹っ飛んでいくような感覚がなくなり、安定感が出ています。
プリンスも決して手の出しやすい価格帯の機種ではないですが、用途の幅広さがありますから、レース志向が薄い方にもおすすめしたいですね。
ピナレロの自転車には手ごろな価格の機種もある
ピナレロの自転車はここまでお話ししてきたように、プロが使用してきた機体のコンセプトを受け継いでいるものが多いので、高額というイメージが定着しています。
ドグマは別格として、前項でご紹介したプリンスもフレームセットのみで、30~50万円になりますし、100万円前後の完成車もあります。
しかし、手の出しやすい価格帯のものもあります。
レースモデルの「RAZHA(ラザ)」や、グランフォンドの「ANGLIRU(アングリル)」は、フルカーボンフレームで、シマノ・105をメインコンポとした完成車が約26万円です。
しかも、エアロ形状の多いピナレロの自転車の中では、従来型のスリムなロードバイクですから、扱いやすさに秀でており、さらに多様な用途に対応できます。
また、ピナレロ唯一のアルミフレーム車「PRIMA(プリマ)」も約14万円ですから、初めてのロードバイクにも視野に入る価格帯でしょう。
オンダや、所々の曲げ加工などの技術はこの価格でもしっかり投入されていますので、コスパも高いモデルです。
広い用途に対応している
今回はピナレロの自転車について、レース以外の用途もあるという視点でご紹介してきました。
以前から衝撃吸収にこだわりを持つ自転車作りをしており、それが乗り心地や扱いやすさの評価に繋がっている機種もあります。
そのため、レースのイメージが強いのは確かですが、広い用途に対応できるものもありますので諦める必要はありません。