自転車の走行を止める唯一の手段はブレーキですから、我々が命を預けていると言っても過言ではありません。
ブレーキが効かない、また動きが悪くブレーキングが遅れてしまえば、自分はおろか人までトラブルに巻き込んでしまう可能性もあります。
そういったトラブルを未然に防ぐためにも日々の点検が必要であり、何かあった場合にはすぐに調整しなければなりませんので、今回は自転車ブレーキの調整方法についてお伝えします。
自転車ブレーキに使用されるパーツと制動の仕組み
自転車のブレーキは「効かなった」では済まないため、自転車を趣味とし工具が揃っていて、いじることに慣れている人以外は、必要最低限のメンテナンスや調整に留めていただきたいというのが筆者の持論です。
そのため今回は工具なしでもできる調整方法を中心にお伝えしますので、もしそれでも不具合が直らない場合はすぐに自転車屋に行ってください。
さてブレーキの調整ですが、制動の仕組みが分かっていないとどこに手を付けてよいのかも分かりませんから、まずはそこからご説明します。
自転車のブレーキは車輪そのものや車輪に取り付けられたドラムやディスクなどの回転体を、ブレーキシューやパッドと呼ばれるゴムや樹脂を押し当てることで起こる摩擦によって回転を止めるという仕組みです。
制動する場所や押し当てるパーツの名称に違いはありますが、ほとんどのブレーキは上記の仕組みによって制動します。
ブレーキを構成するパーツは「ブレーキレバー」、「ワイヤー」、「アーム」、「ブレーキシュー(パッド)」になります。
ブレーキの動きはブレーキレバーを引くことでワイヤーがアームを動かし、ブレーキシュー(パッド)が車輪や車輪に付属する回転体に押し付けられるという流れです。
そのためブレーキに何らかの不具合があった場合は、上記のパーツか車輪のどこかに問題があるということになります。
自転車のブレーキレバーとアームの調整
自転車のブレーキはレバーを握ることで制動動作が起こりますので、不具合を感じ取ることになるのはレバーの動きからということになります。
まずレバーの引きが重い、戻りが悪いということならば、可動部がスムーズさを欠いている可能性があるため潤滑目的で注油をします。
またブレーキのアーム部分も潤滑が切れているとスムーズに動かなくなるため、併せてオイルを注油します。
オイルは家庭用の潤滑剤でもよいですし、チェーンオイルなどの自転車用でも構いません。
そして調整のための注油はオイルを可動部分に1滴注し、ブレキレバーを数回握ってなじませればOKなので、くれぐれも余分に使用して他の部分に飛び散らないようにしてください。
特にブレーキシューやタイヤなどのゴムに油が付いてしまうのはご法度ですから、必ずマスキングをして油が付かないようにしてください。
また、ハンドルとフレームの付け根や車輪の中央には「グリス」という固形の潤滑油が塗られていますが、液体の潤滑剤はこれを溶かし流してしまう可能性があるため十分に注意してください。
自転車のブレーキワイヤーの調整
自転車のブレーキの調整で、レバーの続いて確認したいのはワイヤーです。
ワイヤーはブレーキを掛ける際に常に引っ張られますので、長い期間使用していると伸びてしまいます。
ワイヤーが伸びてくるとアームを引っ張る力が低下してきますので、レバーを強く握り込まないとブレーキが効かなくなってきます。
またワイヤーは金属製のインナーを樹脂製のアウターで覆っているのですが、アウターは雨風や紫外線によって劣化が進み切れてしまうことがあります。
そうするとそこから水が入り込んでインナーをサビ付かせ、結果的に動きが悪くなってしまうので放置してはいけません。
アウターワイヤーは修理、調整はできませんので、そのような状態になったら速やかに交換するしかありません。
また、インナーはむき出しの部分がありますのでそこをチェックして、サビたり金属線の束がほつれていたら寿命が尽きるサインなので、自転車屋で交換してもらってください。
自転車のブレーキシュー調整
自転車のブレーキレバー、ワイヤーと確認をしたら、次はブレーキシューの調整になります。
ブレーキシューは表面に小石や金属片が付着することが多く、それが車輪のシューと接触する部分である「リム」を傷付けてしまうことになりますし、異音が発生するなどの不具合もあります。
またブレーキシューはゴムのため、リムとの接触によって起こる摩擦熱で溶けてしまうのですが、溶けたものが再度固まって表面にこびりついてしまうとツルツルになってブレーキの効きが悪くなります。
そのためブレーキシューは定期的に点検を行い、表面から異物を除去し、ヤスリなどで軽くこすって表面をならしてあげる必要があります。
今回の記事は工具を使わない調整が基本とお伝えしましたが、ブレーキシューはアームから外さないと異物の除去やならしが完全にはできないため、ここは六角レンチやスパナなどの工具が必要になることはご了承ください。
また、ブレーキシューは表面がすり減っていくのでいずれ交換しなければなりませんが、表面に刻まれている溝の深さが1mm程度になってきたら交換のサインです。
自転車ブレーキの効き具合の調整
自転車のブレーキには効き具合を調整するアジャスターが付いており、応急処置的ではありますが効き具合を改善することができます。
ブレーキレバーとワイヤーを繋いでいる部分か、ブレーキ本体とワイヤーを繋ぐ部分に手で回すことのできるねじやつまみが付いていれば、それがアジャスターです。
ワイヤーの伸びやブレーキシューのすり減りによって、レバーのアクションが大きくなってきた場合には効果的な調整になります。
アジャスターは調整用と固定用の二重構造になっているので、まずはレバーや本体に近いほうの固定用を反時計回り(左)に緩めます。
次に調整用を回しますが、反時計回りに回すとブレーキの効きは強くなり、時計回り(右)に回すと効きが弱くなります。
何かを固定する場合はねじやボルトを締めるので、ブレーキも時計回りに締めると効きが強くなると思いがちなのですが、ブレーキのアジャスターは逆で、緩めるとブレーキの効きが強くなります。
ただしワイヤーが伸び切っていたり、ブレーキシューが限界を超えている場合は調整をしても効果は少ないため、各々のパーツを交換してください。
自転車のブレーキレバーの位置調整
最後になりますが、これは不具合の調整というわけではないのですが、ブレーキレバーに握りにくさを感じたら試したい方法をご紹介します。
手の大きさは人それぞれですが、ブレーキレバーの位置は調整しない限りは同じ位置に付いているので、人によっては握りづらいこともあります。
その際ですが、自転車にはレバー付近に初期位置を調整できる小さなねじがありますので、これで調整をしていきます。
プラスドライバーを使い時計回りに締めるとレバーがハンドルに近づき、逆に反時計回りに緩めれば遠ざかりますので、ブレーキの効き具合を確認しながら自分が握りやすい位置まで動かします。
この調整を行い今までよりもレバーをハンドルに近づけた場合は、ワイヤーも引っ張られますので、ブレーキが効き過ぎてしまうことがあります。
そのため、もしガツンと直線的に効きすぎる場合は前項でお伝えした効き具合の調整で、アジャスターを時計回りに回して、ワイヤーの張りを緩めてあげてください。
自転車のブレーキ調整はできる範囲で
自転車のブレーキ調整は、工具を使わなくてもできることが多いです。
ただし、自分の命を預けているブレーキはいざというときに効かなければ、自分はもちろんのこと周囲の人まで巻き込み取り返しの付かないでことにもなりかねません。
そのため、今回お伝えしたような自分ができる範囲のこと以外は、プロに任せるようにしてください。