こんにちは、じてんしゃライターふくだです。
bb30だとか、シマノのホローテック2とか、クランクに関しては、ROTORやFSAやらあれやこれや。
あの辺の世界っていうのは、実に分かりにくいものです。
しかも、クランクと言うのは、買ってから違ったじゃ困る、結構お値段の高い部品です。
bb30用クランクは、ジャイアントのTCRには、当然取り付け不可能です。
ROTORの3D+30はアンカーのRNCには取り付けられません。
わけが分かりませんね。
今回は、ざっくりとbbとクランクのお話をしていきましょう。
そもそもは1種類だったフレームとbbの規格
bb30やシマノホローテック2の話題に入る前に、フレームとbbの規格についてご説明します。
この問題が分かりにくいのは、フレームーbb-クランクと3つのパーツの組み合わせに互換がないと上手く行かないからです。
昔は、この組み合わせは基本的に1種類しかありませんでした。
フレームにはネジが切ってあって、そこにbbをはめて、クランクを付けます。
これをスレッド式とか、ネジ切り式とか呼びます。
細かく言うと、クランクにはスクエアテーパーやホローテック2、オクタリンクなどいくつかあったんですが。
どれも軸の太さは24mmの1種類でした。
フレームも1種類だけ、ネジ切り式だけでした。
(本当はBSAとITAがありましたが、現在ITAは絶滅危惧種、ほとんどがBSAです。単にネジを切る向きの違いなのですが)
以下、分かりやすく会話調で説明していきましょう。
分かりやすくするため、少々の省略や時代順序の逆転はあるかもしれませんが、ご了承ください。
bb30と専用クランクのメリットとデメリット
ある日のことでした。
突然にキャノンデール君は思いつくのです。
キャノンデール(以下キャノ君)
「そうだ、新しいやり方作ろうぜ!フレームごと改造が必要な新しい独特なやつ!オレが自転車の世界を新しく切り開こうぜ!!bb30時代の幕開けだ!!」
というわけで、キャノンデールがbb30なんてものを作り出したわけです。
キャノ君
「オレたちのbb30はすごいんだ、なんとクランクの軸を24mmから30mmにしたんだ!」
シマノ(以下シマノちゃん)
「え?24mmのままで良くない?」
キャノ君
「何言ってるのさ?!太い方が固くて軽いんだぜ!ペダルの力がギシギシ伝わるぜ!!」
シマノちゃん
「わたしは、昔のままで良いわ。(作り変えると昔のが使えなくなっちゃうし、お金もかかるし、キャノ君以外のフレームメーカーさんに使ってもらえなくなっちゃうしね)」
キャノ君
「本当に?このbb30だったら、フレームにネジを切らなくて良いから、フレームを軽く作れるよ?bbもベアリングだけポコッとはめるだけだから軽量化できるしね!(シマノちゃん、オレについて来ておくれ)」
シマノちゃん
「いや、私は今のままで良いわ。さようなら、キャノ君」
音が鳴ってるよbb30!!
さて、シマノちゃんに振られたキャノンデール君。
しかし、イタリアのFSAさん、カンパニョーロさんたちは、これを機会にシマノちゃんに差を付けようとキャノ君の味方になりました。
FSA(以下Fさん)
「大変だ、キャノ君!パキパキ音がするって文句がきてるよ!!」
キャノ君
「そりゃ、フレームに直接シールドベアリングぶち込んでるからね!でも硬くて軽くて速いだろ?!」
カンパニョーロ(以下カンパちゃん)
「そんなのわたし、聞いてないわ!困るわ!音なんか鳴ったらみんなに嫌われちゃうわ!みんなに嫌われちゃったら専用工具も売れなくなっちゃうわ!」
Fさん
「仕方ない、新しく音が鳴りにくい方法を考えよう!」
キャノ君
「音かー。速ければ良い気もするけどなー。まあ、せっかくだからもっと速くなるようにしよう!!」
そんなわけで、音が鳴りにくいように、シールドベアリングにちょっとしたものをくっつけて、さらにフレーム側を軽量化できるPF bb30(略してPF30と呼ぶことが多いです)が生まれました。
厄介なことに、また新しくPF30用のベアリングとフレームができてしまったわけです。
bb30用のフレームにはシマノの24mmクランクは?
その頃、とあるアメリカの村にて。
ユーザーA君
「ワオ!新しく出たbb30ってサイコーだねー!音は鳴るけど軽いよ!」
ユーザーB君
「でも、お前、パーツはシマノちゃんだろ?」
A君
「そうだけど?クランクはFさんのところのやつにしたよ?」
B君
「シマノちゃんのフロント変速機は、シマノちゃんのクランクで使うのが、一番良いんだぜ?!」
A君
「え?ほんとに?」
B君
「シマノちゃんが、他社メーカーのためにパーツ作ったことあるかよ?全部、自分のところで揃えてくれって考えだろ?」
A君
「えー、でも、お前だってbb30のフレーム買ったって喜んでただろ?!」
B君
「オレ、カンパちゃんだもん。カンパちゃんは、bb30用のクランクも作ってるんだよ」
A君
「ヒューッ!いかすー!オレもカンパちゃんにしようかな」
B君
「でも、カンパちゃん高いし、シマノちゃんの方が変速はカチカチ決まるぜ?オレは昔から好きだから使ってるけどね」
A君
「どうしよー?!お金ないよー!シマノちゃんに戻りたいよー!!」
bb30用のフレームにはシマノの24mmクランクは?②
Fさん
「大丈夫ですよ、A君」
A君
「あなたはFさん!!」
Fさん
「これを使いなさい、これならbb30のフレームに、シマノちゃんのクランクを差すことができますよ」
bb30シマノクランクアダプタを渡す。
Fさん
「そう、絶対にbb30を使わないといけないということはないのですよ。でも、シマノちゃんに戻ると、結局24mmの細さだから重くて剛性も落ちてしまうことになるんですよ。それにアダプタを挟むぶん、重くなってしまいます」
A君
「それは困るなぁ。。。」
颯爽とPF30用クランクとフレームとbbを取り出すFさん。
Fさん
「そうでしょ?さあ、このPF30はさらに軽くなってますよ。PF30の専用フレームも買って取り付けましょう!!世界最速になれますよ!」
A君
「わーい!買う買うー!軽いの速いの大好きー!」
B君
「・・・・・・。」
シマノのプレスフィットの逆襲
シマノちゃん
「悔しいわ、カンパちゃんやFさんたち全員でわたしの敵になって」
ジャイアント(以下ジャイアン)
「大丈夫、シマノちゃん!オレはいつでもシマノちゃんの味方だぜ!(普通に考えてシマノちゃんが一番売れてるし間違いないでしょ。まあ、この前までSRAMちゃんと仲良くしてたけど)」
TREK(以下トレ君)
「シマノちゃん、僕も仲間だよ。僕もシマノちゃん一筋なんだ!(やっぱりSRAMちゃんはマウンテンバイクの方が得意だし、カンパちゃんはお金かかるからなあ)」
シマノちゃん
「(やった!販売台数の世界トップ2の2人じゃないの。この人たちと組めば行けるわ!)」
トレ君
「シマノちゃん!24mmクランクでも剛性とフレームを軽量化する方法を僕考えたんだ!bb90っていうんだ!」
ババーン!(bb90を高々と天にかざすトレ君)
トレ君
「このbbなら、クランクの軸はシマノちゃんの24mmのままで、フレームとbbだけを換えるだけで、アダプタなしで使えるんだ!クランクの軸の太さじゃなくて、フレームの幅の方を横に広げることで剛性を確保して、bb30みたいにベアリングを直接圧入で固定するからフレームも軽く作れるんだ!(まあ、カンパちゃんのクランクにも対応させるんだけどね)」
シマノちゃん
「素敵!さすがトレ君!!」
ジャイアン
「オレにも作らせろー!!」
そんなわけで、トレ君はbb90、ジャイアンはbb86という、どちらもシマノちゃんクランクをそのまま使える、プレスフィット式の似たようなフレーム規格とbbを作りました。
(実際にはどっちが先かは筆者も忘れたので、どっちが真似したかは不明です)
bb30などのプレスフィット規格の長所と短所
まあ、そんな流れでbb30を皮切りとしたプレスフィットのbbと、それに適応するクランクが、世界にいっぱい溢れかえる現在に至りました。
bb30陣営はその後、フレーム幅を86mmに広げて、bb386というのもできましたし、なぜかサーベロが突然bb right、ルックはbb65とかを作ったりもしました。
最近は、bb30aっていうのを、キャノ君はまた出してます。
なぜかスギノは、IDS24という名前のシマノと同じような規格のクランクも出しています。
本当にてんこ盛りです。
ネジ切りじゃなく、圧入でベアリングを固定するものをプレスフィット規格などと呼びます。
プレスフィット規格のメリットは、キャノ君やトレ君が言っていた通り
・フレーム、bbを軽量化できる
・フレーム幅を広げられるので剛性、ペダリングの力の伝達効率を高められる
という2点です。
つまり、速くなります。
それに対してデメリットは
・しばらくすると異音が鳴りやすい
・シールドベアリングがむき出しで入っているので、ゴミや水が入りやすいので交換頻度が高い
・フレームにグイグイ力で圧入するだけなので、フレームにダメージが積もっていく
という3点です。
つまり、いろいろな部品の交換周期が早くなりやすいです。
これはレース機材としての進化としても素晴らしかったですし、ビジネスとしてフレーム、パーツメーカー全てが嬉しいという結果につながっています。
なので、ハイグレードの速さを求めるフレームは、プレスフィットのものが大半です。
一方、低価格帯のロードバイクには、今もBSAネジ切りのものが多いです。
ピナレロ君
「オレはネジ切りに戻したよ!メンテナンス性は大事だよ!」
シマノちゃん「でも、BSAじゃなくて絶滅しかけたITAなのね」
ピナレロ君「だってイタリアメーカーだからね!!」
bb30系フレームはシマノも専用クランクもどちらも使える
bb30系のフレームは、アダプタをかませれば、シマノのクランクを使うことも可能です。
FSA、TNI、スギノ、ROTOR、セラミックスピードなどのサードパーティから各種出ています。
(どれが適合するかは自転車屋さんで相談してください。一応メーカーホームページに一覧表も出ています。お金がある人はセラミックスピードをばんばん使ってください)
しかし、フレームメーカー側は、bb30用フレームはbb30で使うことを前提に作っていますから、シマノを入れる予定なら、最初からシマノ24mmクランク用のフレームを購入する方が効率は良いです。
逆に、シマノ24mmクランク用のフレームには、bb30用などの大径アクスルクランクはハメれません。
細いものに太いものを刺すわけにはいきませんからね。
時々、「FSAのクランクは駄目だ」と言う人もいますが、別に駄目なことはないです。
シマノの変速機との相性は仕方ないにせよ、軽量で良いクランクも作っています。
ただ、同じ価格帯のものならば、シマノの方が有利という場合が多いです。
これは、FSAに限らず、ROTORやスギノなどのクランクのみを作っているメーカー全てに共通することです。
解決策としては、チェーンリングのみシマノにするという方法もありましたが、4アームになってから難しくなりました。
まとめ「基本的にはシマノのクランクはどれにも使える」
さて、会話形式にしたら、何となく分かりやすくなったんじゃないでしょうか?そうでもないですか?
難しそうな問題ですが、実はシマノのクランクはアダプタさえ噛ませれば、だいたいどこのフレームも使えるので、実はさほど深く悩む必要もない問題だったりします。
なんせシマノちゃんは、安くて精度も良いですからね。
シマノちゃんが自転車界で圧倒的にモテモテというのは、bbを見るだけでもよく分かりますね。