ロードレーサーと筋肉のおはなし

こんにちは、じてんしゃライターふくだです。
ロードレーサーに乗っていると筋肉って付くの?あるいはロードレーサーにとって必要な筋肉ってどこ?はたまた、ロードレーサーってダイエットに良いの?健康に良いの?
人によってレースのためだったり、健康管理のためだったりと、目的は違えど筋肉って誰しもいくらか興味のある話題じゃないでしょうか。
今回はそんな筋肉のお話です。

ロードレーサーとその他のスポーツの筋肉①

ロードレーサー、自転車にとっての筋肉を考えて行く上で、まずは他のスポーツの筋肉との違いというのを考えてみましょう。
筋肉と一口に申しましても、実に様々な筋肉があります。
例えば、私は子供の頃には野球をしていましたが、野球のバッティングではねじる動きというのが非常に大事です。
バットは上半身で持ちますが、大事なのは下半身の筋肉、そしてそれを伝達する胴体の筋肉です。
腕の筋肉というのは、さほど大きい力の出せる筋肉ではありません。ベンチプレスで60kgを持ち上げようと思うと結構大変ですが、足の筋肉で60kgを支えるというのは楽です。いえ、楽どころか我々は常日頃から自分の体重を足で支えています。
大きい力は必ず下半身から出ます。さらに足は地面を蹴ります。地面というのは非常に強いです。どんなに蹴飛ばしてもビクともしません。
ボクシングなどのスポーツも、地面を蹴って力を腕に乗せるというスポーツです。
そういうスポーツでは、地面から腕までの力の伝達が最も重要です。

ロードレーサーとその他のスポーツの筋肉②

はて、話を自転車に戻しましょう。
自転車というのは数少ない、地面から力を取らないスポーツです。
少し極端な言い方ですが、自転車というのは宙に浮いているスポーツなんですね。
宙に浮いているスポーツと言うとイメージが湧きにくいかもしれませんが、例えばスキーやスノーボードといった雪の上でのスポーツ、水泳やサーフィンなどの水の中でのスポーツも地面から浮いている、地面を蹴らないスポーツです。

地面を蹴らないスポーツの筋肉のトレーニングは少々難しいです。
基本的には、あるスポーツのトレーニングをする時には、出来るだけその運動に近い動きで大きい負荷をかけてやるというのが一番良い方法です。
ただ、一般的にイメージするダンベルなどを使ったウェイトトレーニングというのは、自転車にとって全く役に立たないとは申しませんが、あまり効率の良いトレーニングとは言えません。
ただし、ウェイトトレーニングの中でもハイクリーン(パワークリーン)のように全身の筋肉、足から腹筋、背筋、腕までをバランスよく鍛える方法もあります。

ウェイトトレーニングでは、負荷の大きさと回数、時間、セット数などで鍛えられるポイントが大きく変わるので、もしレースなどのために本格的にウェイトトレーニングを取り入れたいという場合はスポーツジムなどで専門のトレーナーにトレーニングメニューを組んでもらうようにした方が良いでしょう。

ロードレーサーとその他のスポーツの筋肉③

「ロードバイクに乗っていたら筋肉がついて、異性からモテますか?」
という質問も時々ありますが、ロードバイクで付く筋肉はそういうタイプ、ムキムキした筋肉とは少し違います。
「じゃあ、ロードバイクに乗っていても肉体改造にはならないんですか?」
と聞かれることもありますが、ロードバイクだけだと肉体改造にはなりませんが、別の筋トレと組み合わせると非常に効果的です。

というのも、ロードバイクは非常に長時間の有酸素運動が可能です。
長時間の有酸素運動は、身体の基礎代謝を高めてくれます。
身体の基礎代謝が高い状態とは、脂肪も燃えやすく筋肉も付けやすい良い状態です。
対するウェイトトレーニングは無酸素運動系です。
無酸素運動系では、脂肪燃焼は少ないです。

筋肉ムキムキを目指すにはいくつかの方法がありますが、順番や段階が変われど必ず脂肪を落とすという期間があります。脂肪が落ちないと、筋肉量があってもムキムキには見えません。ぷにゃぷにゃしているように見えます。
ですので、何かしらの段階で脂肪を落として絞り込む必要があります。
脂肪を落とす、体重を減らす時に食事制限をする場合、どうしても一緒にいくらか筋肉が落ちてしまいます。基本的に減量というのは、摂取カロリーを消費カロリーより少なくするということですので、ある程度仕方ありません。
食事制限で脂肪を落とすのは非常に効果が出やすいですが、リスクがあります。

一番良いのは常日頃から有酸素運動を継続し、どか食いなどをせず、ゆるやかに体重をコントロールしていくことです。
自転車は日々の運動の中に組み込みやすく継続しやすい有酸素運動ですので、他のトレーニングと組み合わせれば、肉体を作る上でも非常に有効な方法です。

3つの筋肉。遅筋、速筋、中間筋?

筋肉には大きく分けて遅筋と速筋があります。
出せる力は小さいけれど長時間使える遅筋。
逆にパワーは大きいけど、短時間しか使えない速筋。
遅筋のことをタイプⅠと呼びます。速筋をタイプⅡと呼びます。

遅筋と速筋の出力の大きさや継続時間の違いというのは、燃料に何を使っているかによって変わります。
どちらも共通なのはATP、アデノシン三リン酸という物質だそうです。
違うのは、このATPをどこから引っ張るかですね。
糖から引っ張る方が爆発力があります。ただ、糖というのは体内に貯蓄出来る量が限られています。筋肉と肝臓にいくらかずつしか保存できないんです。
これに対して脂肪から引っ張ると取り出せるエネルギー量はゆるやかですが、長時間使うことが出来ます。

速筋系では基本的に糖の分解によってパワーを出します。爆発力はありますが、乳酸というゴミが出てしまいます。乳酸が貯まると身体は酸性になってパワーが出なくなります。ピンチです。
遅筋系では糖からもパワーを出しますが、脂肪も使ってパワーを取り出します。遅筋の優秀なポイントは乳酸を出さないばかりか、速筋で出た乳酸を再び合成してエネルギーにします。ですから、長時間の運動が可能になるのです。

しかし、速筋の中には、更に中間筋というのがいます。
中間筋をタイプⅡa、普通の速筋をタイプⅡbなんて呼んだりします。
この中間筋というのが非常に優秀で、遅筋のように長時間動けて、なおかつ速筋らしく大きい力も出せるという夢の筋肉なんですね。

中間筋だけ狙って筋肉を鍛えられる?

夢のような中間筋。
出来ればこれだけを狙ってトレーニング出来たら夢のようですよね。
ただ、現実問題としては、今のスポーツ理論では中間筋のみを狙ってトレーニングするのは難しいとされています。それでも、いくつか有力と言われているトレーニングの方法もあります。

まず、中間筋Ⅱaというのは、速筋Ⅱbが変化して作られると言われています。
遅筋Ⅰから中間筋Ⅱaへの変化というのは起きないそうです。
ですので、ある程度、速筋を鍛えるというのは中間筋のために大事なことだそうです。

はて、どうやって速筋Ⅱbを中間筋Ⅱaに変えるか。
高強度の有酸素系の運動というのが効果的だと言われています。
しかし、普通に高強度のトレーニングをすると、高強度の運動=速筋の運動=無酸素系の運動になってしまいます。
そこで、現れるのがインターバルトレーニングです。

インターバルトレーニングとは、高強度と低強度のトレーニングを交互に行うトレーニング方法です。
例えば、10秒全力でダッシュして、30秒歩くか、ゆっくり流すジョギングをして、また10秒ダッシュして、30秒流すと言った具合です。

インターバルトレーニングの原理は複雑ですが、簡単に分かりやすく言えば体を騙すということです。
「有酸素系だなー」
と体に思わせておきながら、実際には速筋を動かしてやるということですね。

インターバルトレーニングは最大酸素摂取量を上昇させたり、筋肉の乳酸耐性を高めたりと持久系スポーツにとって非常に有効なトレーニングですが、怪我のリスクもありますので、トレーニング計画を立てられるだけの知識を持つか、そういうトレーナーについてもらう必要があります。

まとめ「筋肉にこだわると難しくなってしまう」

はて、簡単にですが、ロードレーサーと筋肉に関するお話をしてみました。
結構、難しいお話になってしまいました。
自転車競技の筋肉は非常に特殊です。今回話した、遅筋、速筋系の問題もそうですが、体幹の筋肉の話や、筋肉よりも毛細血管を増やす重要性など、非常に多岐に渡る知識が必要です。
安易にインターバルだけしとけば良いというわけでもありません。
インターバルのトレーニングの組み方も、単純にいきなりするというのはタブーです。アップとダウンをきちんとするのが自転車などの持久系スポーツでは非常に重要です。怪我の防止ということもありますが、トレーニング効率としても非常に重要です。
あまり細々と考えると難しい話になってしまいます。
「楽しく乗っていればそれなりに速くなる」趣味で自転車を楽しむホビーライダーの場合、そういう方向で良いんじゃないかなと個人的には思っています。
そこから先のレベルとなると、専門のトレーナーについてもらうのが良いでしょう。速くなるのを目指す人は、中間筋や毛細血管の話などは勉強しておいても損は無いと思います。