自転車競技と聞くと、ヒルクライムやロードレースなど、速さを競うものを想像しますよね。
しかし、実はそれだけではないんです。
タイム重視の競技とは違う、「トライアル」というものもあります。
今回はそんな自転車競技「トライアル」についてご紹介します。
興味が湧いたら、練習して大会に出場されてはいかがでしょうか。
自転車競技、トライアル
トライアルとはなるべく転んだり、足を付いたりしないように気を付けながら、決められたコースを走りきることを目的としている競技です。
転倒や停止の回数を測定しますが、スピードや順位を競い合うことを目的としているわけではありません。
この競技が生まれたきっかけは、1970年代のスペインにあります。
子供が自転車を使い、オートバイのトライアルの真似をしていたことが発端となっており、ヨーロッパを中心に広まることとなりました。
乗り手の身体能力だけではなく、ハンドル捌きやバランス感覚などの細かい動きも重要となります。
そのため、小柄な日本人でも技術次第では、ヨーロッパやアメリカの選手と互角か、それ以上に渡り合うことが出来るでしょう。
実際に世界規模のイベントや大会でも、上位に食い込んだ日本人は多数存在します。
コースを選べば、老若男女問わず楽しめるスポーツなので、やってみたくなったらいつでも挑戦することが出来ます。
選手の中には幼い頃からやっているという人もいれば、60歳くらいから始めたという人もいます。
アクロバティックな動きやトリッキーな技、狭い場所でバランスを取るといった様子は、見ているだけでも盛り上がるため、ショーとしても十分に成り立っています。
開催場所を市街地にして、自転車競技を大勢の人に知ってもらうという狙いもあるようです。
トライアルのルール
自転車を使ったトライアルの具体的なルールです。
基本的にコースを走っている最中は、コミッセールと呼ばれる審判員が付き添います。
そして、地面や障害物に片足をついた回数をそのままペナルティのポイントとして加算していきます。
タイヤ以外が障害物に触れると1点、転倒やコースから外れると5点といった具合です。
コミッセールはビブスを着けており、指を立てることで何点が加わったのかを示します。
なお、最大点数は1つのコースにつき5点までとなっています。
そのため、例えコースの途中だったとしても、5点に達した時点でそのコースは、もう走ってはいけない決まりになっています。
本番ではいくつかのコースを走り、ポイントの合計が最も低い人が優勝となります。
ポイントの加算を防ぐためには丁寧な運転も大事ですが、ジャンプした際に転びそうになったら、あえて足をついたり、わざと障害物に自転車を引っ掛けて体勢を立て直すなどすることがあります。
これは、低い点が加算されるアクションを取ることで、高い点のペナルティを避けるというテクニックを使っています。
ミスを減らしながら、合計点数を極力少なくするという、乗り手の戦略が問われる競技がトライアルです。
トライアルのセクションとカテゴリー
トライアルは障害物を各所に設置したコースを自転車で走る競技です。
コースは専用のビニールテープで仕切られており、全長は50~100m程度しかありません。
このようなコースを5~10個ほど使い、大体2~3周するルールとなっています。
スピードは競いませんが、1つのコースを走るのは2分間という時間制限が存在します。
もしも走りきれなかった場合、ゴールするまでの間、ペナルティとして10秒ごとに1点ずつポイントが加算されていきます。
本番では、乗り手の体格の違いによるハンディをなくすために、年齢別に分けられます。
参加出来るのは9歳からと比較的早く、子供も大人も楽しめる競技と言えるでしょう。
男子の場合は
・9~10歳「プッシン」
・11~12歳「ベンジャミン」
・13~14歳「ミニメ」
・15~16歳「カデット」
・17~18歳「ジュニア」
・19歳以上「エリート」
となっています。
大会によっては、16歳から「ジュニア」として見なされるところもあるようです。
女子の場合は、15歳以下が「ガール」で、それ以上が「ウィメン」となっています。
どちらの条件も満たしている満15歳の女子は、両方のカテゴリーに参加出来るので、好きな方を選べます。
なお「ジュニア」と「エリート」は、使う自転車のホイールの直径によって、さらに2つのクラスに分かれます。
トライアル用の自転車
トライアルに使われる自転車のホイールは20・24・26インチのどれかが一般的とされています。
通常の自転車と異なる点は、乗り手が動きにくくならないように、サドルが取り付けられていないというところでしょう。
限界まで軽くすることを目的としているので、変速機などの装置もありません。
そのため、見た目がとてもシンプルです。
スピードやタイムを競うものではないので、ギアも非常に小さく、比率も低くなっています。
これは速度を上げることがなく、どちらかというとゆっくり進むことが多いからです。
自転車にあまり詳しくない人が見ると、トライアル専用の自転車と普通の自転車の区別は付かないかもしれません。
特に20インチの自転車は、BMXとあまり変わりません。
ですがトライアルのものは、身体を動かすスペースを作る必要があるので、他のスポーツタイプの自転車と比較すると、ハンドルが前に突き出していることが分かるでしょう。
じっくり観察すれば、サドルの有無やギアのサイズなどにも気が付けるはずです。
トライアルの基本テクニック紹介
自転車を使ったトライアルの基礎とも言うべき技術が「スタンディング」と呼ばれるものです。
スタンディングは左右の足の位置と、ハンドルを曲げる方向が重要なポイントです。
これは人によってやりやすい方向や癖などがあるため、何度か試してみて、しっくり来る位置と方向を見つけて下さい。
今回は右足を前に出して、左に向かってハンドルを切った場合を例として説明していきます。
この場合はバランスを崩した際、左側に傾くようにしていれば、いざという時に立て直しやすくなります。
倒れそうになったら、ブレーキを掛けないで、そのまま少しだけペダルを漕ぎましょう。
慣れてくれば、10cmも進まないうちに元の位置に戻ることが出来ます。
スタンディングは同じ位置にいることが前提の動きなので、大幅に進んでしまったら、元の場所に戻る必要があります。
戻れなければ、実用性は薄くなります。
戻る時はブレーキを掛けて、腰を後ろへ引いたら、すぐにブレーキを解除します。
後は慣性に従って、バックしていきましょう。
なお、利き足には力を入れず、クランクの邪魔をしないようにして下さい。
静止している状態が最も良いのですが、無理ならブレーキを掛けながら前進と後退を繰り返せば、体力を無駄に消耗することもありません。
自転車で段差を上るテクニックも
トライアルは自転車をスタンディングさせるだけではなく、段差に上がるテクニックも身に付けなければなりません。
まずは、ギア比をトライアル専用のものに合わせて、立ったまま進んでいきます。
このとき、利き足とは反対の足を前に出して下さい。
前輪を持ち上げる直前には、タイヤからの反発力と腰を引く際の勢いを得るために、前側に重心をずらして、上半身をハンドルに覆い被せるような格好になります。
この一連の動きが終わったら、素早くクランクを漕いで下さい。
そして腰を後ろへ引けば、自然と前輪が浮き上がります。
タイミングは目標とした高さよりも、やや高めの位置に来た瞬間が良いでしょう。
乗せる位置は、段差の角の辺りを目指して下さい。
またこの時点で、利き足が前に出るようにしましょう。
腰の位置も元に戻します。
タイヤが乗ったら、後輪が壁にぶつかる前に、身体を伸ばして後輪を浮かせて下さい。
後ろ足の靴底でペダルを引っ掛ければ、引き上げやすくなります。
後はハンドルを握っている手を前方に投げ出せば、勢いが付いたまま、自転車を移動させることが出来ます。
距離も延びるので、すんなりと段差に上がれることでしょう。
トライアルの大会
タイムを競わないトライアルは、ロードレースやヒルクライムとはまた違った楽しみ方で新鮮ですね。
トライアルの大会は、広島や茨城など、東日本でも西日本でも毎年開催されています。
また、国際競技大会も世界各地で開催されています。
たくさん練習して参加するのも良いですし、出場せずとも見学するだけでも楽しそうですね。