イタリアのピナレロはロードバイク乗りには憧れと言いますか、高級なメーカーとして認知されています。
フレームセットのみで100万円(税込)を超えるような物もありますので、確かに価格的にはハードルが高いと言えます。
しかし、今回はあえてピナレロでも最も価格の安いモデルの「プリマ」をご紹介します。
なぜ安価なのか?
存在している意義は何なのか?
その理由などについて考えていきます。
ピナレロ・プリマが安価な理由
今回はピナレロの「プリマ」について特集しますが、なぜ最も価格が安いのかというと、プリマはピナレロの2019年モデルでは唯一のアルミフレームだからです。
ロードバイクのフレーム素材は時代の経過と共に移り変わってきましたが、今はカーボンが全盛となり、プロレースではほぼ独占状態です。
レースで使用される物がトレンドとなる市場でも、中級グレードまではほぼカーボンとなり、アルミは初心者の方向けのエントリーモデルが多くなります。
アルミは衝撃に強く、少し凹んだくらいなら板金で叩けば修復可能ですし、サビにさえ気を付ければ耐久性は抜群です。
そのため、キャリアが浅い方が仮に乱暴な乗り方をしても、甘めの管理だったとしても、重大なトラブルになりにくいので、初心者向けとされるところもあります。
ピナレロは近30年程の世界のレースシーンでは、圧倒的な強さで他の追随を許さないブランドです。
30年という年月の中でロードバイクの素材は、主流がスチール(クロモリなど)→アルミ→カーボンと移り変わっており、ピナレロはそのどの素材でも頂点を極めてきました。
ということは、アルミフレームの技術においても当然高いものがありますので、プリマも最廉価モデルとは言え、十分におすすめできるレベルにあります。
ピナレロのラインナップにアルミ車が少ないのは?
ピナレロは良くも悪くも「レース屋」なので、レースに対してどう取り組んできたかが一般市場のラインナップに如実に現われています。
ピナレロはカーボンへの取り組みが少し遅れたこともあり、カーボンをブランドの主役に据えたのは2000年代も終わりに差し掛かった頃です。
しかし、日本が世界に誇る繊維メーカー「東レ」から供給されたカーボンを基に、あっという間に世界一の座を取り返します。
そうなったら市場に並ぶ製品にも容赦はなく、2011年モデルには2019年モデルと同じくアルミフレームは1機種しか展開しなくなりました。
そんな切り替えの早さが、レース屋であるピナレロの真骨頂です。
そんな中プリマは2015年、昔かたぎでロードバイクのお手本のようなフォルムで登場します。
今もほとんど変わらないデザインがその人気の高さの証明であり、多くのフレームがエアロ形状化されたピナレロにおいては、逆に新鮮さを感じます。
一世を風靡したピナレロの「カーボンバック」
今のアルミフレーム車は10万円を切るような物は別として、プリマもそうですがカーボン製のフロントフォークを採用しています。
しかし、カーボンが全盛になる前はカーボンを金属フレームと組み合わせるという発想はなく、それこそフルアルミが当たり前でした。
その流れの中でピナレロは、1998年に世界で初めてアルミフレームの一部にカーボンチューブを合わせるという技術を発表します。
サドル下から後輪ハブに向かって伸びるシートステイは、フレームの後ろ半分の衝撃吸収性に関わる部分であり、乗り心地を大きく左右します。
ピナレロはそのシートステイにカーボンを使用した、「カーボンバック」というアルミフレーム車を世に送り出します。
フルカーボン車が高額過ぎてまだ現実味がなかった時代の話ですから、この異次元の感覚が瞬く間に話題となり、納期が最大1年待ちになったという記録が残っているほど、爆発的なヒットとなりました。
カーボン並みの自由な成形がアルミでも可能に
ピナレロのカーボンバックは多くのメーカーがコピーをしたと言われていますし、今日のアルミフレームのスタンダードである、カーボンフォークのヒントになったことは言うまでもありません。
フルカーボン全盛時代の現在は存在意義も薄れ、ピナレロでも2018年モデルまでは「ネオール」がシートステイもカーボン製で面影を残していましたが、2019年モデルには名前がありません。
プリマは登場当初からカーボンはフロントフォークのみですから、ついにカーボン「バック」がピナレロから消えてしまうことになりそうです。
これは、上記通りフルカーボンが当たり前になったということですが、アルミの成形技術が上がった点も見逃せません。
昔の金属チューブは丸形が基本でしたが、最近は金属をカーボン並みに自由に成形することが可能になってきました。
素材本来の性質上、衝撃吸収性ではカーボンにかないませんが、それを曲げ加工や、1本のチューブ内で厚みを変化させる「バテッド」など、造形でカバーしています。
プリマも後ろ三角のシートステイとチェーンステイは車輪に向かうに連れて細く薄くなり、極端ではないですが曲げ加工もされています。
ピナレロ・プリマのスペック
それではここから、ピナレロ・プリマのスペックをご紹介します。
お伝えしている通り、2019年モデルではピナレロ唯一のアルミフレームで、フロントフォークはピナレロの象徴である、ONDA(オンダ)のカーボン製になります。
また、これもピナレロの特徴ですが、トップチューブが地面と水平に付いている「ホリゾンタルスタイル」のフレーム形状です。
しかし、足付き性などを考慮して、小さい方のサイズ(42、44、46)はスローピングスタイルが採用されています。
レーシングモデルらしくトップチューブが長く、車高が低いので、乗車姿勢が深めの前傾になります。
また、チェーンステーもピナレロのハイエンドモデル「ドグマF10」並みに短いので、反応のよい形状になっています。
メインコンポはリア9速の「シマノ・ソラ」で、ホイールは「Alex rims」製になります。
共に特にレベルが高いとは言えませんが、エントリーモデルには過不足のないアイテムで、価格相応という表現も当てはまるかと思います。
2019年モデルのカラーはイタリアンブルーと艶消しブラックの2種類、価格は138,240円(税込)になります。
ピナレロ・プリマの試乗インプレ
最後になりますが、ピナレロ・プリマのインプレに関しての情報をまとめておきます。
多くの方に共通しているのが、アルミらしいシャキッとした乗り心地という印象ですね。
ホリゾンタルスタイルですし、使用されているアルミ素材「6061」は、耐久性に優れる反面、少し硬めなので、フレーム全体の剛性が高くなり、シャキッとした乗り心地になっています。
それでも、ONDAのフロントフォークや後ろ三角の曲げ加工によって上手く衝撃をいなしてくれている分、身体に不快なほどの地面からの突き上げは感じません。
また、剛性が高くなり硬くなると、少しの段差や小石にまでハンドルが持っていかれるような神経質さが出てしまうのですが、そこはONDAも含めたピナレロの専売特許であるヘッド周りの安定感で扱いにくさを感じることもありません。
カーボンのようなしなやかさはありませんが、踏み応えがあって、路面の状況も適度に伝わってくるので、ロードバイクに乗っているという感触は十分に味わえる一台です。
アルミのホリゾンタルスタイルは貴重な存在
今回は、ピナレロの「プリマ」についてお話ししました。
2019年モデルでは唯一のアルミフレーム車といことで、高額な機種が多いピナレロにとっては非常に貴重な存在になります。
また、エントリーモデルでホリゾンタルスタイルの機種はそう多くないので、きれいな形のダイヤモンドフレームを望む方はぜひ視野に入れたい一台です。