シマノのロードバイク用コンポ「105」は、上位グレードからの技術の踏襲が多い割には価格が抑えられている、コスパの高いコンポです。
ただし、ミドルグレードの位置づけのため、明らかに性能で上位グレードに及ばない部分もあり、カスタムの余地はあります。
フロントギアであるチェーンリングもその及ばない部分の一つであり、交換することで劇的な変化が現れる部分です。
そこで今回は、105のチェーリング交換について考えていきます。
シマノのリア11速コンポ
シマノのロードバイク用コンポにはグレードがあり、中でもリア11速の「デュラエース」、「アルテグラ」、「105」が、完成車に多く採用されている中心的な存在です。
シマノでは11速コンポをレーシングモデルと位置づけていますが、その中でもプロのロードレーサー向けに開発されているのがデュラエースです。
レーサーからのフィードバックを元に、常に革新的な技術を投入し、カーボンやチタンなど他のグレードでは使用しない素材を、金属のバリ一つ許さないような精巧な加工で最高レベルに仕上げています。
そのため、価格も別格で、セット一式ではセカンドグレードであるアルテグラの2倍以上、105の3倍以上になっています。
そのデュラエースの技術を広く一般ユーザーに広める役割が、セカンドグレードのアルテグラです。
デュラエースと同じパッケージで開発されており、素材や製造過程に工夫を凝らし、アマチュアユーザーも手が出しやすい価格にしています。
のちほど詳しくお話ししますが、電動式変速「Di2」やチェーンリングの「ホローグライド」などは、デュラエースとアルテグラにしか投入されておらず、アルテグラもまた特別な存在と言えるでしょう。
そして、それら上位グレードの技術を踏襲しつつ、扱いやすさも加味し、レース志向が薄いユーザーにも受け入れられるような優しい味付けも施されているのが105になります。
2018年のリニューアルではディスクブレーキモデルが加わり、セット一式交換を望むユーザーも増えてきていると聞いています。
105の最大のセールスポイントは、明らかにこの下のグレードとは性能の違いがありながら、そこまで高額ではないコスパの高さにあります。
クランクアーム+チェーンリング=クランクセット
シマノのコンポの中でも、クランクセットはグレードごとに特徴がはっきり出ており、性能の差も顕著なので今回はテーマとしました。
そこで、まずそのグレード間の差をお話しする前に、クランクセットについてご説明させていただきます。
ロードバイクなどのコンポでは、クランクのことをクランクセットという表現をします。
これは、フロントギアであるチェーンリングを単体のパーツとして捉えているからであり、クランクアームとセットになっているので、クランクセットとなります。
なお、ママチャリなどはクランクアームにチェーンリングが溶接されているので、仮にチェーンリングに破損や故障があったとしてもクランクごと交換になります。
ロードバイクに話を戻しますが、フロントギアであるチェーンリングはロードバイクでは一般的に2枚、いわゆる2速になります。
進行方向に向かって外側に配されるのが歯数が多い「アウター」で、ペダルを漕ぐのが重くなるギアです。
一方内側に配されるのが歯数の少ないインナーで、ペダルを漕ぐ感覚が軽くなります。
また、このチェーリングの剛性感によって、変速のスムーズさが変わってきますが、シマノではデュラエースとアルテグラが別格、そこに105が続きますが、少し快適性に差があります。
105のチェーリングを交換する意味
それではここから、105のチェーンリングを上位グレードに交換することを考えていきますが、まずはチェーンリングを交換することで得られる効果からお話しします。
105のフロントギアは2枚しか付属していませんので、アウターとインナーの歯数の差が大きくなります。
ギアチェンジはディレイラーがチェーンを保持して動き、チェーンリングにギアを押し付けるようにしてはめ合わせることで成立します。
この時、特にインナーからアウターにシフトアップする際には、チェーンを思い切り持ち上げることになりますので、それを受け止めるチェーンリングにも大きな負荷が掛かります。
そこで重要になってくるのがチェーンリングの剛性であり、剛性が低いと受け止める時にリングがたわんで変形しますので、チェーンを受け止めるまでにタイムラグが発生します。
タイムラグが発生しますと、「ガッチャン」という音がしますし、タイミングも遅れますので変速にスムーズさを欠きます。
そのため、チェーンリングの剛性が重要なのであり、そこに105と上位グレードでは差があるのです。
チェーンリングのホローグライドが決定的な差を生む!
シマノではデュラエースとアルテグラの上位2グレードに、チェーンリングの剛性を高める加工が施されています。
「ホローグライド」という技術ですが、アウターの中身を中空構造にして軽量化をしている上に、剛性を高める仕様になっています。
105はクランクアームは中空構造の「ホローテック」になっているのですが、チェーンリングは裏面の肉抜き加工で軽量化はしているものの、中空構造までには至らないので、剛性ではやや劣ります。
105は多くのサイクリストが使用、または使用した経験があるコンポかと思いますが、インプレ情報などからも決して変速性能が低いということはありません。
しかし、アルテグラやデュラエースのスムーズさを体感してしまうと、その差に愕然とする報告も多く、筆者もその一人でした。
そのため、フロントのギアチェンジ、特にシフトアップがスムーズに快適になるというのが、105のチェーンリングを交換する最大の理由になるでしょう。
105のチェーンリング交換時の注意点
コンポというのはリアの変速段数に合わせる必要がありますので、シマノでは11速同士のデュラエース、アルテグラ、105に高い互換性があります。
そのため、105のチェーンリングを上位グレードに変えることは、比較的試しやすいカスタムになります。
注意点としては、シマノではある時期を境にチェーンリングを固定する「スパイダーアーム」の本数を5本から4本に変更しています。
そのため、5本アームのクランクに4本用のチェーンリングは付きませんし、逆もしかりなので、スパイダーアームの本数を合わせるのが基本になります。
また、これは統一されて久しいので問題ないかと思いますが、「PCD(ギア取り付けピッチ径)」は一応確認が必要です。
チェーンリングは、スパイダーアームのギア取り付けボルト穴を結ぶ仮想円上に固定されますが、この円の直径がPCDであり、これが双方同じであれば取り付け可能ということです。
シマノの2速のPCDは110mmに統一されており、シマノ同士の交換であれば、世代が違ってもほぼ問題ありません。
しかし、これが他メーカーの製品が入ってきますと規格が違ったりしますので、少し面倒です。
しかも、シマノのライバルであるカンパニョーロなどは、同じPCD110mmでもボルト穴を1か所だけずらし、他メーカーとの互換性を持たせないようにしています。
こういったこともありますので、クランクアームとチェーンリングは基本的に同じメーカーでそろえるのが賢明です。
105のチェーンリング交換時に歯数構成も変える場合の注意点
チェーンリングはアウター、インナーがそれぞれ別売りになっていますので、交換する際は歯数の構成を変えることも可能です。
シマノ・105のチェーンリングの歯数構成は、(アウター×インナー)「50×34T」、「52×36T」、「53×39T」となっています。
今のギアが坂道の上り坂などで少し重さを感じるようであればアウターの歯数を小さくして軽くするのがよいですし、反対に平坦がメインで直線のスピードがもう少し欲しいと考えれば歯数を増やして重くするというイメージです。
ただし、フロントディレイラーにはチェーンを持ち上げる力を示す「キャパシティ」というものがあり、アウターからインナーの歯数を引いた数値が最大キャパシティになります。
シマノでは最大キャパシティを「16」としており、上記でご紹介した現状の105の歯数構成であれば許容範囲です。
例えばインナーを34Tのままでアウターを53Tにしてしまうと、最大キャパシティを超えますので、動作が保証されなくなってしまいます。
また、歯数を変えますと、チェーンの長さが変わりますので調整が必要になりますし、ディレイラーの位置も調整し直さなくてはなりません。
しかも、チェーンもディレイラーも歯数の構成によってどこまで調整するかを考える必要があるため、心配な場合は一度ショップに相談されることをおすすめします。
フロントのギアチェンジをスムーズにしたいのであればチェーンリングを交換する!
クランクセットを構成するフロントギアのチェーリングは、ギアチェンジに大きな負荷が掛かる分、剛性の高さが求められます。
その観点からするとシマノでは、上位グレードであるデュラエースとアルテグラが抜けた存在であり、交換できることならそれに越したことはありません。
幸い105は同じリア11速コンポのため互換性の心配が少なく、チェーリングのみの交換が可能です。
そのため、ギアチェンジに快適性を求めるのであれば、今回お伝えした注意事項も考えていただきながら、交換を行ってみてください。