こんにちは、じてんしゃライターふくだです。
世間にはびこる噂、本当のこともあれば、嘘のこともありますよね。
ロードバイクの世界ではびこる噂のひとつに、「ジャイアントのロードバイクは安い」というものがありますね。
はてさて、真偽のほどは?
いえ、真偽というより安いというのは価値観の問題です。
今回は、ジャイアントのロードバイクの値段と性能と、その他もろもろ含めて考えてみましょう。
ロードバイクが安いっていうのはどういうことか?
少々繊細な問題ですので、少々固く話していきます。
「親戚がジャイアントのロードバイクをくれました。せっかくもらえたので乗ろうと思いましたが、何年も放置していたのかサビだらけだったので、あれこれサビ落としなんかを買ってきて磨きました。しかし、空気が入っていないので、空気を入れようと思ったら家のポンプじゃ上手く入らなかったので、ポンプを買いました。しばらく走っているとパンクしました。タイヤを新しくしました。それからスポークが折れてホイールを……」
もらいもののロードバイクに、よくある話ですね。
状態の悪いロードバイクをもらって、あれこれ修理していると結局、最初からクロスバイクの新車を買えるくらいの金額になってしまって、極めつけはオーバーホールを頼んだら中が錆びて死んでいる、と。
仮にゼロ円でもらっても、ロードバイクとはメンテナンス・修理の必要なものです。
そして乗ってると、やっぱり自分の体のサイズに合った自転車が欲しくなってきて、逆にお金がかかってしまうことがあるんですね。
これは、ゼロ円でもらう自転車に限った話ではありませんね。
ケチって安い方を買っても、好きなものであれば結局良いのが欲しくなって買い替えになってしまう。
逆に、さほど好きになれなければ、使わなくなってゴミになる。
いずれも、もったいないです。
でも、自転車アルアルですよね。
安いかどうかの問題は満足度次第
そんなわけで、みなさん、最初の一台というのは愛着があるものの、ハマってくると近所のお散歩自転車になってしまったり、友人に譲ってあげたりするわけです。
もちろん、初めての一台、自分にロードバイクの喜びを教えてくれた大事な相棒であることは間違いありません。
安いかどうかっていうのは、自分の満足度に対しての値段じゃないでしょうか。
そういう価値観に立って、ジャイアントのロードバイクが安いかどうかというのを考えていきましょう。
先に言っておくと、ジャイアントは性能に対しての値段という意味では安いです。
ジャイアントとメリダの2大台湾メーカーは、コストパフォーマンスが良い、つまり性能の割に値段が他メーカーと比較すると、低い傾向にあります。
世界の自転車工場・台湾ですからね。
もちろん、全ての車種でそうと言えるかは微妙なところもありますが。
多くのモデルでリーズナブルというべき、プライス設定がされています。
同じ性能のロードバイクで安いか比較①
「え、噂じゃなくて本当に安いの?」
はい、性能だけの話をすれば、やはり安いと思います。
恐らく、自転車に詳しい大半の人が賛同してくれると思います。
性能と値段だけに限ればですが。
ただ、全く同じ性能のロードバイクを各メーカー作ってくれると比較がしやすいのですが、現実問題そういうことはないのです。
微妙に何かが違うものです。
それでも、2016年モデルでは超軽量アルミフレームが流行っていまして、比較できる車種があります。
超軽量アルミロードバイクと言われるモデルです。
従来のアルミロードバイクの常識を破る、軽さと値段設定で話題になっています。
現行の代表的な3台の超軽量ロードバイクを比較します。
まず、主要情報を書きます。
いずれもアルテグラモデルを前提とします。
【モデル名/定価(税抜き)/完成車参考重量/フレーム単体参考重量】
・Giant(ジャイアント) TCR SLR/230,000円/7.82kg/1,100g
・Cannondale(キャノンデール) CAAD12/268,000円/7.6kg/1,130g
・TREK(トレック) Emonda ALR/259,000円/7.82kg/960g
なお、参考重量はあくまで今、僕の手元にある資料にある参考重量です。
いくらかのズレがあっても、御了承ください。
同じ性能のロードバイクで安いか比較②
面白いことに、フレーム重量が一番軽いトレックが完成車重量としては重く、逆にフレーム重量が重いキャノンデールが完成車重量としては、一番軽くなっています。
これは、フレームにはそれに適合するBB・ヘッドパーツ・フォーク・クランクが入りますが、それぞれ重量が違うためでしょう。
キャノンデールの場合、クランクはBB30a対応のものを入れるか、アダプタをかませてシマノ・Ultegra(アルテグラ)を入れるかで重量が変わります。
同様に、ホイールなど全て重量が違うので、完成車重量も大してアテにはなりません。
ただ、いずれのモデルも、アルミロードバイクとしては異常なまでに軽いということは間違いないです。
ほぼ同等のフレームと考えて、問題ないでしょう。
完成車の値段として考えてみても、付いているパーツが違うので、ひと口にどうとも言えません。
ジャイアントは自社のオリジナルパーツで、トレックは自社の子会社Bontrager(ボントレガー)のパーツで、キャノンデールも一部自社パーツです。
しかし、サドルにfizi:k(フィジーク)、ホイールにMAVIC Aksyum(マビック)と他社パーツ、しかも割と値段の高いパーツを組み込んできています。
自社ブランドを使う方が、特に完成車専用部品を使う方が安く作れるので、キャノンデールは他の2社より価格が高くなっていると考えられます。
しかし実際には、性能的には3台とも同等の部品と考えて構わないでしょう。
そのため、総合して考えると、この3台はほぼ同等の性能の自転車と考えられます。
そして、販売価格が一番安いのはジャイアントというのは間違いない事実です。
同じ性能のロードバイクで安いか比較③
性能のほぼ同じ3台が並んで、やはり価格が一番低いのはジャイアントでした。
しかし、満足度の問題から考えると、どうでしょうか。
まず、ジャイアントは残念ながら日本国内では『ジャイアント=安物』というイメージが定着してしまっています。
リーズナブルなクロスバイク、エスケープシリーズの影響でしょう。
スポーツ用品店でも値引きされて売られているのを、よく目にしますよね。
さらに、ジャイアントのTCRのアルミロードバイクは、2種類のフレームTCR SLRと、ただのTCRがラインナップされています。
これは、それなりに詳しい人が見ない限りは、どっちがどっちか分かりません。
安い方のTCRは105組でも15万円、はっきり言ってエントリー向けのリーズナブルなフレームと言わざるを得ないです。
海外ではどうか分かりませんが、現在の日本国内では、ジャイアントのロードバイクは安物というイメージがどうしても抜けないのです。
一方、キャノンデールのCAAD12は前のモデルCAAD10の頃から『アルミで世界最高のフレーム』という評価を持っています。
CAAD12は高級アルミロードバイク、値段は高くとも最高のアルミフレームというイメージを持っているんですね。
さらに、フィジーク、マビックという高級イメージのあるパーツを使っていることも、さらに高級感を推し上げています。
トレックについても、世界最軽量を銘打った完成車重量5kgを下回るフルカーボンモデル・Emonda SLRを造っているメーカーです。
そのアルミバージョンとも言えるEmonda ALRは、やはりプラスのイメージを持っています。
ジャイアントは本当に安いのか?
ジャイアント・トレック・キャノンデールの超軽量アルミロードバイクの比較は『ジャイアントは本当に安いのか?』という疑問に対して、分かりやすい答えじゃないでしょうか。
確かに性能だけを基準にすれば安いものの、満足度となると、一概にそうは言えませんよね。
「ロードバイクとは、速さこそが全ての正義だ」という人には、ジャイアントのロードバイクは安いですね。
僕自身、ツーリング車でジャイアントのグレートジャーニーというモデルを南米を旅したときなどに使用しましたが、当時は10万円でお釣りがきた自転車とは思えない頑丈さ、扱いやすさです。
旅にはお金がかかるので、車体が安いのは本当にありがたいです。
ですから、僕はジャイアントのグレートジャーニーは世界で最強のツーリング車、満足度・値段ともに最高点を出せる自転車だと思っています。
しかし、「休日に会社の自転車好き仲間とヒルクライムをしに行く」となった場合はキャノンデール、トレックの方が価値は高いと言えるかもしれません。
「おお、初めての一台なのに奮発したね」となりやすいです。
そういう自転車好き仲間の間では、特にCAAD12の初期装備で付いているMAVICホイール、fizi:kサドルはポイントが高いです。
それでも、実際の価格差は一番安いTCR SLRと、一番高いCAAD12でも3万円程度です。
3万円ぽっちで良い気分になれるなら、安いと感じる人は多いですよね。
ジャイアントは維持費用も安いのか?
購入時の金額だけで、安いかどうか判断するのは危険です。
自転車にも、維持費なるものがあります。
消耗品の値段や、耐久性の問題です。
少し分かりにくい話になりますが、ロードバイクにはBBという部品があります。
クランクの軸を支えるベアリングの部分です。
ここがジャイアントは、シマノのBB86です。
これは通称、ジャイアントシマノ規格とさえ呼ばれることもあります。
キャノンデールは独自規格のBB30a、アンチシマノと言わんばかりの規格です。
トレックはBB90、これも独自規格ですが、シマノのクランクを使うという前提で作られています。
ちなみに、この3台の超軽量アルミロードバイクを選ぶ上で一番大事なのは、このBBの違いに関しての好みかもしれません。
詳しくは「プレスフィット BB 異音」などで調べてみてください。
部品の値段は、シマノが間違いなく頭ひとつどころか、ふたつかみっつほど他のメーカーより安いです。
フレームに関しては、はっきりとした安い・高いは付けられないです。
ですが、部品、特にコンポーネントに関してはシマノが世界で最も安く、耐久性も文句なく最も性能が良いと言ってしまって問題ないでしょう。
ライバルがカンパ、SRAMと考えれば、誰も異論ないと思います。
ジャイアントは今のところ、完全にシマノに追従するつもりでいる。
トレックは蓄積した高い技術力を駆使して、できれば独自規格を展開したいけれど、とりあえずは圧倒的世界最強のシマノについて行く予定。
キャノンデールはBB30にせよ、マウンテンバイクのレフティにせよ、値段以上に独創性を守っていきたい。
そういう観点では、ジャイアントが最も維持費は安くできそうです。
でも、ジャイアントのオリジナルパーツが……
しかし、維持費には修理だけじゃなく、カスタムという問題も付いてきます。
まず、サドルですね。
ロードバイクがある程度好きな人は、自分の好きなサドルというのを、ほぼ必ず持っています。
良し悪しというより単なる好み、お尻との相性や見た目の問題なのですが。
そういう点、ジャイアントは、やはり不利です。
安いというイメージがあるので、できれば換えてしまいたいと思うでしょう。
トレックのボントレガーは近年、サドルの開発にも熱心で、決して悪い評価ではありません。
キャノンデールに付いているフィジークは、言わずとしれた高級サドルメーカー、圧倒的支持です。
(アリオネは乗り手のおしりをある程度選びますが)
ホイールについても、同じことが言えます。
しかし、そのくらいパーツをこだわるようになっている頃には、だいたいサドルもホイールも自分の好きなものに交換しているでしょう。
ただ、最初のノーマルのまま乗ったときの見た目のかっこよさで言えば、CAAD12のパーツ構成が有利じゃないでしょうか。
見た目なんかどうでも良いという人も、もちろんいます。
ですので、やはり、好みの問題になってしまうのかもしれません。
まとめ「性能に対しての安さだけ考えればジャイアント」
今回は、超軽量アルミロードバイクを軸にしてジャイアントの安さを考えました。
結構、繊細な問題だったので、無事書き終われて、一安心しています(笑)
カーボンで比較すると、どうしても各メーカーの方針で性能比較が難しくなりますが、安いかどうかは今回の超軽量アルミロードバイクのプライスの考え方基準で、判断して問題ないかと思います。
カーボンの場合は明確に走り味が違うので、自分の走り方の好みに合わせて決めるのが良いです。
ただ、今回の3社、トレック・キャノンデール・ジャイアントは、いずれもコストパフォーマンスの良い方のメーカーです。
割高なイメージのあるヨーロッパメーカーや、開発資金に苦労するような規模の小さいメーカーはコストパフォーマンスでは、劣る傾向にあります。
ご自身が一番満足できる一台を所有できると良いですね。