こんにちは、じてんしゃライターふくだです。
自転車って軽いほうが速いっていうのはイメージ的には何となく分かるのですが、どのくらい軽いと体感できるものなんでしょう?
むしろ、軽いと速いって本当なんでしょうか?
そんな質問を頂きました。
自転車の軽さと速さについて考えてみましょう。
自転車は軽いと本当に速いの?①
軽いと本当に速いのかという疑問は、実はかなり的を射ています。
自転車は軽量化にこだわり始めると、10gの軽量化に何万円も出すという、ちょっとクレイジーな世界に突入してしまいます。
実際、軽量化とはそこまで効果があるものでしょうか。
もちろん、重いよりは軽いほうが良いというイメージはあります。
ただ、軽いから具体的にどう良いのかというのは、難しい問題です。
分かりやすい方法としては、ボトルに水を入れるか入れないかで走り比べてみましょう。
ボトルに500mlの水を入れて入れば、実に500g差です。
さすがに500gとなると、重さが違うのもある程度は体感できるのですが、平地だと意外と走っていて気にならない程度の差というのも事実です。
「水のボトルが空になったから、速度がすごく上がった」
というのは、レースのスプリントやヒルクライムでもない限り、あまり聞かない話です。
自転車は軽いと本当に速いの?②
「じゃあ、軽ければ速いっていうのは都市伝説なの?!」
都市伝説というわけではありません。
最初の加速や上り坂では、500g違えば、ある程度は変わります。
ただ、10gに数万円出すというのは、やはりちょっとやり過ぎかもしれません。
たしかに、1kgの軽量化も1gからコツコツ始めないと辿り着きませんが、あまり大金を使う軽量化は少し考えものです。
どのくらいの重さに、どの程度の金額が出せるかというのは、考えておいた方が良いでしょう。
例えば、タイヤやチューブの軽量化は、さほど金額も高くないですし、消耗品ですから、レースのときだけ軽量化するということもできるので、効率が良いという人もいます。
一方、サドルを数十g軽量化するためにウン万円出すというのは、あまり効率の良い軽量化とは言えないかもしれません。
さらに、サドルは軽量性よりも、座ったときの快適性やペダルの踏みやすさなども考えないといけません。
単純な話ですが、運動エネルギー、位置エネルギーは質量に比例します。
同じ速度を出すにしても、重い物質の方が多くのエネルギーが必要です。
加速していくときには、軽い物質の方が有利です。
しかし、逆に軽い物質の方が減速するのも速いです。
持っている運動エネルギの量が少ないですからね。
空気抵抗は、形状が同じものであれば、重いものも軽いものでも等しく掛かります。
同じ力でブレーキすれば、軽いものの方、運動エネルギーが少ないものの方が減速するのは早いです。
ですから、あまり安易に軽い=速いというわけにもいきません。
そうは言っても、やはり軽いほうが速い!
そう考えて行くと、軽い=速いというのは都市伝説のような気がしてきます。
しかし、それでも全ての乗り物にとって軽さとは正義だと言われます。
軽い=低燃費、同じ燃料を使えば軽い方が遠くまで運べる。
飛行機でも何でも新素材開発といえば、いかに軽いかというのはとても大事な問題です。
物体が前に進めば、空気抵抗が掛かります。
空気抵抗がなければ、軽ければ軽い方が素晴らしいというのは間違いありません。
しかし、現実には空気抵抗は存在します。
しかも、速度を上げるほどに空気抵抗は上がっていきます。
さらに自転車の場合、人間の身体という風の抵抗をいっぱい受ける形状の物質が乗っています。
ただ、空気抵抗は、速度が遅い間はさほど大きいものではありません。
ヒルクライムレースで軽量化が大事なのは、重力に逆らって上に登るということもありますが、速度が出ない分、空気抵抗の影響が少ないということも大きいんですね。
これはヒルクライムのみならず、信号のストップアンドゴーでも同じですね。
本当に一切登らない、信号がほとんどなくてストップアンドゴーがないという場合には、車体重量というのはあまり考えなくても良いです。
ですが、現実問題として、日本国内ではそういう道はなかなかないでしょうから、やはり軽さも大事です。
軽い以外で速い自転車!エアロ?!①
自転車を速くするための方法としては、軽さ以外でいえばエアロ、空力を良くしてやるということです。
最も空気抵抗に対して有利とされているのが、リカンベントという自転車です。
上半身を後ろに倒して寝そべるように乗ります。
一番空気抵抗を受ける人間の身体を寝かせて、空気抵抗を削減するというものです。
これは、平地では本当に速いです。
短距離用のトラックを1時間の内に何周できるかで距離を測る、アワーレコードという競技があります。
ロードバイクでの世界記録は50km/h台中盤ですが、リカンベントに空気抵抗を良くするためのカウルを付けた車体では、実に90km/hを越える記録が出ています。
1時間ずっと時速90キロで人力で走るということですから、もはや狂気と言っても良いかもしれません。
そのくらい、人間の身体が空気を受けることでロスする力というのは大きいんですね。
「じゃあ、ロードバイクじゃなくて、リカンベントでレースすれば良いじゃん?!」
リカンベントは平地は速いのですが、山が登れないんですね。
ロードバイクが優秀なのは、山も登れて、平地も走れて、コーナーも鋭く曲がれて。
そう、ロードバイクとは、どんな状況でも速く走り続けられる自転車なんです。
軽い以外で速い自転車!エアロ?!②
リカンベントまで行かなくても、ロードバイクにもエアロ系のものがあります。
近年では、流行っていますよね。
ただ、現実問題としてフレームをエアロ形状にしても、人間の身体がエアロ形状になるわけではないですから、リカンベントほどの効果は得られません。
ただ、同じ重量であればエアロに優れているものの方が速いです。
プロのレースでは6.8kgという車体重量の規制があります。
ですから、時代が進んで6.8kg以下の自転車は、どこのメーカーも簡単に作れるようになったので、どうせ同じ軽さならエアロにしようというのが今の時代の流れですね。
自転車のフレームより、エアロ効果が高いと言われるのがホイールです。
ディープリムホイールやディスクホイールという、スポークを隠して空気抵抗を減らすものです。
自転車フレームのエアロ化は、正直、値段や開発技術ほどの大きい効果は見込めないのですが、ホイールのエアロ化はある程度の速度になれば、明確に感じることができます。
ホイールは当然、自転車と同じ速度で前に進みながら、しかも回転し続けているので、空気とぶつかる回数が多いんですね。
かつてのディープリムホイールは非常に重たかったのですが、それでも十分に効果がありました。
現在では、カーボン技術の進歩により、アルミの普通のホイールよりフルカーボンのディープリムホイールの方が軽いというのは、当たり前のことになりつつあります。
値段が高く、雨の日などのブレーキ性能が悪いとデメリットも少なからずありますが、性能でいえば間違いなく、圧倒的にフルカーボンのディープリムホイールは優れています。
特に高速域でも走る機会が多いという人は、フルカーボンディープリムの恩恵が多く得られるでしょう。
軽いじゃない速さ?快適さ!
軽い以外で自転車を速くする方法は、エアロ以外にもうひとつあります。
意外と思われるかもしれませんが、快適さです。
「レースのためのバイクとは速さこそが全てで、そのためにはガチガチに硬くて、快適性なんてゼロの方が良い」
そういう時代が昔はありました。
『硬い自転車=力をしっかり受け止めてくれてよく進む自転車』
という常識があった時代です。
しかし、近年では快適だけど、なおかつ力もしっかり受け止めてくれて、よく進む自転車がどんどんできています。
実際、快適性が大切というのは、プロの選手のフォームを昔と今で、見比べても分かります。
昔はハンドルを低く、遠く、ハンドルのドロップポジションを握って、きつい前傾姿勢で走り続けることこそ美学でした。
しかし、昨今では選手はドロップポジションじゃなく、ブラケットポジション(ブレーキレバーの上)を握る時間も長いです。
ドロップポジションは、今やスプリントのタイミングで使うものというイメージさえあります。
かつては、山岳でもドロップポジションで登り続ける選手も少なからずいました。
快適に走ることで、最後の勝負どころの力を保存できるという考え方なのかもしれません。
当たり前ですが、プロ選手も人間なので、できれば楽がしたいということなのかもしれません。
ロードバイクのレース、特にツール・ド・フランスなどの大きなレースは1日で終わりません。
次の日もレースが続きます。
快適に走るということが、速く走ることにもつながる場合もあるんですね。
まとめ「軽い=速いとは限らない」
自転車は、軽ければ速いのかというお話でした。
確かに軽いと有利な面も多いですが、自転車は総合的にいろいろな面から考えないといけないので、ただ軽ければ良いというわけではないのですね。
ついつい部品などを選ぶときに重量が書いてあると、軽い方が魅力的に見えることが多いですが、軽さだけで選ぶのはちょっと安易かもしれません。
こういうところが、自転車のちょっと難しいところでもありますし、おもしろいポイントでもあるんですね。