チェーンやタイヤといった消耗品と違い、自転車のホイール・リムは無限の寿命があるように感じます。
しかし、禅問答のようですが、形のあるものはすべて寿命があります。
リムも例外ではありません。
自転車のリムに傷があると、特に大事故の原因になるかもしれません。
今回は、自転車のリムの傷について、そしてその対処の仕方、消し方などを詳しくお話ししましょう。
自転車のリムはなぜ傷ついたり、すり減るのか
自転車のリムは、走行中かなりの負荷がかかります。
まずは体重です。
全体重が前輪と後輪のリムにかかるわけです。
体重や、段差を越えたときの衝撃は、リムが歪んでいく力になります。
そして走行中には、飛び石がリムに当たったり、縁石に擦りつけてしまったりすることで傷がついてしまいます。
また、ディスクブレーキやドラムブレーキ以外以外の自転車の場合だと、リムとブレーキシューを押し付けて起きる摩擦力で止まるわけですから、当然リムがすり減ります。
また、ブレーキシューに、もし石のような固いものが挟まっていると、リム全周にわたって綺麗な円形の傷ができてしまいます。
リムはさらに他の要因でも、すり減ります。
雨の中でアルミクリンチャーをはいた自転車に乗ると、リムのアルミ面が真っ黒に汚れてしまうのに気が付くでしょうか?
リムとブレーキシューの間に水の層がたまってしまうと、ちょうど包丁を研いだり、耐水ペーパーで磨いたときのように、ブレーキシューとアルミ面が削れていってしまいます。
削れてしまったリムを、一般的には「痩せた」と表現します。
そんな、痩せてしまったリムは再使用できません。
手組の場合なら、スポークとハブだけ新しいリムに移植することも可能ですが、完組ホイールではそうはいきません。
リムが傷ついたり、痩せてしまえば、寿命です。
捨てるか、オブジェにするかしかありません。
そのまま乗ると危険です。
自転車リムの傷の危険性
自転車のリムが傷ついていると何故危険なのか、お伝えします。
自転車のブレーキというのは、ブレーキ本体の剛性や精度も大切ですが、リムを挟んで止めている以上、リムの精度というのがブレーキの質にかなり影響してきます。
リムが歪んでいると、ブレーキむらが起こりますし、ひどくなるとカックンブレーキになります。
ロードの場合だと、重心は前に行きがちですから、カックンブレーキで前のめりになって、こけてしまうかもしれません。
また、ダウンヒルで高速で走っている時に、ブレーキが効いたり効かなかったりするのは、一発で落車する可能性があります。
リムが傷ついていても、ブレーキにはムラが起こります。
リム面が平滑でないと、ブレーキシューも余計に削れてしまいますし、
また、一周綺麗に削れている場合も、やはり制動力が落ちてしまいます。
雨の日の自転車リムの傷
雨の日は、どんどん自転車リムが削れてしまうということは、先ほど述べました。
しかし、雨の日は他にも気を付けなければいけないことがあります。
例えば、グレーチングやマンホールの上にタイヤが乗ってしまうと、スリップすることがあります。
当然、リムを地面に打ち付けてしまいます。
傷がつかなければ良いですが、傷がついたり、ゆがんだりすると大変です。
また、雨の日は泥やガラス片などが路側帯から路面の中央のほうまで流れてくることがあります。
パンクリスクが上がるのもそうですが、リムに対しても、リムとブレーキシューの間に固いものがはさまって、リムを大きく傷つけてしまうこともあります。
理想論を言えば、雨の日は乗らない・雨上がりも乗らないということになってしまいますが、熱心に練習している人や、プロ選手はそんなことをいっていられません。
あまり泥水のなかに入り込まないよう、そして滑りやすい所にタイヤを入れないように、気を付けて走ってください。
ただ、マンホールやグレーチングを避けようとすると、後方の車やバイクから見ると不自然な動きになってしまいます。
雨で視界が悪くなっている中でそのような挙動をするのも、また別の意味で危険です。
それを防ぐためには路側帯ではなく、ある程度、道路の中央によって車と同じようなスピードで走っていく、というのが効果的です。
ですが、今度は車のタイヤからのしぶきを大いに浴びることになるでしょう。
自転車のアルミリムとカーボンリムの傷の違い
今まで、アルミリムのことを前提に話を進めてきましたが、カーボンリムについても言及してみましょう。
カーボンリムを雨の日に乗ると、滑りまくって全く止まれないというのは、聞いたことがあると思います。
カーボンリムは炭素繊維というよりも表面はプラスチックのようなものなので、水をはじき、ブレーキシューで抑えてもほとんど摩擦が発生しないため、雨の日は止まれなくなってしまいます。
プロの選手などはカーボンリムのホイールで、高速でダウンヒルをこなしていますけど、私には怖くてできません。
雨の日にどうしても乗りたい場合には、ディスクブレーキの自転車を導入するか、またはFulcrum Racing zero niteや、MavicのExalithリムシリーズのようなホイールを選択する方がよいでしょう。
また、カーボンリムは痩せにくいですが、ダウンヒルの時の熱には気を付けなければいけません。
ひと昔前のカーボンリムは、エポキシ樹脂の耐熱性が弱く、ダウンヒルでだらだらとブレーキをかけ続けると、熱で変形してしまうようなものが多かったのです。
今は随分改善されましたが、アルミと比べてカーボンは放熱性が低いという性質自体は変えられません。
カーボンリムの場合は、傷よりも熱で変形することのほうが恐ろしいです。
熱で変形してしまうと、アルミリムが傷ついたり、ゆがんだりしたときと同じように、ブレーキにむらがでて危険です。
さらに熱変形が進むと、ホイールとして崩壊してしまうので、もはや進むこともできなくなるでしょう。
どうすれば自転車リムの傷を防げるか
自転車というのは、乗っているとどうしても傷んでくるものです。
特にロードバイクやマウンテンバイクは、戦う道具ですから、傷むのは仕方がないのです。
傷を完璧に防ぐ手段はありませんが、傷つきにくく、また傷ついても安全に運用できるようにする方法はあります。
まず紹介したいのは、リム用の砥石です。
リム用の砥石をつかって、リム面を綺麗にしてあげれば、ブレーキング性能が向上し、もっと自転車をコントロールしやすくなるでしょう。
また、リムには小さな穴があいており、この穴が消えてしまった時がリムの寿命です。
ときどきリムの状態を見てあげて、痩せすぎたホイールには、もう乗らないようにしましょう。
そして、根本的な解決策としては、天気の悪い日に乗らない、ロードの場合は荒れた道にあまり入らないということです。
雨の日に乗ってリムを削ったり、傷めたりすることや、荒れた道に入って飛び石でリムが傷つくことも、ある程度気を付ければ防げることです。
グラベルに入りたい場合は、やはりそれに向いたバイクがありますし、ロードで荒れた道を走ってリムだけでなく、タイヤを傷めることも避けたいものです。
まとめ:自転車のリムの傷はある意味仕方がない
さび付いてるロードやマウンテンに乗るのはかっこ悪いと思いますが、ちゃんと整備していても自転車のリムが傷ついていく、摩耗していくことは避けられません。
そうであるならば、リムも消耗品とわりきって、ローテーションを組んでホイールを使いまわしていくか、寿命がきたならば、はやく次に乗り換えるということが必要です。
自転車、とくにスポーツに使う自転車は、ずっと使い続けられるものはありません。
使い倒して、寿命がきたら素直に次のものを使うというのが、正しいモノの使い方だと思います。