皆さんは、自転車メーカーをいくつご存知ですか?
完成車やフレームを扱うメーカーと比べると、部品メーカーはあまり知られていません
あまり自転車に詳しくなく、「シマノしか知らない」という方は少なくないでしょう。
そこで今回は、シマノと同じく自転車部品を取り扱うメーカーである「サンツアー」についてお話しします。
自転車部品ブランド「サンツアー」とは
サンツアーとは自転車のパーツを作るブランドの名称ですが、正確には複数のメーカーが集まることで生み出された、新しいブランドのことを指しています。
変速機をメインに開発している前田工業を始め、ギアのスギノ鉄工所、ブレーキのダイヤコンペ、ハブの三信などが手を組み、ひとつのコンポを作り上げました。
それぞれのメーカーが得意としていることをつぎ込んでおり、それは当時活躍していたシマノを上回るものだったと言われています。
しかし、80年代も半ばを過ぎる頃、シマノがSTIを開発したことで状況は変わりました。
性能が一点特化しているパーツよりも、速度の切り替えがスムーズに行える、使い勝手の良いパーツの方が優先されるようになったのです。
あらゆるメーカーやブランドは、この影響を受けました。
それでもカンパは踏みとどまれたものの、サンツアーは筆頭である前田工業が別のメーカーに取り込まれてしまい、その吸収後のブランドすらも台湾の企業に買収されてしまったのです。
70年代後半がサンツアーの全盛期といえますが、製品はどれも優れており、軽合金で作られたパーツは、芸術品と言っても過言ではないという評価を下している人も存在します。
社名サンツアー
サンツアーとは1990年の11月に大阪のモリ工業が、茨城県にある自転車の部品メーカーの栄輪業株式会社に、その1年後には同様のメーカーである、マエダ工業に資本参加することで作られたブランドです。
これをきっかけとして、会社名を変えることになった栄輪業の新たな社名に「サンツアー」の名前を組み込むことにしたのです。
その3ヶ月後には、子会社であるモリ金属株式会社とマエダ工業を合併させることで、モリ・サンツアーという新しい会社を設立させました。
こうしてひとつのブランドから、大規模な会社の名称へと使われることになったサンツアーです。
しかし、1995年の春に親会社のモリ工業が自転車のパーツ製作を取り止めることとなり、メインの会社とされていたエスアール・サンツアーを別の会社に吸収合併させたのです。
子会社として傘下に入っていた他の会社は存続したものの、社名は昔のものに戻ってしまい、全ての会社から「サンツアー」の名前は消えることとなりました。
台湾のSRサンツアー
かつて栄華を誇っていた自転車のパーツのブランドであるサンツアーは、日本で「エスアール・サンツアー」というメーカーに生まれ変わり、現在は「SRサンツアー」として台湾の会社に組み込まれています。
SRサンツアーは1987年に栄輪業から資金を提供されることで東京に会社を設立して、次の年には台湾に工場を建て、自転車専用のアルミ製のコンポーネントを作り始めました。
1991年になると工場をベルギーにも建設した上で、翌年にはマエダ工業と共にディレイラーを開発しています。
しかし、1994年の終わりにモリ工業が事業から手を引くことを決めたため、エスアール・サンツアーの社長である小林大裕氏が商標権と台湾の工場を買い取りました。
それ以降は、SRサンツアーの商品を取り扱う会社の社長として、まとめていくこととなったのです。
努力は実り、2000年には日本にオフィスを構えられるまでになりました。
日本への輸入は、最初は変速機を取り付けるくらいのものでしたが、自転車の専門店がパーツを取り扱うようになると、徐々にクランクやブレーキ、ペダルなども販売されるようになってきたのです。
吸収合併を繰り返してきた歴史を持っている、波乱に満ちたメーカーですが、現在は安定して製品の開発と販売を行っています。
サンツアーのおすすめ自転車部品はサスペンション
自転車の部品メーカーとして知られている、SRサンツアーのおすすめはサスペンションです。
その実績は折り紙付きで、オリンピックとマウンテンバイクの世界選手権の両方で上位入賞したことをきっかけに、ブリヂストンアンカーに所属しているチームでも使われるようになりました。
技術力は非常に高く、開発された製品は全てメーカー独自の仕組みでありながら、他のメーカーの製品よりもコストがずっと抑えられています。
その中でも「エピコン」シリーズは、150mmのストロークで、サスペンションは空気を利用することで動きます。
2012年に開発されたモデルは、ダンパーが新調されているので、今までよりも性能が向上しています。
同じシリーズに属しているアイテムには、ストロークの幅を変えられるものがあり、150~110mmまでと好きな位置に調整できます。
クラウンの左側に取り付けられたボタンを押しながらストロークさせると、110mmで固定されます。
元に戻したければ、ボタンを押しっぱなしにして下さい。
細かい変更はできませんが、ダイヤルよりも早く済むので便利です。
サスを短くすれば、上り坂でもペダルを漕ぎやすくなり、ストロークを長く行わないコースを走っても不自由しません。
自転車部品ブランド「サンツアー」、EPICONのインプレ
自転車に取り付けるパーツを開発しているSRサンツアーの中で、特に評判が良いものはサスペンションです。
その中でも売れ筋となっているのは「エピコン」シリーズで、このサスペンションを組み込んで、レースやイベントなどに参加するバイクも増えてきています。
設置されているボタンは大きくて押しやすく、フォークが軽く作られているので、ハンドル操作がスムーズに行えます。
ダンパーはチューブの中に入っているので、ボトムケースの周辺があまり重くならずに済んでいます。
コンプレッションのコントロールも可能なので、ストロークなどの細かいところまで、手を加えられるようになりました。
そのため、多少なら激しい動きやトリッキーな技を決めても、バランスを崩すことなく乗っていることができます。
メンテナンスはボトムケースを取り外して、シールを洗浄するか新しいものと取り替えるだけなので、手間が掛かりません。
反応が鈍ることも、いきなり壊れてしまうこともないので、信頼性も十分であると言えるでしょう。
サンツアー「EPICON」のインプレの続き
サンツアーによる自転車のパーツの中で、特に高い評価を得ているものは「エピコン」シリーズです。
性能面の優秀さは文句の付けようがなく、例えば、ブレーキを掛けながらコーナーを曲がったとしても、ローターがぶれることはありません。
フォークが捻れることもないので、直線距離を真っ直ぐ走り抜けることができるでしょう。
ストロークの動きも、はっきりと感じ取れます。
インナーチューブは32mmと無難なサイズのものを使用しており、剛性も抜群です。
全体的に軽く作られているので、走っていて爽快感を得られることでしょう。
注目すべきは、トラベルアジャスト機能です。
ボタンを押しながらフロントブレーキを掛けることで、短いまま固定しておくことが可能です。
元に戻すなら一旦降りて、前輪を浮き上がらせてからボタンを押しますが、それほど手間ではありません。
モデルこそ古いタイプでも、ダンパーを最新のものにすることはできるので、自転車を買い直さなくても性能を上げられる点が、大きなメリットといえるでしょう。
この他にも、内部に組み込まれたピンでトラベル量を固定できるモデルも存在します。
カスタマイズするのもアリ
今回は、サンツアーについてご紹介させていただきました。
サンツアーは、サスペンションフォーク、クランク、シートポスト、BBなどを取り扱っています。
購入した自転車に、サンツアーの製品が使われていない場合もあるでしょう。
その場合に気になったら、ご自分でカスタマイズしてみても、楽しいかもしれませんね。