一般的なクロスバイクに搭載されているVブレーキですが、ストッピングパワーが強いので「効き過ぎる!」という感覚を持っている人も少なくないようですね。
そこでブレーキ交換を考える上で、ロードバイク用の105などのキャリパーブレーキをクロスバイクに換装できないか?という発想に至るわけですね。
果たして可能のか?また効果はどうなのか?検証してみたいと思います。
クロスバイクにVブレーキが採用されているのはなぜ?
さてブレーキ交換を考える前にまずは、ブレーキについてお話しましょう。
クロスバイクはロードバイクとマウンテンバイク(以下MTBと記載)の中間的な位置付けですが、元々はMTBのフレームとコンポに舗装路向けのスリックタイヤを履かせたものでした。
MTBは山道や泥だらけの道を走ることが多いため、リムに泥や水が付いて制動力が落ちることを想定した上で、強い力を持つブレーキが必要になります。
そのため、当初はその時点で最高の制動力を持つと言われていたカンチレバーブレーキを採用していましたが、次第に制動力の弱さと調整の難しさが指摘されるようになりました。
そこで日本が世界に誇る自転車部品メーカー「シマノ」が、従来のカンチレバーブレーキの弱点を解消し、開発したものがVブレーキでした。
レバー比が大きく、直線的に力が伝わるため、はるかに制動力が強く、MTBを中心にあっという間にカンチレバーブレーキに取って代わるものになりました。
その名残りとして現在もクロスバイクのブレーキには、MTBと同じくVブレーキが採用されています。
なおロードバイクの105などのキャリパーブレーキは、制動力がVブレーキに比べ弱く、タイヤクリアランスが狭く太いタイヤが履けず、泥詰まりにも弱いのでMTBは当然ながら、クロスバイクにも不向きとされています。
105とは?
「105」と聞いて、ピンとくる人はロードバイク乗りの方ですね!
105とはシマノのロードバイク用コンポーネントのことで、リア11速のモデルです。
ロードバイクの完成車であれば、中級クラスのものに搭載されているコンポになります。
上級モデルに引けを取らない性能と、費用面のバランスが良く、シマノのコンポの中でも人気のグレードです。
さすがにクロスバイクの完成車に搭載されていることは少ないですが、あとから換装して11速化をしている人は良く見かけます。
ロードバイク用のコンポーネントなので、クロスバイクに換装するには、それなりの手間と技術を擁しますが、成功体験はたくさんあるので、おすすめできるカスタマイズです。
また、ロードバイクでもコンポーネント全体は8速のクラリスや9速のソラでも、ブレーキ交換で105のブレーキにする人は多いです。
最安値の通販サイトなら3,000円~4,000円で手に入りますから、例えば、キャリパーブレーキを搭載しているクロスバイクに乗っている人には、かなりおすすめです。
クロスバイクのブレーキ交換で105キャリパーにする問題点
さて、今回のテーマであるクロスバイクのブレーキ交換で、シマノ・105などのキャリパーブレーキを付けられるのかという話を進めていきましょう。
結論から言うと「やれないことはないけど、おすすめはしない…」こんなニュアンスですね。
そもそも構造が違うので、Vブレーキ仕様のクロスバイクにキャリパーブレーキを取りつけようとすると、アームが届かないはずなので不可能です。
フロントフォークをキャリパーブレーキ用に付け替えれば取り付けは可能ですが、キャリパーにするだけでフォークまで替えなければならないとなると、コスパの面で疑問です。
しかもリアは、大半がVブレーキを前提にしたブレーキ台座の付いたフレーム構造になっているので、まず不可能だと思います。
また仮に取り付けられたとしても、キャリパーブレーキの制動力ではクロスバイクの太目のタイヤに対して制動力が弱いので、安全面の心配も出てきます。
クロスバイクのブレーキ交換で105キャリパーにするなら
105のキャリパーブレーキは先ほども触れたように、ロードバイクのブレーキとしては、とても優秀です。
ですから、コンポのグレードがクラリスやソラのようなエントリーモデルでも、ブレーキだけは105を搭載している人も多いのです。
何が言いたいかというと、適材適所ということです。
ロードバイクにはキャリパーブレーキが最適である理由があり、MTBやクロスバイクにはVブレーキが最適な意味があるのです。
キャリパーブレーキは制動力はもとより、効きが滑らかなので、スピードコントロールに長けたブレーキです。
自転車に限らず、2輪車のブレーキは前輪用は止まるため、後輪用はスピードのコントロールに使うものです。
ですから、もしクロスバイクでどうしてもブレーキ交換したいなら、制動力のキープを目標としてフロントは既存のVブレーキのまま、リアだけキャリパーにしてはいかがでしょうか。
もちろん構造的にできるかどうかは不明なので、良く確認してから行ってください。
また反対のフロントがキャリパー、リアがVブレーキの組み合わせは、後輪がロックして滑ってしまいますので、絶対にやめた方が良いです。
ブレーキ交換必要なし!キャリパーブレーキ仕様のクロスバイク
キャリパーブレーキにこだわるのであれば、ブレーキ交換の必要が無いキャリパーブレーキ仕様のクロスバイクを購入するのもひとつの方法です。
キャリパーブレーキ仕様のクロスバイクは、コンポもロードバイク用のものが多いですし、タイヤも25Cくらいの細めになってくるので、完全にロード寄りのクロスバイクという位置付けです。
中には「フラットバーロード」という、新カテゴリー車として扱っているメーカーもあります。
では具体的に何台か紹介します。
【LOUIS GARNEAU(ルイガノ):LGS-RSR 4】参考価格:¥58,000
カナダのスポーツ用品メーカー「ルイガノ」が、スポーツバイクのエントリーモデルとして販売している製品です。
フラットバーロードとして位置づけられており、700×25Cのタイヤにシマノ製コンポ、キャリパーブレーキ採用と、クロスバイクとロードバイクのギリギリの線を上手く表現している1台です。
ダボ穴が付いているので、リアキャリアなどのオプションも取り付けられます。
【GIOS(ジオス):AMPIO】参考価格:¥80,000
イタリアの老舗自転車メーカー「ジオス」のクロスバイクです。
フレームは細身でスタイリッシュなクロモリ素材で、他社とは一線を画すフォルムが魅力です。
コンポの端々にシマノ・クラリスを使用したロードバイク仕様になっており、コスパの高い1台です。
ただ、ブレーキの評判が芳しくないので、105グレードくらいに交換したいところです。
クロスバイクを105で11速化してみよう
クロスバイクのブレーキ交換はおすすめできませんが、コンポーネントを換装することは推奨できます。
まず用意するパーツですが、セットで買ってしまうと、ブレーキとSTIレバーが今回のカスタマイズには必要なく無駄になってしまうので、個別に購入してください。
まず自分のクロスバイクの変速段数を確認してください。
それによって、揃えるパーツが変わってきます。
一番気を付けなければいけないのが、カセットスプロケットです。
カセットスプロケットとは、簡単に言うと後輪に取り付けるギアの歯のことです。
これが10速用のホイールのみ、105グレードの11速用のスプロケットが取り付けられません。
もしカスタマイズするクロスバイクのホイールが10速対応であれば、10速用のスプロケットを用意してください。
またスプロケットの歯数ですが、11T-28Tで大丈夫なはずです。
28Tというのは、かなり軽いギアですが、これ以上軽くしてワイドレシオなものを選んでも、本格的なヒルクライムでもしない限り、まず使わないと思います。
それに伴って、リアディレイラ―(後ろの変速機)も最大28Tのものを選んでください。
またシフター、フロントディレイラ―、クランクはフロントの変速段数によって揃える必要がありますが、105は2速です。
あとは11速用のチェーンとボトムブラケット(BSA・JIS規格の68mm)を用意してください。
ブレーキは命に関わります!
自転車を止める手段はブレーキしかありませんので、自転車乗りはブレーキ性能に命を預けているようなものです。
それだけに、本来見た目などにこだわっている場合ではなく、制動力の確かな物を選ばなくてはなりません。
安全第一を心掛け、くれぐれも無茶なブレーキ交換は避けていただきたいと思います。