現在は、「チューブラー」と聞いてもピンとこない人の方が多いでしょう。
チューブラーはロードバイクのタイヤの種類のことで、ひと昔前までは主流のタイヤでした。
しかし、一般ユーザーではデメリットが多くなり、今では完全に少数派になっています。
ただし、対応ホイールがあるように完全に消えたわけではなく、レースの世界では第一線で活躍しています。
そこで今回はチューブラーについて、色々とひも解いてみましょう。
ロードバイクのホイールとタイヤの規格
自転車のタイヤには、様々な規格と種類が存在します。
タイヤはホイールにはまって車輪としての体を成すので、ホイールもタイヤの規格に合わせる必要があります。
ロードバイクに使用されるクリンチャータイヤは、WO(ワイヤードオン)のフランス規格と覚えてください。
WOはタイヤとリムのはめ合せの方法で、文字通りタイヤのワイヤー(ビード)をリムの上に乗せる(オン)ような格好で装着します。
なお、チューブラータイヤは、はめ合せ方法が全く違うので後述します。
フランス規格というのは、タイヤのサイズを表す際の規格のことで、フランス規格は外径と幅をミリメートルで表記します。
また、同じ車輪外径でもリム外径が微妙に違うため、それを表す記号(A〜D)も併記されます。
そのため、タイヤのサイズで700×25cというものは、「c規格のリムにタイヤをはめたときに外径が700ミリになる幅25ミリのタイヤ」という意味です。
チューブラーはロードバイクのチューブタイヤの一種
ロードバイクのタイヤとホイールの規格についてお話しましたが、次はタイヤの種類です。
タイヤの種類は大まかに分けて2つあり、「チューブタイヤ」と「チューブレスタイヤ」になります。
タイヤの中にチューブを入れてそこに空気を充填するのがチューブタイヤ、タイヤに直接空気を注入するのがチューブレスタイヤです。
チューブタイヤには、チューブをタイヤの内部に入れる「クリンチャー」と、チューブをタイヤに縫い付ける「チューブラー」があります。
現在のタイヤの主流はクリンチャーです。
タイヤとチューブが独立した構造なので、パンク修理が容易な点や持ち運びに便利な点が評価され、一般市場ではほぼ独占状態です。
クリンチャー全盛の前はチューブラーが主流でしたが、デメリットがクローズアップされ過ぎて一般市場では下火になっています。
そして、近年台頭が著しいのが、チューブレスです。
チューブタイヤとは考え方が全く異なり、低圧での運用が可能なので、特にMTBでは主流になっています。
チューブラーはホイールへのはめ方により大きなメリットがある
今回はチューブラーが主役なので、ここからはチューブタイヤを中心に話を進めます。
チューブラータイヤは、現在の自転車の原型とも言われている「安全型自転車」に採用されていたタイヤの最も古い形です。
タイヤの内側にある袋状の布(ケーシング)でチューブを覆うようにして縫い付け、その上からトレッドと呼ばれるゴムを被せた構造です。
ホイールのリムには、専用の接着剤や両面テープで貼りつけて使用します。
クリンチャータイヤの場合は、「ビード」といわれる端っこの盛り上がっている部分をリムの溝に引掛けて固定するので、どうしても楕円状に変形します。
しかし、チューブラーはリムの表面に接着するだけなので、タイヤは真円状態を保てます。
タイヤの変形はタイヤが転がる上での最大の抵抗と言われていますので、チューブラーは優秀なことになります。
また、クリンチャーはチューブの圧力がタイヤのビードを押し上げて、リムへの固定力を高めています。
そのため、リムもタイヤも複雑な構造の為重くなりますが、チューブラーはシンプルなのでかなり軽量に作ることができます。
さらに、構造上の要因からロードバイクではありがちの、「リム打ちパンク」が起こりにくいのもメリットの1つです。
このように数多くのメリットがあるので、現在でもレースの世界では決して廃れたものではありません。
チューブラーのデメリット
チューブラータイヤにはメリットが多いですが、デメリットもあります。
最大のデメリットは、パンク修理に非常に手間が掛かることです。
クリンチャータイヤであれば、タイヤとチューブは接着されていませんので、パンクのときにチューブだけを抜き出すのは容易です。
ところが、チューブラ—はチューブが縫い付けてあるので、糸をほどいてタイヤと切り離さなくてはいけません。
パンクの修理をしたらまた縫い直すことになるので、多大な労力が必要になります。
しかも、性能が100%回復することはあり得ないので、普通はパンクしたら即交換になります。
パンクの頻度は個人差があり何とも言えませんが、ロードバイクのタイヤにおいてパンクは珍しいことではありません。
そのため、パンクの度に交換していたのでは、ランニングコストが掛かり過ぎて現実味がなくなります。
他には、ホイールのリムに接着する際に「リムセメント」を使う場合は、完全接着に24時間ほどかかるので緊急時の対応ができないことになります。
しかし、今は専用の両面テープができたので、そのデメリットは大分解消されてきました。
チューブラー対応のホイールは軽い!
ロードバイクにおいてチューブラータイヤは、走行性能ではむしろクリンチャーを上回ると思われます。
しかし、やはりトラブルときのことを考えると、一般ユーザーに厳しいのは否めません。
ただ、考え方を変えれば、デメリットを補って余りあるのが軽量であるという点です。
同じ種類のホイールやタイヤでも、クリンチャーに比べホイールでは100〜150gほど軽くなります。
タイヤはクリンチャーのチューブやリムテープも合わせた重量との比較ですが、20g〜40gは違ってきます。
特にホイールはカーボンリムのチューブラー対応になると、前後計で1,000gを切ってくるようなものまであります。
そのため、トラブルに目をつぶれるのなら、チューブラーを選ぶメリットはかなり大きいことになります。
ただし、汎用性が低く一般ユーザーには不向きと判断されているので、アルミリムのチューブラーホイールは少なく、ほとんどがカーボンです。
そのため、高価なものが多いので、趣としてはレースの決戦用となるでしょう。
ロードバイクにおいてのチューブラーの可能性
ロードバイクにおいてチューブラータイヤを使用することを考えてきましたが、近年はチューブラー人気が復活しつつあると言います。
これは先述した通り、固定に両面テープが使われるようになったことで緊急時の対応が飛躍的に改善されたこと。
また、「シーラント剤」と呼ばれる耐パンク防止の溶剤を注入して、パンクの危険性を低減させることができるようになった面もあります。
タイヤやホイールもクリンチャーに比べれば、まだまだラインナップは少ないです。
しかし「異次元」とも評されることがある乗り味が評価されれば、一気に台頭してきておかしくない下地はあります。
現在ロードバイクのホイールはタイヤが太めにシフトしてきている関係で、リム幅を広げる「ワイドリム化」が進んでいます。
それによって確実に重量が重くなっているので、チューブラーの軽さが見直される日もそう遠くないかもしれません。
チューブラーが復活しつつある!
今回は、ロードバイクのタイヤはホイールの中でも、特にチューブラーについてご紹介してみました。
運用の難しさや選択肢の少なさはネックですが、走行性能に関してはかなり優位であると言えます。
特にヒルクライムなどの短距離レースでは、耐久性に目をつぶって一発勝負を掛けるのに最適かと思います。
最近は見直されてきている傾向にありますので、今後は一般市場にも多くで回ってくるかもしれませんね。