自転車に乗っているとトラブルに見舞われることもありますが、その代表格がタイヤのパンクではないでしょうか。
実際に経験をしたことがある方もいるでしょうし、経験が無くても「自転車はパンクしやすい」などという情報は入ってきているはずです。
しかし、実情は対策さえすればそんなに頻繁にパンクはしませんし、最初から物理的にパンクしないタイヤもあります。
今回はそんなタイヤのパンクのお話です。
自転車タイヤのパンクの原因
自転車のタイヤのパンクには複数の原因がありますので、まずはそこから確認していくことにしましょう。
なお、この項で対象にするタイヤは、最も一般的である中にチューブを入れて使用する「クリンチャータイヤ」とします。
●空気圧が足りていない
タイヤ内部の空気圧が足りていない、いわゆる空気の量が少ない状態ですと、チューブが柔らかくなって変形しやすくなります。
その状態で段差やわだちなどを越えようとしてタイヤに衝撃が加わると、変形したチューブがホイールのリムと地面の間に挟まって穴が開いてしまいます。
●チューブが劣化している
チューブは走行中にタイヤの内部と擦れて表面が摩耗していきますし、常に空気圧が掛かった状態のため徐々に薄くなってきます。
そうなると穴が開きやすくなりますので、少しの衝撃でもパンクするようになります。
●チューブの品質の問題
自転車を購入してすぐにパンクしてしまうような場合は、チューブの品質が低いことが疑われます。
ゴムの張り合わせ部分の融着が甘かったり、バルブの取り付けがいい加減だったりすると、最初に空気を入れた段階で裂けてしまったり、もげたりしてしまいます。
●タイヤの小さな穴から異物が内部に入り込む
タイヤに開いた小さな穴やヒビ割れのような細かい傷ではパンクしないことのほうが多いですが、そこから小石やガラス片などが内部に入り込み、走行中にめり込んでチューブに達して穴を開けることはあります。
クギやガラスがブスッと刺さって一気に空気が抜けるパンクよりも、上記のように徐々にめり込んでいくパンクのほうが多いことを覚えておきましょう。
自転車タイヤは適正空気圧を守っていれば滅多にパンクしないもの
前項では自転車のパンクの原因をお伝えしましたが、いずれにしても意識をしてメンテナンスすれば、そんなに頻繁にパンクはしないものです。
まずタイヤの空気圧不足ですが、自転車のタイヤには適正空気圧が決まっており、タイヤの側面に印字されています。
上限と下限が指定されているものが多く、その範囲内であればタイヤ本来の性能が発揮され、パンクもしにくいという数値が指定されています。
そのため適正空気圧を守っていれば、チューブが変形しやすくなっている状態で起こりやすいパンクはある程度防ぐことができるということです。
ロードバイクやクロスバイクなど細く高圧で空気が入っているタイヤは最低でも1週間に1回は空気圧を確認し、空気を入れるようにしたいところですし、ママチャリでも1か月に1回は空気圧を確認する必要があります。
ロードバイクなどは空気圧計で測ることができますので、ゲージ付きのポンプで空気を入れるのがおすすめです。
しかし、ママチャリなどは空気圧を正確に測ることができませんので、タイヤの側面を指で押した際の触感で空気圧を測ります。
指がめり込まずに少し押し返してくるくらいの硬さが適正とされていますので、参考にしてみてください。
チューブを定期的に交換すれば自転車はパンクしない可能性が高い
前項でお伝えした空気圧の低下によって起こるパンクと同じくらい多いのが、チューブの劣化による慢性的なパンクです。
チューブは普段タイヤに隠れて見えませんので劣化状況が分かりにくく、仮に目視したとしても摩耗しているかの判断がしにくいこともあり、タイヤに比べて交換が遅くなる傾向にあります。
先ほど原因のところでもお伝えしましたが、チューブもタイヤ内部と擦れることや空気の圧力によって劣化をしていきます。
また、小さな穴程度であればパッチを貼るなどの修理が利きますが、チューブは穴が開くたびに強度が落ちていってしまいますので、そう何度も修理できるわけではありません。
そのため、パンクをしないためには定期的にチューブの交換をする必要があり、一般的な目安としては走行距離で3000~5000km、そこまで走らない場合でも2、3年に1回の交換が推奨されます。
また、自転車を買ってすぐパンクするのも同じことですが、品質の良くないチューブは簡単にパンクする可能性がありますので、交換の際にはある程度のグレードのものを選ぶようにしてください。
パンクしない自転車の乗り方を身につける
自転車タイヤのパンクですが、乗り方に注意することでも防ぐことができます。
段差を越える際の衝撃がパンクの原因になることはお伝えした通りですが、普通の速度でまともにガツンと乗り上げれば確かにパンクしないと言い切れなくなります。
そのため段差のある場所ではスピードを落としてソフトに乗り上げる必要がありますし、「抜重」というテクニックを使うのも手です。
抜重というのは簡単に言えばその場でジャンプすることですが、後輪が乗り上げるタイミングで体重を前に移動させて後輪を浮かせられるようになれば、パンクのリスクはかなり減らせられます。
また自転車は原則として車道の左側に寄って走行しなければなりませんが、道路の左端は鋭利な異物が落ちていたり砂利が溜まっていることが多いためパンクしやすい環境とも言えます。
さらに、側溝の網目状のフタである「グレーチング」などは、細いタイヤですとその隙間に入り込んでしまう危険性がありますので、なるべく避けて走るようにしましょう。
物理的にパンクしない「ノーパンクタイヤ」もある
ここまで自転車のパンクについてお伝えしてきましたが、物理的にパンクしない「ノーパンクタイヤ」というものがあります。
パンクはタイヤから空気が抜けることを言いますが、ノーパンクタイヤはタイヤの中にウレタンなどの樹脂が詰められたものや、チューブにゲルを詰めたものをタイヤの内部に入れており、空気は一切入っていないためパンクはしないというものです。
メーカーが製品の売りにしてキリや画鋲をタイヤに刺した画像を使っていますが、鋭利なものがブスッと刺さっても抜けるはずの空気が入っていないので、パンクしないのは当然です。
これだけを聞くとノーパンクタイヤが爆発的に広まってもおかしくないのですが、チューブタイヤに比べ普及率は相当低いと言わざるを得ない状況です。
それには明確なデメリットがあるからであり、特に出始めに多かったウレタンが詰まっているノーパンクタイヤはデメリットが目立っていました。
いくつかのデメリットを上げてみますと、中に入っているのが空気ではないので重量がかさみ、ペダルを漕ぐのが重くなるというもの。
また、クッション性が悪く地面からの衝撃を吸収しにくいため、乗り心地が悪いのに加え、ホイールのリムやスポークにまで衝撃が加わってしまうため、傷めてしまう可能性もあります。
そして、価格がチューブタイヤに比べて高いというのもデメリットに数えられています。
ノーパンクタイヤの進化と未来
前項でお伝えしたノーパンクタイヤは、パンクしないというメリット以外にはどちらかというとデメリットのほうが大きいため、今一つ普及していないと推測されます。
しかし、その問題点を改善し新しい技術を投入しているノーパンクタイヤも出始めており、注目を集めつつあります。
ウレタンなどの樹脂に変わる軽量で弾力性のある素材を入れて、重量や乗り心地の改善を図っているものが出てきており、しかもほとんどのクリンチャータイヤ用のホイールに使用できるなど対応力の高さも示しています
また、空気が入っていなくても潰れないチューブをタイヤの中に仕込む方式なども実用化されており、各メーカーがノーパンクタイヤをビジネスチャンスとしてとらえているのがうかがえますので、今後も進化は続くものと思います。
そして、国内最大手のタイヤメーカ―「ブリヂストン」もノーパンクタイヤを開発しています。
自動車タイヤなども含めた「エアフリーコンセプト」の中で、専用ホイールを使用した自転車用のタイヤも展示会などで発表されており、今後実用化が予測されています。
自転車タイヤをパンクさせない方策を覚えることが大切
自転車のタイヤはパンクしやすいと言われがちですが、適正の空気圧を保ち、寿命を過ぎたものを使用せず、乗り方に気をつければ滅多にパンクしないものです。
少し注釈が多いと思われるかもしれませんが、本文でお伝えしたメンテナンスや乗り方はさほど難しいことではありませんので、ぜひ実践してみてください。
それでも絶対にパンクしたくないという方もいると思いますので、そういった方は進化もしていますので、ノーパンクタイヤを検討されることをおすすめします。