GIANTのクロスバイクはネット通販じゃ買えない?!

こんにちは、じてんしゃライターふくだです。
「GIANTのクロスバイクが欲しいんだけど、ネットで買った方が安いの?」という質問をもらいました。いえ、GIANTのクロスバイクはネット通販は禁止されているんです。対面販売のみとなっているようです。そういう自転車メーカーは今多いですね。どうしてなんでしょう?
今回はそんなおはなしです。

GIANTのクロスバイクはネット通販で買えないの?

2016年、この記事を執筆している現在はGIANTのクロスバイクはネットで買うことはできません。お店で買うしかありません。
「えー?なんでー?!ネットだと安いし、近くに自転車屋さんがなかったら持って帰るの大変じゃん?!時代遅れ?!」
いえ、時代遅れとかではないんです。
別にネット通販をしようと思えば楽天先生とAmazon先生に申し込めば、たいていのものはすぐにネット通販出来ます。
ただ、自転車の場合、きちんと組み付け整備をしないと事故につながるんですね。
事故が起きると悲しいのは当然ですし、訴訟問題やメーカーの信用問題になります。これは、メーカーとしては大ピンチです。由々しき問題というやつです。

ネット通販で買ったら、そんなに事故につながるの?

「でも、世の中にはネット通販で売っている自転車もあるじゃないか?!本当にそんなにすぐに事故につながるの?」
そう思う人も多いでしょう。
実際は、滅多に事故につながることはないでしょう。
それでも、一万台売って一台でも事故を起こすと危険です。
整備不良は様々な事故へとつながります。特に走行中の事故の場合、非常に重大な事故につながる可能性があります。

整備不良による重大事故の事例としては、2008年のビアンキのフロントフォークの破損による事故が分かりやすいです。
この事故では走行中にフロントのサスペンションがすっぽ抜けて、乗車していた人が全身麻痺になってしまったという事件です。
この事件では、サスペンションにサビなどの腐食が認められました。
しかし、サスペンション以外の部品に関してのメンテナンスは特に大きい問題はなかったとされています。
サスペンションは一般の人では整備が不可能な部品です。メーカー修理が原則という部品です。

ビアンキのクロスバイクが悪かったの?

この事件でビアンキのブランドイメージはものすごく落ちました。
実際には、事故を起こした車体はビアンキが直接作っているわけではなく、日本の輸入代理店が日本国内モデルとして台湾の工場にオーダーし、ビアンキはブランド使用を許可したという形式です。
ビアンキは最終的に一億五千万円の賠償請求を受けました。
一億五千万という金額も困りますが、何より「ビアンキのクロスバイクは走行中にフォークが抜けて死ぬかもしれない」というイメージはお金では解決が出来ないほどのダメージです。

しかし、ビアンキに全く責任がないかと言えば、世界で最も老舗である自転車メーカーとして、危険性のある自転車に安易に看板貸しを許可したということは問題です。

問題となったサスペンションフォークは、事件より以前にも、別の車体でも同様のすっぽ抜けの不良が起きていたようです。しかし、当該サスペンションフォークでは悪路での走行などは前提としていなかったので、通常の使用の範囲ではスッポ抜けることはないだろう、それに値段相応の製品だという風にサスペンションメーカーの方は判断していたのかもしれません。
ただ、ビアンキは決して安物の自転車を販売するメーカーではないというのが世間の認識です。ビアンキが事件の前までにサスペンションの不備を把握していたかどうかまでは僕も調べていませんが、把握していなければそれこそ問題ですし、把握していたならその時点で早急なリコールを出すべきでした。

GIANTは巨大メーカーなので通販はしない?

ビアンキの事故以来、大手メーカーはメンテナンスの不備について以前以上に非常に敏感になりました。昔ではリコールなど出さなかったような問題でもすぐにリコールを出します。
僕がすぐ思いつく中では、トレックがマウンテンバイクのクイックレリーズに関してリコールを出したことがあります。クイックレリーズがオープンの状態になった時、180度以上開くので、回収、交換するというものでした。180度以上開くと、仮に走行中に何かしらの事情でクイックがオープンになった時、ディスクブレーキに巻き込まれて大事故になる可能性があります。
ただ、すでにスポーツバイクに乗っている人の常識としては、走行中にクイックが開くというのは、はっきり言ってありえません。クイックはしまっていることを確認して走るのが常識です。速度を出す前にブレーキがきちんとかかるか確認するなどと同じレベルのことです。
それでも、仮にそういう事故が起きた場合、トレックはメーカーとしての責任を取らねばなりません。
トレックはジャイアントと並ぶ世界のトップメーカーです。リコールまでするのは大げさな気もしますが、大メーカーとしての意識をしっかり持った素晴らしいリコールだったと思います。

GIANTが通販をしないのもそういった背景があるためです。
今、名前が出てきたトレックもやはり対面販売のみということを徹底しています。

クロスバイクの通販をしない代わりに

ネットでの通販をしない代わりにGIANT、トレック、キャノンデール、スペシャライズドの世界四大メーカーはフレームに対しての生涯保証をしています。これは、フレームを正常に使用している上で、製造上の欠陥による破損が起きた場合にフレームに関しては保証するというものです。
詳しいことは各メーカー違いますので、各メーカーにお問い合わせ下さい。
要は、
「ネット通販は安全が確保できませんからしませんよ。代わりに正規代理店できちんとしたメンテナンスを受けて、正しく使ってくれていれば一生フレームに対する保証はしますよ」
ということです。
ただ、この生涯保証というのは分かりにくいです。
というのも、『正しく使えば』というのが分かりにくいです。
ビアンキの事件の場合は、恐らく『正常な使用』の範囲には入らないでしょう。というのも、フロントサスが錆びた状態での使用は正しい使い方とは言えないからです。(どちらにせよサスペンションフォークに関しては生涯保証は適用されないメーカーが多いのですが)
言うなれば一種の予防線でもあります。正しく使ってくださいね、我々はフレームメーカーなので、日々のメンテナンスなどについては、購入した小売店できちんと受けて下さいね。整備に関する責任は小売店の責任ですからね、というわけです。(そうは言っても、整備不良での事故でも、きちんと整備が出来ない小売店に販売を委託したとしてメーカーは責任を問われるのでしょうが)

もちろん、製造上欠陥があった場合や、正常な使用と認められれば生涯保証はきちんと適用されるようです。

GIANTなどの大メーカー以外は?

それでは、GIANT以外のメーカーはどうかと言えば、やはりほとんどのメーカーが通販はしていません。しかし、生涯保証までしてくれるところは少ないようです。
まあ、家電製品でも五年保証してくれれば良いほうですからね。生涯保証はちょっとやり過ぎな気もします。
しかし、家電製品と違って、自転車は値段も値段ですから五年以上使いたいという人も少なからずいるでしょう。
例えば、自転車乗りなら誰もが憧れるフランスの高級メーカーLOOKは3年もしくは5年の保証期間としています。
LOOKのロードバイクと言えば、簡単に100万円を越えます。それを3年もしくは5年以内に乗り換えなさいよ、さもなければそれ以降は保証はないよ、というのは酷な気もします。でも、まあ、LOOKとかの高級車メーカーを乗るって、そんなもんです。嫌なら別のメーカーに乗ってくれれば良いよ、とまでは言いませんが。他にもいくらでも安いメーカーはあります。
確かにLOOKの自転車は最高に素晴らしいです。いつかはLOOK、最後はLOOKと言われるだけのことはあります。
ただ、やはりそういうLOOKを乗るからには5年以上も乗らないでね、嫌な人は乗らないでね、というニュアンスはどうしても拭えません。あまりに高級なヨーロッパ車は初心者には安易に勧めにくいというのは、そういう背景もあります。

それでも、LOOKも最近は割とリーズナブルな完成車も出して来たりと、段々と変わって来ています。自転車を楽しむ人の層が広がり、需要が拡大したことで、供給するメーカーの方も変革に迫られつつあるというのが、現在の日本国内の自転車事情と言ったところでしょうか。

GIANTのクロスバイクは一生乗れるの?

それでは、生涯保証をしているメーカーの自転車は本当に一生乗れるのかという話になると、答えはNOです。変な話に思うかもしれませんが、耐用年数と保証年数は特に関係がありません。
というのも、正常な使用というのは、定期的に専門の自転車屋さんで点検、整備を受けて使うということですが、フレームにも寿命が来ます。何年とは断定できませんが、ヒビなどが入れば当然、「これはもう寿命ですよ。フレームを変えないと乗れませんよ」という話になります。同様に転倒時の衝撃によりフレームが破損した場合でも、自転車屋さんに持っていけば「もうフレームを変えないと乗れませんよ」と言われます。
正常な使用というのは、自転車屋さんの判断に従うということでもあります。
もちろん、転倒などがなく、材質の疲労などの正当な経年劣化ではないだろう破損については、製造上の欠陥による破損だと判断できる場合もあります。
しかし、最終的な判断は結局メーカー側がするので、ちょっと微妙な保証のような気もしますが。
それでも、昔はそういった保証というものは自転車にはなかったので、やはり時代の進歩なんでしょう。それに微妙な気がするとはいえど、大々的に「生涯保証」と言うくらいなので、メーカーは製品の品質に自信があると考えても問題無いでしょう。

一生乗り続けるというのは難しいにせよ、こまめに自転車屋さんで点検、整備することで出来るだけ長く乗り続けたいですね。

まとめ「将来的には通販も始まるかもしれないけど」

多くの自転車メーカーが通販をしないのは、製品に対する責任を持っているからというお話でした。実際、自転車っていうのは、結構速度も出る乗り物なのに免許はいりませんし、自転車の整備、販売をする国家資格なども一切存在しません。自転車屋さんに飾ってある整備士資格とかっていうのは、自転車産業なんたらこうたらというよく分からない団体が出している資格で国家資格ではありません。
それでも、メーカーは少しずつメーカー直売へ向けて通販を始める準備をしているようです。今回の話に出てきたトレックは、USAホームページにネット通販が出来そうなショッピングカートのボタンを設置しています。ドイツの自転車メーカーCANYONについてはすでに日本国内でもメーカー直売の通販を始めています。いくつかの大手メーカーが通販を始めれば、GIANTも通販をする可能性は高いです。
各メーカー安全面をどうサポートしていくのかというのが気になる面ですが、日本国内でもメーカー直売の通販が始まる日も遠くないのかもしれません。