mtbのハンドル幅が60㎝を超えたら法律ではどうなる?

皆さんは「普通自転車」の定義をご存知でしょうか?
また、この普通自転車の定義から外れた自転車は、どういう扱いになるのでしょうか。

mtbに多いのですが、ハンドル幅が60㎝を超えると、法律上で普通自転車とは認められなくなります。

そこで今回はmtbのハンドル幅と、自転車を取り巻く法律についてご説明していきたいと思います。

mtbなどの自転車は法律上どんな扱いなのか?

自転車は道路交通法では「軽車両」として扱われています。

軽車両は原則としては車両と同じなので、自転車は基本的には(例外もあります)車道を走らなくてはなりませんし、免許こそありませんが、交通ルールも罰則もあります。

歩行者とは一線を画すものだということを、まずは覚えておいてください。

ただ、自転車は車両とは言っても原動機付きではないので、例外的に歩道を走ることが認められる場合があります。

その歩道を走れる自転車のことを道交法では「普通自転車」と明記しており、長さ190㎝、幅60㎝以内のものと定義されています。(自転車専用レーンも普通自転車しか通れません)

ところが、このサイズを超えている物が結構あるんですね。

自転車の幅に関係してくるのはハンドル幅ですが、特にmtb用のハンドルバーなどは60㎝以上の物が、普通に流通しています。

また、自転車に傘立てやミラーを取り付け、その幅込みで60㎝を超えた場合も、普通自転車として扱われなくなります。

ただ、その幅の規定を超えたからといって法律違反を犯しているわけではなく、あくまでも歩道と自転車専用レーンが走れないということです。

mtbのハンドル幅が広い理由とは

では、なぜmtbのハンドル幅はそんなに広いのか検証してみましょう。

まずは参考までに、別のスポーツ自転車のハンドル幅を見ておきましょう。

ロードバイクのドロップハンドルは肩幅が基準なので40㎝前後、クロスバイクはmtbと同じフラットバーですが、45㎝~50㎝くらいです。

フラットバーの場合はハンドルの先にグリップを取り付けるので、あと2~3㎝くらいは広くなると考えられます。

いずれにしても60㎝までは、まだ十分に余裕があるわけです。

ところがmtbとなると、60㎝以上がもはや当たり前で、用途によっては70㎝を適正として推奨する声もあります。

これはなぜかと言うと、ハンドルの幅が広いほど車体は地面に押し付けやすく、走行中の安定感が増します。

山道や砂利道など悪路を走ることが多いmtbは何より安定感が大切なので、ハンドルの幅も広くなっているんですね。

また、悪路では細かいハンドリングも要求されますが、幅が広い方が操作しやすいのも確かです。

ですから、法律上「普通自転車」として見なされないのは分かっていても、歩道を走ることは想定していないので、60㎝以上のハンドル幅を採用しているということになります。

mtbのハンドル幅は広いのが主流

また、最近のmtbは余計にハンドル幅が広い傾向にあります。
上記の理由以外にも車体性能が上がり、スピードが出るようになったのも、その一因です。

スピードが出るぶん、安定感とのバランスを取るためにハンドル幅を広くしているということです。

また、レースなどでも難しいコースが増え、自転車を抑え込む力が、もっと必要になったとの説もあります。

以前なら坂を下るダウンヒルくらいにしか用いられなかった70㎝超えのハンドルですが、現在は通常のクロスカントリーでも採用されていますし、ダウンヒルでは80㎝近い幅のハンドルを採用しているライダーもいるほどです。

しかも、ハンドルバーは自分でカットすることができるため、悩んだら長めのものを推奨しているという風潮もあります。

もうこうなってくると法律云々の話ではなく、全くの競技用と考えるしかありません。

そんな幅の広いハンドルのmtbが歩道を走っていたら、はっきり言って邪魔ですし、危険もあるでしょうから、普通自転車の定義から外れ、歩道を通行できないのは当然のように思います。

mtbなどの自転車に対する法律は厳しくなった

2015年6月の改正道路交通法により、自転車に対する罰則の強化がなされ、取り締まりも厳しく行われるようになりました。

今までの自転車の違反行為への対応は、事故でも起こさない限り、口頭注意程度でした。
しかし、自転車がらみの死亡事故などが多発している経緯もあり、軽い違反でも摘発できるように、反則金や安全講習などの法律が追加されることになりました。

以下にいくつかの条項をご紹介します。

・スマホを見ながら、通話しながら運転

最近の事故原因で、最も多いのがこれです。
罰則は3ヶ月以下の懲役か5万円以下の罰金です。

・右側通行(逆走)

これも多くの事故原因になっています。

自転車が車道を走る場合は、いつでも左側通行です。
罰則は3ヶ月以下の懲役か5万円以下の罰金です。

・歩道通行禁止

例外を除いては、歩道を走ると違反になります。

mtbのハンドル幅のところでも触れましたが、歩道通行が可能な場所でも通行できるのは普通自転車だけです。
罰則は2万円以下の罰金となります。

・飲酒運転禁止

これが意外と知られていないのではないでしょうか?

車同様、自転車も「飲んだら乗るな」なのです。
罰則は5年以下の懲役か100万円以下の罰金です。

今回ご紹介したのは、ほんの一例ですが、自転車が歩行者をはね飛ばし、損害賠償が1億円にも上る死亡事故も起きています。

自転車=車両という意識を強く持たなければいけませんね。

法律を守ることで起こる弊害もあるのでは?ハンドル幅の罠!

前項では交通ルールが改正され、罰則が厳しくなった背景にあるのは、事故の多発というお話をしました。

もちろんそうだとは思いますが、一方で自転車に対するインフラの整備が進まない内に、法律だけを改正した弊害が出ているようにも思います。

何度も言っていますが、自転車は基本的には車道通行ですが、歩道を通行できる「例外」が認められています。

自転車通行可の標識がある場所や高齢者、13歳未満のお子さんは通行可です。

この例外はまだ分かるのですが、「車道を走るのが著しく危険と判断される場合」という条項もあるのです。

では一体、誰の判断なんでしょうか?
言うまでもなく個人の判断ですから、余りにも曖昧です。

そもそも日本には、自転車専用道はほとんどありません。

その状況で基本的には車道を走れ、でも危ないから歩道に上がれと言われれば、曖昧になるのは当然と言えます。

冒頭で触れた「普通自転車」の定義についても、額面通りに受け取れば、幼児用のmtbでもハンドル幅が60㎝を超えていたら歩道を走れないことになります。

極端に言えば、補助輪を付けて車道を走行するということになってしまいます。

こういった矛盾を解消しないまま、現状は法律順守という点だけが、一人歩きしてしまっているのではないかと思います。

法律のルールの矛盾はまだある

例えば、mtbのハンドル幅に話を戻しますと、法律上軽車両の横幅は2mまで認められているので、2mのハンドル幅のものを付けて車道を走ることが可能になります。

構造上あり得ない話だとは思いますが、走行可能なことは確かです。

自転車が基本的に車道を走行するということは、速度上、自動車に追い抜かれることは想定されていなければいけません。

しかしその際に、横幅2mの軽車両を簡単に追い抜けるものでしょうか?

恐らく自動車からの視界では、幅2mの軽車両は自動車1台を追い抜く感覚だと思います。
となれば、車線変更が必要ですし、片側1車線の車道では、ほぼ追い越し不可になります。

これで、円滑な通行が保てるでしょうか?

もちろん、これは極論ですが、法律通りに解釈すればあり得るのです。

だからと言って、じゃあ歩道を走れば良いとは言えませんが、臨機応変に考えて欲しい場合が多いのも確かです。

昨今の自転車ブームにより、スポーツ自転車が街中にも目立ってきています。

速度が出るスポーツ自転車だからこそ、車や歩行者との共存をもっと深く考えていかなければ、事故は無くならないと思います。

自転車にもっと市民権を

今回はmtbのハンドル幅に端を発し、自転車を取り巻く交通ルールについて考えてみました。

自転車は環境に優しく、健康にも効果のある乗り物です。

だからこそ、自転車が今以上に市民権を得るためには、インフラ整備を声高に主張していかなけらばなりませんね。

そのためにも、まずは交通ルールや法律を守り、事故が起こらないように1人ひとりが心掛けるのが大切だと思います。