2015年6月から道路交通法が改正されて自転車の取締りが強化されました。
その後、テレビのワイドショーやニュース番組で取締りの状況や危険運転の実態などが時々放送されていますが、違反切符を切られた内訳では信号無視が断トツのトップで約4割を占めています。
なぜ、これほどまでに信号無視が多いのか?
今回は、その理由についてちょっと考えてみました。
自転車の取締り、違反切符の対象となる危険運転14項目とは
2015年6月施行の道路交通法改正で強化された自転車の危険運転の取締り。自転車運転者講習の対象となる危険行為として以下の14項目が決められました。
●信号無視 ●遮断踏切立入り ●指定場所一時不停止等 ●歩道通行時の歩行者の進路妨害 ●ブレーキ不良の自転車の運転 ●酒酔い運転 ●歩行者天国等の通行禁止違反 ●歩行者用道路で歩行者とすれ違う際の徐行違反 ●通行区分違反 ●路側帯通行時の歩行者の通行妨害 ●交差点での右折時、直進車の進行妨害等 ●信号のない交差点での優先車妨害等 ●環状交差点安全進行義務違反等 ●スマホやケータイのながら運転、傘さし運転などの安全運転義務違反
以上の項目について3年間で2回以上違反切符を切られると、自転車運転者講習(有料5700円)を受けなければなりません。受講命令を無視すると5万円以下の罰金となります。
自転車の危険運転取締りの現状は?
道路交通法の改正以後、自転車の危険運転について全国の警察が摘発した件数は、2016年1月末の約半年間で9113件だったことが警察庁のまとめで分かっています。
そのうち、違反の種類では信号無視が断トツのトップで全体の約4割以上の3891件、次いで遮断踏切立入りが2232件、スマホなどのながら運転の安全運転義務違反が1152件で、ワースト3合計が7275件となり摘発件数全体の約8割を占めます。
また、都道府県別では大阪府の3069件がもっと多く全体の3分の1以上、次いで東京都2281件、兵庫県954件、神奈川県544件、京都府397件となっています。やはり人口が集中する関東、近畿の大都市圏が多く摘発件数全体の約8割を占める結果となりました。中でも大阪・兵庫・京都3府県の合計が4420件で全体の約半数近くになり、近畿3件の偏りが大きく目立つ結果となっています。
信号無視で違反切符、自転車の取締りトップの理由について①
●警察の取締る側の視点から考えてみる
警察として自転車の危険運転を取締る目的は交通事故を未然に防ぐということが最大の目的であることはいうまでもありません。さらに、取締ることで安全運転のルールを周知徹底し、マナーの向上を図ることでより安全な交通環境を実現することが取締ることの意義であるといえます。
この視点から考えて、自転車の危険運転により交通事故が起こる可能性の高い場所で取締りをするというのが事故を未然に防ぐには効果的であることは明白です。ならば、その可能性が高いポイントとして明確に分かる場所はどこかといえば、2つの交通の流れがクロスする交差点です。ここでの信号無視は交通事故に直結する危険行為といえるでしょう。必然的に交差点は取締りの重点ポイントとなり、信号無視で違反切符を切られる人が最も多くなるということになります。
その次に遮断踏切の立入りで摘発される人が多いというのも、やはり踏切は重大事故の起こるポイントで、開かずの踏切といわれるような場所では事故が起これば道路だけではなく、公共交通機関としての鉄道の運行にも支障をきたすことから重点的に取締るということになります。
信号無視で違反切符、自転車の取締りトップの理由について②
●日本人の気質という視点から考えてみる
生真面目で勤勉な日本人の気質から考えると、社会のルールやマナーを守るということは海外に比べ高いはずです。
しかし、なぜこれほどまでに信号無視や遮断踏切に立入るといった危険行為が多いのか、ちょっと疑問が残ります。最近の人たちは、みんなそんなに気が短いのでしょうか。そうではないと思います。
逆に、これは生真面目で、社会のルールやマナーを守ろうとするがゆえに起こる違反なのかもしれません。
日本人は時間に正確な民族であるとよく言われ、会社や学校などでは遅刻は厳しくチェックされます。朝の通勤・通学時、交差点でのマナーと遅刻のどちらを優先順位で上にするかと悩んだ時、遅刻というのはタイムカードや出席の点呼などで隠しようがありません。ですがマナー違反は見つからなければと思い、小さな交差点などではクルマが来ないとつい渡ってしまうといったことが起きるのではないでしょうか。
また、開かずの踏切などの場合は、遮断機が降りかかっているのが分かっていても、ここで渡らなければ10分以上待たなければならないと思い、つい自転車のブレーキをかけずに突っ込んしまうというのは心情としてなんとなく理解できます。
お巡りさんもそうした心情はきっと理解しています。ですが、重大な事故を招く恐れのある行為は、市民の安全を守る人間として見過すことはできないのでしょう。違反者を摘発するということは、事故を未然に防ぐというだけではなく、摘発することでその人を事故から守るということでもあるからです。
信号無視で違反切符、自転車の取締りトップの理由について③
●関西人の常識という視点から考えてみる
この考え方を述べる前に、これは関西の方々すべてがそうだとか、非難しようというのではありません。一般的に関西の方々の気質として言われていたり、関西の方自身もこんなことがあったという話をもとに分析した結果です。決して悪気はないので誤解しないでください。
ということでお話しすると、ある関西出身の方がテレビで「クルマも来てないのになんで信号守らにゃならんの? 初めて東京来た時みんなが信号守ってるからびっくりした」ということを言っていました。
そして、私の知人も東京から大阪に引っ越した時、「いやぁ、大阪じゃクルマの運転が怖くて参っちゃうよ。ちょっと空いてるだけでいきなり横から割り込んでくるからビックリするよ」という話をしていました。
また、駅のホームで電車を待っていても東京では整列乗車が当たり前ですが、関西の人はきちんと並んで乗るということはないという話を聞きます。
もし、こうしたことが事実で多くの人に自分優先という意識があるとすれば、都道府県別での違反者の数が突出しているというのも頷ける気がします。
ただ、これは自分というもの、個性を前面に押し出すという点では決して悪いことではありません。むしろ積極的に何かをやるという意味では良いことだと思います。
ですが、自転車の危険運転である信号無視はいけません。違反切符を切られますので自重しましょう。
まとめ、信号無視の違反切符、交通ルールが守るのは人の命
よく、みんながルールを守らないから取締りを強化するというようなことが言われますが、本当はそうではありません。信号無視をはじめ、自転車の危険運転は事故を招き、ひいては人の命に関わる問題だから強化するのです。ルールを守らないから罰則を与えるのではなく、人の命を守るために違反者に切符を切り、自転車運転者講習を受けてもらうのです。
法律は弱者を保護するというのが基本理念です。クルマとの接触事故など多くの場合、自転車は被害者として保護されます。
しかし、一旦事故が起これば法律は人の命を守ることはできません。クルマと事故を起こせば、痛い思いをするのは自転車側の人間です。そのためにも、自転車に乗る時は交通ルールを守ることを徹底しましょう。