実は2017年ルイガノのカタログから、マウンテンバイクを含めたオフロードのカテゴリーが消えてしまいました。
2016年までにオフロードにカテゴライズされていた数車と、フラットバーロードがクロスバイクとしてラインナップされています。
それに伴って29er(29インチのホイールサイズ車)という名称も姿を消してしまいましたが、これも時代の流れなんでしょうか?
今回は、そんなルイガノの29erのお話をしていきたいと思います。
ルイガノとは?
まず簡単に「ルイガノ」というメーカーをご紹介します。
カナダのスポーツ用品メーカーであるルイガノですが、特に自転車部門が充実していることで有名です。
それもそのはずで、創始者のルイ・ガノーは自転車のトラック競技の選手であり、オリンピック出場経験まであるほどの選手でした。
現在、ルイガノは6つの工場を持ち、従業員400人以上を抱える一大ブランドに成長しています。
日本では、アキコーポレーションがLOUIS GARNEAUの商標使用許可を得ており、そのブランド名を使って独自の商品展開を行っています。
本場ルイガノの商品は、GARNEAUブランドとして製造・販売されています。
簡単に見分ける方法は、車体に「LOUIS GARNEAU」と刻印されているのがアキコーポレーションの自転車で、「GARNEAU」と入っているのがルイガノ本体の自転車ということになります。
特にGARNEAUのハイエンドカーボンフレームはプロのチームにも提供されており、国際自転車競技連合(UCI)の世界レースにも参戦しています。
そのため、今回は、アキコーポレーションのLOUIS GARNEAUと、本体のブランドであるGARNEAUも同時に見ていきたいと思います。
果たして、29erのマウンテンバイクの復活はあるんでしょうか?
ルイガノのマウンテンバイクの歴史・29er編
そもそも、ルイガノはマウンテンバイクの開発には積極的では無かったのでしょう。
2011年のカタログを見てみますと、マウンテンバイクのカテゴリーはわずか5種類に留まり、29erが2種、デュアルサスペンション車も1種のみでした。
しかも価格的にもエントリーモデルクラスのものばかりで、多少の皮肉を込めて表現する人はルック車(マウンテンバイク「風」な自転車)と呼んだりしていました。
その流れは、2012年になってもさほど変わらず、わずかに1種類増えたものの、それこそクロスバイクにフロントサスペンションが付いた程度の扱いを受けていました。
ただ、この年からは前年まで本体のGARNEAUブランドで販売していた、29erの「XC BART PRO 29」を引き継ぐ形で販売を開始しました。
パーツなどのレベルを見ていると中級クラスではありますが、ルック車と呼ばれるようなレベルのものではなかったと思います。
翌2013年には、本家GARNEAUブランドのマウンテンバイクは完全に姿を消し、ルイガノブランドに1本化される形になりました。
ルイガノのマウンテンバイクの歴史・29er編②
2013年、8車種まで増えたルイガノのマウンテンバイクですが、翌2014年には4種類にまで絞られてきました。
また、上位2車種はフレームのみの販売も行われていました。
さらに29erは「XC BART PRO」1車種のみとなり、時代の移り変わりを感じさせる品揃えとなりました。
しかも、そのバイクは名称こそ前年モデルと同じでしたが、シマノ製のコンポのグレードが1ランク下がったものであり、価格も3万円以上下がっています。
翌2015年もマウンテンバイクは4種類の展開となりますが、XC BART PROは27.5インチのみとなり、29erはクロスバイク並みのスペックと価格の「FIVE 29」1台となります。
そして2016年、FIVEが26インチの展開となり、29erは完全に姿を消しました。
さらに冒頭でもお伝えしたように、2017年にはマウンテンバイクのカテゴリーがルイガノから消滅し、2016年にマウンテンバイクにカテゴライズされていた数車種がクロスバイクとして統一されました。
他社のマウンテンバイク29erの品揃え
ここまではルイガノのマウンテンバイクの変遷を確認してきましたが、ではルイガノ以外のメーカーのマウンテンバイクはどうでしょうか?
品揃えを確認してみましょう。
まずはマウンテンバイクのメーカーと言えば、ここというほど世界的に有名な「GT」から。
10万円を切るエントリーモデルから、カーボンフレームを使った50万円を超えようかというハイエンドモデルまで、様々な価格帯が用意されており、クロスカントリーやトレイルを中心に用途別の品揃えも実に豊富です。
しかし、29erはわずか1種類「KARAKORAM COMP 29er」のみとなっています。
そして、世界的な自転車メーカーと言えば「ジャイアント」の名前も挙がってくると思います。
GTほどマウンテンバイクに偏った品揃えではないので、種類は多くないものの、コスパのジャイアントの名に恥じない評価を受けているものばかりです。
2017年、マウンテンバイクのカテゴリーに入るのは7種類ですが、ホイールサイズは27.5インチ(650B)に統一されているようで、29erは残念ながら見当たりません。
29erがスタンダードでなくなった理由
根本的な理由は27.5インチ(650B)の台頭でしょう。
マウンテンバイクは創世記より、長いこと26インチが主流でした。
しかしマウンテンバイクを創り出した1人と言われているゲイリー・フィッシャーが、長年温めていた29erの計画を2000年初期に具現化しました。
その後、5~7年で29erは26インチに変わるマウンテンバイクのスタンダードとして定着しました。
しかし2010年代に入ったところで、レースの世界を中心に650Bブームが巻き起こり、ルイガノを始めとした名だたる自転車メーカーが650Bを製造・販売するようになりました。
26インチのコントロール性と29erの高速巡航性を合わせ持った650Bは、あっという間に普及し、現在では市場を独占してると言っても過言ではありません。
26インチや29erの特別感より、650Bのオールマイティさが、大衆受けするようになったということでしょう。
クロスバイクの台頭
また市販車に限って言うのであれば、クロスバイクの台頭が29erを脇に追いやった理由と考えられるのかもしれません。
29erは元々スピードに長けたホイールサイズと言えるので、マウンテンバイクの中でもクロスカントリー向きと言われてきました。
それと同時に、高速巡航性があることから、街乗りに適しているという評価もありました。
街乗りならば何もあのごっついブロックタイヤではなく、ロードバイクのスリックタイヤでも良いという発想が生まれてきます。
そこで生まれたのが、クロスバイクです。
29erとロードバイクの標準である700Cのリムの直径は同じなので、そのままスリックタイヤに換えればクロスバイクというカテゴリーになります。
実際にルイガノのクロスバイクでも、サスペンションこそありませんが、ディスクブレーキにシマノ製のマウンテンバイク用コンポが搭載されていながら、700Cのタイヤを装備した「TR LITE」というシリーズがあります。
各社ともに、このマウンテンバイク然としたクロスバイクの品揃えは年々強化される傾向にあるため、29erの影が薄れてきたことと無関係ではないと思うのですが。
スペシャリティを求めるなら29er
今回はルイガノを中心にマウンテンバイクの歴史や29erについて考えてみました。
世界のレースシーンでは、いまだに29erを駆って活躍している選手もいますし、2012年のロンドンオリンピックでは金メダルを取った選手が29er乗りでした。
一般的には体の大きい人向きと言われる29erですが、乗りこなし方によっては、まだまだクロスカントリ―には最強と言われていますので、まだまだ捨てたもんじゃないはずです。